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3 幸せな思い出
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初めてのデートは、ピクニックだった。
「城の裏の森に湖があって、今の時期、とても綺麗なんだよ」
そう誘われて、連れて行かれた湖の周りには、見た事がない青紫色の小さな野花が、一面に咲き乱れていた。
「まあ・・・!なんて素敵!」
「気に入ってもらえて良かった。
リリアナ嬢の瞳の色に似てるでしょう?
だから、一緒に来たかったんだ」
「嬉しいです」
私達は、手を繋いで湖畔を散歩した。
湖の水は透明度が高く、深い青色に輝いている。
ふと、隣を見上げると、蕩けるような笑顔で私を見ていたアルベルト殿下と目が合った。
みるみる頬が熱を持つのがわかる。
眩しい木漏れ日の中で、しばらく散策を続けた後・・・
「そろそろお昼にしようか?」
殿下が軽く振り向き、すっと片手を上げると、何処からともなく数人の侍女が出て来て、サッとシートを広げる。
ランチボックスと果実水の瓶をセットすると、また、一瞬で何処かへ戻って行った。
凄いな王子付き侍女。
ランチボックスの中身は色とりどりのサンドイッチと焼き菓子。
私が好きなマカロンもある。
「あ、マカロン!大好きなんです」
「ふふっ。知ってる」
何故私の好物が、王子達に筒抜けなのか?
首を傾げながらも、サンドイッチを一口齧る。
「美味しい!流石は王宮のシェフですね。
殿下はどんな食べ物がお好きですか?」
「僕は肉なら何でも」
「うふふ。男の子って感じですね。
でも、お野菜もしっかり食べて下さい」
コールスローとトマトのサンドイッチを殿下に差し出す。
殿下は自分の手で受け取らずに、私の手から直接パクリと食べた。
「うん。リリアナ嬢に食べさせてもらえるなら、野菜もちゃんと食べよう」
「なっ・・・・・・!!」
「顔真っ赤・・・可愛い。
そんな顔、他の人の前でしちゃダメだよ?」
殿下は咎めるように目を細めた。
「そ、そんなって、どんなですか?」
鏡がないから分からない。
私、今かなり恥ずかしい顔になってる気がする。
「うーん・・・、思わず抱きしめたくなるような顔?」
「~~~っっ!!」
耐え切れずに、顔を覆って俯いた。
殿下の醸し出す空気が甘過ぎる。
この人、まだ11歳ですよね?
色気が半端ない。
末恐ろしい。
身悶える私を他所に、殿下は鼻歌を歌いながら、野花で花冠を編み始めた。
青紫の花が、どんどん連なっていく。
「手先が器用なのですねぇ」
「うん。こういうのは得意なんだ」
「私は苦手で。
ちょっと、教えてもらえませんか?」
「良いよー。まず、こうして・・・こう」
ふむふむ。成る程。
隣でゆっくり編んでいくのを見ながら、同じ様に真似をする。
真似をした・・・ハズ・・・なの、だが。
ーーー何故だ?
殿下の手には、お手本の様に美しい花冠。
対して私のは・・・、歪な円形で、あちこちから茎が飛び出し、花も疎らで非常に残念な仕上がり。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ーーープッ。
吹き出したのは、どちらが先だったか。
二人で顔を見合わせ、声を上げて笑った。
「リリアナ嬢は不器用だったんだな」
「ええ。
実は、刺繍なんかも全くダメなんです。
女性らしくないから、隠していたのですが」
「なんで?
リリアナ嬢は完璧な人だと思っていたけど、一つくらい苦手な物があっても、隙があって可愛いと思うよ」
そう言いながら、殿下は私の頭に綺麗な方の花冠を乗せた。
「ほら、すごく似合う。
こんなに可憐なのに、女性らしくないなんて、あり得ない。
花冠は、いつでも僕が作ってあげる」
「城の裏の森に湖があって、今の時期、とても綺麗なんだよ」
そう誘われて、連れて行かれた湖の周りには、見た事がない青紫色の小さな野花が、一面に咲き乱れていた。
「まあ・・・!なんて素敵!」
「気に入ってもらえて良かった。
リリアナ嬢の瞳の色に似てるでしょう?
だから、一緒に来たかったんだ」
「嬉しいです」
私達は、手を繋いで湖畔を散歩した。
湖の水は透明度が高く、深い青色に輝いている。
ふと、隣を見上げると、蕩けるような笑顔で私を見ていたアルベルト殿下と目が合った。
みるみる頬が熱を持つのがわかる。
眩しい木漏れ日の中で、しばらく散策を続けた後・・・
「そろそろお昼にしようか?」
殿下が軽く振り向き、すっと片手を上げると、何処からともなく数人の侍女が出て来て、サッとシートを広げる。
ランチボックスと果実水の瓶をセットすると、また、一瞬で何処かへ戻って行った。
凄いな王子付き侍女。
ランチボックスの中身は色とりどりのサンドイッチと焼き菓子。
私が好きなマカロンもある。
「あ、マカロン!大好きなんです」
「ふふっ。知ってる」
何故私の好物が、王子達に筒抜けなのか?
首を傾げながらも、サンドイッチを一口齧る。
「美味しい!流石は王宮のシェフですね。
殿下はどんな食べ物がお好きですか?」
「僕は肉なら何でも」
「うふふ。男の子って感じですね。
でも、お野菜もしっかり食べて下さい」
コールスローとトマトのサンドイッチを殿下に差し出す。
殿下は自分の手で受け取らずに、私の手から直接パクリと食べた。
「うん。リリアナ嬢に食べさせてもらえるなら、野菜もちゃんと食べよう」
「なっ・・・・・・!!」
「顔真っ赤・・・可愛い。
そんな顔、他の人の前でしちゃダメだよ?」
殿下は咎めるように目を細めた。
「そ、そんなって、どんなですか?」
鏡がないから分からない。
私、今かなり恥ずかしい顔になってる気がする。
「うーん・・・、思わず抱きしめたくなるような顔?」
「~~~っっ!!」
耐え切れずに、顔を覆って俯いた。
殿下の醸し出す空気が甘過ぎる。
この人、まだ11歳ですよね?
色気が半端ない。
末恐ろしい。
身悶える私を他所に、殿下は鼻歌を歌いながら、野花で花冠を編み始めた。
青紫の花が、どんどん連なっていく。
「手先が器用なのですねぇ」
「うん。こういうのは得意なんだ」
「私は苦手で。
ちょっと、教えてもらえませんか?」
「良いよー。まず、こうして・・・こう」
ふむふむ。成る程。
隣でゆっくり編んでいくのを見ながら、同じ様に真似をする。
真似をした・・・ハズ・・・なの、だが。
ーーー何故だ?
殿下の手には、お手本の様に美しい花冠。
対して私のは・・・、歪な円形で、あちこちから茎が飛び出し、花も疎らで非常に残念な仕上がり。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ーーープッ。
吹き出したのは、どちらが先だったか。
二人で顔を見合わせ、声を上げて笑った。
「リリアナ嬢は不器用だったんだな」
「ええ。
実は、刺繍なんかも全くダメなんです。
女性らしくないから、隠していたのですが」
「なんで?
リリアナ嬢は完璧な人だと思っていたけど、一つくらい苦手な物があっても、隙があって可愛いと思うよ」
そう言いながら、殿下は私の頭に綺麗な方の花冠を乗せた。
「ほら、すごく似合う。
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花冠は、いつでも僕が作ってあげる」
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