【完結】愛していないと王子が言った

miniko

文字の大きさ
3 / 13

3 幸せな思い出

しおりを挟む
初めてのデートは、ピクニックだった。

「城の裏の森に湖があって、今の時期、とても綺麗なんだよ」

そう誘われて、連れて行かれた湖の周りには、見た事がない青紫色の小さな野花が、一面に咲き乱れていた。

「まあ・・・!なんて素敵!」

「気に入ってもらえて良かった。
リリアナ嬢の瞳の色に似てるでしょう?
だから、一緒に来たかったんだ」

「嬉しいです」

私達は、手を繋いで湖畔を散歩した。
湖の水は透明度が高く、深い青色に輝いている。
ふと、隣を見上げると、蕩けるような笑顔で私を見ていたアルベルト殿下と目が合った。
みるみる頬が熱を持つのがわかる。


眩しい木漏れ日の中で、しばらく散策を続けた後・・・

「そろそろお昼にしようか?」

殿下が軽く振り向き、すっと片手を上げると、何処からともなく数人の侍女が出て来て、サッとシートを広げる。
ランチボックスと果実水の瓶をセットすると、また、一瞬で何処かへ戻って行った。
凄いな王子付き侍女。

ランチボックスの中身は色とりどりのサンドイッチと焼き菓子。
私が好きなマカロンもある。

「あ、マカロン!大好きなんです」

「ふふっ。知ってる」

何故私の好物が、王子達に筒抜けなのか?
首を傾げながらも、サンドイッチを一口齧る。

「美味しい!流石は王宮のシェフですね。
殿下はどんな食べ物がお好きですか?」

「僕は肉なら何でも」

「うふふ。男の子って感じですね。
でも、お野菜もしっかり食べて下さい」

コールスローとトマトのサンドイッチを殿下に差し出す。
殿下は自分の手で受け取らずに、私の手から直接パクリと食べた。

「うん。リリアナ嬢に食べさせてもらえるなら、野菜もちゃんと食べよう」

「なっ・・・・・・!!」

「顔真っ赤・・・可愛い。
そんな顔、他の人の前でしちゃダメだよ?」

殿下は咎めるように目を細めた。

「そ、そんなって、どんなですか?」

鏡がないから分からない。
私、今かなり恥ずかしい顔になってる気がする。

「うーん・・・、思わず抱きしめたくなるような顔?」

「~~~っっ!!」

耐え切れずに、顔を覆って俯いた。
殿下の醸し出す空気が甘過ぎる。
この人、まだ11歳ですよね?
色気が半端ない。
末恐ろしい。

身悶える私を他所に、殿下は鼻歌を歌いながら、野花で花冠を編み始めた。
青紫の花が、どんどん連なっていく。

「手先が器用なのですねぇ」

「うん。こういうのは得意なんだ」

「私は苦手で。
ちょっと、教えてもらえませんか?」

「良いよー。まず、こうして・・・こう」

ふむふむ。成る程。
隣でゆっくり編んでいくのを見ながら、同じ様に真似をする。
真似をした・・・ハズ・・・なの、だが。
ーーー何故だ?

殿下の手には、お手本の様に美しい花冠。
対して私のは・・・、歪な円形で、あちこちから茎が飛び出し、花も疎らで非常に残念な仕上がり。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

ーーープッ。
吹き出したのは、どちらが先だったか。
二人で顔を見合わせ、声を上げて笑った。

「リリアナ嬢は不器用だったんだな」

「ええ。
実は、刺繍なんかも全くダメなんです。
女性らしくないから、隠していたのですが」

「なんで?
リリアナ嬢は完璧な人だと思っていたけど、一つくらい苦手な物があっても、隙があって可愛いと思うよ」

そう言いながら、殿下は私の頭に綺麗な方の花冠を乗せた。

「ほら、すごく似合う。
こんなに可憐なのに、女性らしくないなんて、あり得ない。
花冠は、いつでも僕が作ってあげる」
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

クレアは婚約者が恋に落ちる瞬間を見た

ましろ
恋愛
──あ。 本当に恋とは一瞬で落ちるものなのですね。 その日、私は見てしまいました。 婚約者が私以外の女性に恋をする瞬間を見てしまったのです。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

公爵夫人は愛されている事に気が付かない

山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」 「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」 「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」 「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」 社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。 貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。 夫の隣に私は相応しくないのだと…。

【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです

山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。 それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。 私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。

【完結】愛されない令嬢は全てを諦めた

ツカノ
恋愛
繰り返し夢を見る。それは男爵令嬢と真実の愛を見つけた婚約者に婚約破棄された挙げ句に処刑される夢。 夢を見る度に、婚約者との顔合わせの当日に巻き戻ってしまう。 令嬢が諦めの境地に至った時、いつもとは違う展開になったのだった。 三話完結予定。

処理中です...