【完結】愛していないと王子が言った

miniko

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10 彼女の涙(アルベルト視点)

王女をその場に残したまま、僕は慌ててリリを追いかけた。

何故逃げるの?
僕は、きちんと断ったのに。
何が君を傷つけたの?

ずっと様子がおかしかったリリを思い出して、焦燥感が募る。

彼女を途中で見失ってしまって、あちこち探し回った。
ふと、図書室の扉から微かに声が聞こえた気がして、足を止めた。


「・・・・・・だから、もう分からない。
何が本当なの?
彼の側にいるのが、もう怖いの」

「リリ、もう頑張らなくて良いから」

「だけど、家族に迷惑が・・・・・・!」

「大丈夫。大丈夫だよ」

そこに居たのは、リリアナとフェリクスだった。
途中から聞いたので、話の内容はよく理解出来なかったが、そんな事よりも・・・・・・


ーーーリリアナが、泣いている。


あの男の指が、彼女の頬を伝う涙をそっと拭った。

それは僕にとって、とても衝撃的な光景だった。

彼女は僕の前では泣いた事がない。

いつも花のように微笑む彼女を愛していたけれど、もっと色々な表情を見たいとも思っていた。

もしも彼女が人前で泣く事があるなら、弱みを見せる事があるなら、それは僕の前であって欲しかった。

決して他の男の前なんかじゃなく・・・。


しかもアイツは、彼女の涙を当たり前のように、まるで、いつもそうしているかの様に拭ったのだ。

そして彼女はアイツの胸に、顔をうずめた。


胸の奥底が黒く蝕まれていくような感覚に陥る。
息の仕方もわからない。

もしも今、彼女の前に姿を表せば、きっと彼女を深く傷付ける言葉を吐いてしまうだろう。

感情をコントロールする自信が無かった僕は、強く瞼を閉じて踵を返した。



その日を最後に彼女は、僕の前から姿を消した。
ーーーアイツと共に。

そして王家には、ロイエンタール公爵家から、婚約解消の意が伝えられた。



「絶っっ対に、嫌です。
何があっても、婚約は解消しません。
リリアナでなければ、僕は一生結婚しませんから」

謁見の間で、陛下は必死に僕を説得しようとしている。
しかし、僕の気持ちは絶対に変わらない。

「王族なのだから、そう言う訳にも行かんだろうが。我儘を言うな。
ミランダ王女なんか、どうだ?
お前の事をかなり気に入っている様子じゃないか」

「はっっ!冗談じゃない!
人の迷惑も顧みずに擦り寄ってくる様な女ですよ。
絶対にお断りです」

「ちょっと言い過ぎじゃないか?」

「いいえ。嫌な物は嫌です。
大体、陛下があの女のお守りを僕に押し付けたせいで、余計に拗れたんですよ!
取り敢えず、リリアナを探し出して、必ず説得して見せますから。
もう少し時間が必要なんです。
婚約解消を引き延ばして下さい」

何故こんなにリリアナに焦がれるのだろう。
この執着は愛なのか?
しかし、愛ではないと言われても、では他になんと呼べばいいのか、僕にはわからない。
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