7 / 14
7 クッキーは誰の為?
しおりを挟む
近頃、女子生徒達がソワソワしている。
おそらく原因は、来週行われる予定の剣術大会だろう。
この国では、騎士は給料も高く、能力によっては名声も得られる、人気の職業だ。
当然、女性にもモテる。
ウチの学園の騎士科の生徒は、美丈夫が多いから尚更だ。
「ねぇ、今度の騎士科の剣術大会、ナディアも、リカルド様の応援に行くでしょう?」
マリソルに聞かれて、大きく頷く。
「ええ。勿論よ」
「何か差し入れとか、用意しないの?」
差し入れかー・・・。
考えていなかったけど、憧れの人の応援に行くなら、差し入れくらいは用意した方が自然かも知れない。
私は貴族令嬢には珍しく、お菓子作りが得意だ。
以前はミゲルにも何度か食べさせた事がある。
リカルド様は、ファンからの手作りのお菓子など口にしないだろうけど、別に彼に食べてもらいたい訳じゃ無いから関係ない。
私がリカルド様に憧れている様に見えれば、それで良いのだ。
ミゲルを好きになってしまった事を、本人に悟られる訳にはいかない。
優しい彼は、私の気持ちを知ったら、きっと思い悩むだろう。
クリスティナ様を想う彼の負担にはなりたく無い。
それに、私達はもしも関係が悪化したとしても、政略上のパートナーとして結婚しなければならない可能性が高いのだ。
ギクシャクした状態で一生を共に過ごさねばならないのは、きっととても辛いだろう。
だから、今日も私はリカルド様を追いかける。
結局、私は剣術大会の前夜に、ミゲルの好物だった、オレンジピールを練り込んだクッキーを作る事にした。
オーブンの扉を開けると、クッキーが焼ける香ばしい匂いが部屋中に漂う。
ミゲルにも渡そうと、沢山焼いた。
・・・と言うか、ぶっちゃけミゲルに渡すのがメインだ。
リカルド様の分は、三枚だけ、小さな紙袋に入れて、プレゼントっぽく見える様に丁寧にラッピングした。
他にも沢山差し入れを貰うだろうから、負担にならない様に、わざと少ない量にしたのだ。
ミゲルの方は少し大きめの袋にたっぷり入れて、こちらも可愛いリボンをかける。
「ミゲル」
剣術大会の朝、ミゲルの教室に行き声を掛ける。
彼のファンのご令嬢達の視線が若干痛い。
「オレンジピールのクッキーを焼いたんだけど」
用件を伝えると、彼の目が嬉しそうに輝いた。
「あ、それ大好き」
「知ってる。はいどうぞ」
今日は授業は午前中のみで、午後が剣術大会になる。
騎士科の生徒以外は、午後の応援は自由参加だ。
ミゲルは興味ないだろうから、午前中で帰ってしまうだろうと思い、朝の内に渡しに来た。
ミゲルはすぐにガサガサと袋を開き、クッキーを頬張る。
「うん。ナディアのクッキーは、相変わらず美味しい」
「でしょ?」
この幸せそうな顔が見たくて、オレンジピール入りを作ったのだ。
「・・・それは何?」
ミゲルが、私の鞄の中から顔を覗かせているもう一つの小さな包みに目を止めた。
「ああ、午後の剣術大会の差し入れに、リカルド様にも渡そうと思って」
「ふーん。・・・・・・まぁ、程々にしときなね」
ミゲルが微かに眉根を寄せる。
「あはは。分かってるわ。
ちょっと騒いで楽しんでるだけよ」
全く恋愛感情のない婚約者であっても、他の男性に憧れている姿を見るのは嫌な物なのだろうか?
少しくらい嫉妬してくれているのなら、嬉しい気もするけれど。
いつの間にか、二人で一緒に居るのが当たり前になって、私達はそれなりに上手く行っている気がする。
ミゲルも私に何らかの好意は持っているのだろう。
しかし、そもそも私とミゲルでは、「好き」の気持ちの種類が違うのだから、あまり期待しない様に気を付けなければ。
「リカルド様、剣術大会頑張って下さいね。
これ、差し入れです」
ファンの子達に囲まれ、次々にプレゼントを受け取るリカルド様。
それに混じって、私もクッキーを渡した。
リカルド様は、一人一人にきちんとお礼を言って差し入れを受け取る。
私のクッキーも、その場で開封して、一枚食べてくれた。
「美味しいね。もしかして手作りかな?」
「ええ。お菓子作りが趣味なんです」
ニコニコと感想を述べてくれる。
神対応だね。
だからファンが多いんだろうな。
ちょっとチャラいけど。
おそらく原因は、来週行われる予定の剣術大会だろう。
この国では、騎士は給料も高く、能力によっては名声も得られる、人気の職業だ。
当然、女性にもモテる。
ウチの学園の騎士科の生徒は、美丈夫が多いから尚更だ。
「ねぇ、今度の騎士科の剣術大会、ナディアも、リカルド様の応援に行くでしょう?」
マリソルに聞かれて、大きく頷く。
「ええ。勿論よ」
「何か差し入れとか、用意しないの?」
差し入れかー・・・。
考えていなかったけど、憧れの人の応援に行くなら、差し入れくらいは用意した方が自然かも知れない。
私は貴族令嬢には珍しく、お菓子作りが得意だ。
以前はミゲルにも何度か食べさせた事がある。
リカルド様は、ファンからの手作りのお菓子など口にしないだろうけど、別に彼に食べてもらいたい訳じゃ無いから関係ない。
私がリカルド様に憧れている様に見えれば、それで良いのだ。
ミゲルを好きになってしまった事を、本人に悟られる訳にはいかない。
優しい彼は、私の気持ちを知ったら、きっと思い悩むだろう。
クリスティナ様を想う彼の負担にはなりたく無い。
それに、私達はもしも関係が悪化したとしても、政略上のパートナーとして結婚しなければならない可能性が高いのだ。
ギクシャクした状態で一生を共に過ごさねばならないのは、きっととても辛いだろう。
だから、今日も私はリカルド様を追いかける。
