【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko

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3 初対面のやり直し

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鏡に映った自分の姿をジッと見つめる。

ーーーえ・・・?嘘でしょ?
悪役令嬢って、美人がデフォじゃなかったの?


この世界が乙女ゲームの中なのは、まず間違い無い。
私の名前とジュリアン殿下の名前が、パッケージ裏のあらすじに書かれていたのを覚えている。
更に、ジュリアン殿下の容姿も、パッケージに描かれていた絵にそっくりだ。

悪役令嬢の容姿については、イラストも無かったし、あらすじにも言及されていなかったが・・・。
普通の乙女ゲームの悪役令嬢は、気が強そうな美人で、頭脳もハイスペックとかじゃないのか?

鏡の中の私は、ヘーゼルの瞳とオレンジがかった髪色は美しいが、どう見ても顔立ちが平凡である。
どうなってるの?

『乙女ゲーム感はあんまり無いよ』

前世の親友の言葉が蘇る。

いやー、そこだけは王道であって欲しかった。
折角ゲームの登場人物に転生したのに、平凡な容姿って・・・・・・マジか。

でも、確か、悪役令嬢の末路って、平民落ち一択とか言ってなかったっけ?
って事は、処刑とか幽閉とかされないって事だよね。
じゃあ、婚約破棄もあんまり怖くない。
だけど婚約破棄だと、家族に迷惑かかるのは困るな・・・・・・。
穏便に解消して貰えると良いんだけど。
そもそも、婚約を回避出来れば一番よね。

「・・・・・・さま。
・・・・・・リュシエンヌお嬢様!」

気付くと、メロディが髪を結いながら、鏡越しに声をかけてきていた。

「え?あぁ、ごめんなさい。
少し考え事をしていたわ」

「大丈夫ですか?
また体調が悪くなられたのでは?」

「違うわ。心配かけてしまったわね」

「良いんですよ。
もう少しで仕上がりますからね。
あとはリボンを結んで完成です」

嬉しそうなメロディの手には水色のリボン。
わざわざ殿下の瞳の色を選んだのね。

まあ、どんなに着飾っても、元が元だからなー・・・。
お父様もお母様もかなりの美形なのに、どうしちゃったのかな?
でも、二人に全く似てないと言う訳でも無いのが不思議だよね。
前世でも、美男美女の芸能人夫婦なのに、子供は微妙だなってパターンあったよなぁ。
今の私、アレと同じだわ。

・・・いけない、また思考の海に沈みそうになってた。


丁寧に結い上げられた私の髪に、メロディがリボンを結んだその時、

「ジュリアン殿下がいらっしゃいました」

丁度いいタイミングで、執事が呼びに来た。



応接室に入ると、ソファーに腰掛けていたジュリアン殿下が、私を目にして立ち上がり、眩しい位の笑顔になった。

「リュシエンヌ嬢。
無事に目が覚めて、本当に良かった。
さあさあ、まだ病み上がりなのだから、早く座って」

駆け寄った殿下は、淑女の礼を取ろうとした私を制して、着席を勧めてくれる。
とてもお優しい方だ。

「ジュリアン殿下、何度もお見舞いに来て下さったと聞いております。
本当に有難うございます」

「ああ、目の前で人が倒れるのを初めて見たから、気になってしまってね。
体調は、問題ないのかい?」

私を見つめる彼の瞳は、本気で心配してくれている様に見えた。

「ええ。ご心配とご迷惑ををお掛け致しましたが、目覚めてからは、特に不調はございません」

「そうか、安心したよ。
・・・ところで、王家から本格的に婚約の打診をした事は、聞いているかな?」

「はい。先程、お父様から聞きました。
ですが、私は先日、いきなり倒れたばかりです。
原因もまだ定かではありませんし、王子妃には相応しく無いのでは・・・」

「問題ないよ。この縁談は、僕の希望でもあるんだ。
是非受けて貰いたい」

私を見つめる視線に甘さが滲む。
頬が上気するのを止められなくて、思わず俯いた。

王子殿下の希望だとまで言われてしまったら、私には断る選択肢など残されていないのだろう。


ーーー例え、いつか婚約破棄されるとしても。


「・・・かしこまりました、殿下。
不束者ですが、よろしくお願い致します」
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