結局、私は剣術大会の前夜に、ミゲルの好物だった、オレンジピールを練り込んだクッキーを作る事にした。
オーブンの扉を開けると、クッキーが焼ける香ばしい匂いが部屋中に漂う。
ミゲルにも渡そうと、沢山焼いた。
・・・と言うか、ぶっちゃけミゲルに渡すのがメインだ。
リカルド様の分は、三枚だけ、小さな紙袋に入れて、プレゼントっぽく見える様に丁寧にラッピングした。
他にも沢山差し入れを貰うだろうから、負担にならない様に、わざと少ない量にしたのだ。
ミゲルの方は少し大きめの袋にたっぷり入れて、こちらも可愛いリボンをかける。
「ミゲル」
剣術大会の朝、ミゲルの教室に行き声を掛ける。
彼のファンのご令嬢達の視線が若干痛い。
「オレンジピールのクッキーを焼いたんだけど」
用件を伝えると、彼の目が嬉しそうに輝いた。
「あ、それ大好き」
「知ってる。はいどうぞ」
今日は授業は午前中のみで、午後が剣術大会になる。
騎士科の生徒以外は、午後の応援は自由参加だ。
ミゲルは興味ないだろうから、午前中で帰ってしまうだろうと思い、朝の内に渡しに来た。
ミゲルはすぐにガサガサと袋を開き、クッキーを頬張る。
「うん。ナディアのクッキーは、相変わらず美味しい」
「でしょ?」
この幸せそうな顔が見たくて、オレンジピール入りを作ったのだ。
「・・・それは何?」
ミゲルが、私の鞄の中から顔を覗かせているもう一つの小さな包みに目を止めた。
「ああ、午後の剣術大会の差し入れに、リカルド様にも渡そうと思って」
「ふーん。・・・・・・まぁ、程々にしときなね」
ミゲルが微かに眉根を寄せる。
「あはは。分かってるわ。
ちょっと騒いで楽しんでるだけよ」
全く恋愛感情のない婚約者であっても、他の男性に憧れている姿を見るのは嫌な物なのだろうか?
少しくらい嫉妬してくれているのなら、嬉しい気もするけれど。
いつの間にか、二人で一緒に居るのが当たり前になって、私達はそれなりに上手く行っている気がする。
ミゲルも私に何らかの好意は持っているのだろう。
しかし、そもそも私とミゲルでは、「好き」の気持ちの種類が違うのだから、あまり期待しない様に気を付けなければ。
「リカルド様、剣術大会頑張って下さいね。
これ、差し入れです」
ファンの子達に囲まれ、次々にプレゼントを受け取るリカルド様。
それに混じって、私もクッキーを渡した。
リカルド様は、一人一人にきちんとお礼を言って差し入れを受け取る。
私のクッキーも、その場で開封して、一枚食べてくれた。
「美味しいね。もしかして手作りかな?」
「ええ。お菓子作りが趣味なんです」
ニコニコと感想を述べてくれる。
神対応だね。
だからファンが多いんだろうな。
ちょっとチャラいけど。
163
あなたにおすすめの小説
殿下の愛しのハズレ姫 ~婚約解消後も、王子は愛する人を諦めない~
はづも
恋愛
「すまない。アメリ。婚約を解消してほしい」
伯爵令嬢アメリ・フローレインにそう告げるのは、この国の第一王子テオバルトだ。
しかし、そう言った彼はひどく悲し気で、アメリに「ごめん」と繰り返し謝って……。
ハズレ能力が原因で婚約解消された伯爵令嬢と、別の婚約者を探すよう王に命じられても諦めることができなかった王子のお話。
全6話です。
このお話は小説家になろう、アルファポリスに掲載されています。
私と貴方の報われない恋
梨丸
恋愛
田舎の男爵家の少女、アーシャには好きな人がいた。
家族同然の幼馴染を好きになってしまったアーシャの恋は報われない……。
主な登場人物
アーシャ 本作の主人公
フェルナン アーシャの初恋
※アーシャ編とフェルナン編の二編を投稿します。
※完結後も番外編を追加するかもしれないです。
11/3 完結いたしました。
11/4HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
優柔不断な公爵子息の後悔
有川カナデ
恋愛
フレッグ国では、第一王女のアクセリナと第一王子のヴィルフェルムが次期国王となるべく日々切磋琢磨している。アクセリナににはエドヴァルドという婚約者がおり、互いに想い合う仲だった。「あなたに相応しい男になりたい」――彼の口癖である。アクセリナはそんな彼を信じ続けていたが、ある日聖女と彼がただならぬ仲であるとの噂を聞いてしまった。彼を信じ続けたいが、生まれる疑心は彼女の心を傷つける。そしてエドヴァルドから告げられた言葉に、疑心は確信に変わって……。
いつも通りのご都合主義ゆるんゆるん設定。やかましいフランクな喋り方の王子とかが出てきます。受け取り方によってはバッドエンドかもしれません。
後味悪かったら申し訳ないです。
沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―
柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。
最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。
しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。
カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。
離婚届の上に、涙が落ちる。
それでもシャルロッテは信じたい。
あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。
すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる