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1 卒業パーティー
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楽団の生演奏が響く中、煌びやかに着飾った男女が優雅にダンスを楽しんでいる。
三年間通った貴族学園の大ホール。
今日は卒業祝いの宴だ。
卒業生の私も、今日は主役の一人・・・
の、はずなのだが。
何故こんなショッパイ気持ちにならなければいけないのか。
目の前には、外見だけは素敵な私の婚約者、オズワルド。
その腕にぶら下がっているのは、勝ち誇った顔を隠しもしない、いけ好かない同級生の女、ライラ。
「オズワルド様。
確か私達は一応婚約者でしたわよね?」
「不本意ながら、そうだな」
「では、何故他の女性をエスコートしてらっしゃるのかしら?」
周囲からの冷たい視線が突き刺さる。
「それは、俺とライラが愛し合っているからだ。
お前とは家の為に仕方がないから結婚してやるが、俺の心はライラの物だ」
偉そうに踏ん反り返っていますけど、皆さんからの嘲笑の半分以上は、貴方達に向けた物ですからね?
それから、私は貴方の心なんて頼まれても貰いたくない。そんなもん資源ゴミにすらならないじゃないか。
「そうですか。では、是非その愛とやらを貫いて下さいませ。」
私は冷笑を浮かべると、クルリと踵を返し会場を後にした。
「ちょ、ちょっと待て!」
「待ちなさいよ!」
二人は先程までの余裕の表情を捨て、慌てた様子で叫んでいるが知ったこっちゃない。
そりゃあ、慌てるわよね。
この婚約が壊れて困るのは、私ではないのだから。
何故こんな仕打ちをしておいて私と結婚出来ると思ったのか、理解に苦しむ。
本当にびっくりするほどお粗末な脳味噌だ。
私の名前はセシリア・ランバート。
我が家は古い歴史がある名家で、大きな商会なども営む伯爵家。
当然ながら、この国でも指折りの資産を有している。
しかし、子供は女性である私一人だけ。
そう、後継者が居ないのだ。
そこで結ばれたこの婚約。
お相手のオズワルド・セルヴィッチ様は侯爵家の次男。
爵位こそ格上ではあるが、セルヴィッチ侯爵領は数年前の洪水の被害が大き過ぎて、未だに莫大な修繕の工事費用がかかり続けており、財政状況がかなり不安定だ。
ランバート伯爵家から金銭的な支援を受ける代わりに、優秀な子息を婿として提供する。
それがこの婚約の契約内容だ。
優秀な婿。「優秀な」がウチにとって一番大切な条件。
そう。賢い皆さんならもうお気付きでしょう?
この時点で、彼は全くその要件を満たしていない事を。
互いに利があるからこそ、政略結婚は成立するのです。
こちらに利のない政略結婚に何の意味があるのか。
そもそも、それを政略と呼べるのか?
予定よりも大分早い時間に帰宅した私は、直ぐに執事を呼び、お父様への面会を申し入れた。
三年間通った貴族学園の大ホール。
今日は卒業祝いの宴だ。
卒業生の私も、今日は主役の一人・・・
の、はずなのだが。
何故こんなショッパイ気持ちにならなければいけないのか。
目の前には、外見だけは素敵な私の婚約者、オズワルド。
その腕にぶら下がっているのは、勝ち誇った顔を隠しもしない、いけ好かない同級生の女、ライラ。
「オズワルド様。
確か私達は一応婚約者でしたわよね?」
「不本意ながら、そうだな」
「では、何故他の女性をエスコートしてらっしゃるのかしら?」
周囲からの冷たい視線が突き刺さる。
「それは、俺とライラが愛し合っているからだ。
お前とは家の為に仕方がないから結婚してやるが、俺の心はライラの物だ」
偉そうに踏ん反り返っていますけど、皆さんからの嘲笑の半分以上は、貴方達に向けた物ですからね?
それから、私は貴方の心なんて頼まれても貰いたくない。そんなもん資源ゴミにすらならないじゃないか。
「そうですか。では、是非その愛とやらを貫いて下さいませ。」
私は冷笑を浮かべると、クルリと踵を返し会場を後にした。
「ちょ、ちょっと待て!」
「待ちなさいよ!」
二人は先程までの余裕の表情を捨て、慌てた様子で叫んでいるが知ったこっちゃない。
そりゃあ、慌てるわよね。
この婚約が壊れて困るのは、私ではないのだから。
何故こんな仕打ちをしておいて私と結婚出来ると思ったのか、理解に苦しむ。
本当にびっくりするほどお粗末な脳味噌だ。
私の名前はセシリア・ランバート。
我が家は古い歴史がある名家で、大きな商会なども営む伯爵家。
当然ながら、この国でも指折りの資産を有している。
しかし、子供は女性である私一人だけ。
そう、後継者が居ないのだ。
そこで結ばれたこの婚約。
お相手のオズワルド・セルヴィッチ様は侯爵家の次男。
爵位こそ格上ではあるが、セルヴィッチ侯爵領は数年前の洪水の被害が大き過ぎて、未だに莫大な修繕の工事費用がかかり続けており、財政状況がかなり不安定だ。
ランバート伯爵家から金銭的な支援を受ける代わりに、優秀な子息を婿として提供する。
それがこの婚約の契約内容だ。
優秀な婿。「優秀な」がウチにとって一番大切な条件。
そう。賢い皆さんならもうお気付きでしょう?
この時点で、彼は全くその要件を満たしていない事を。
互いに利があるからこそ、政略結婚は成立するのです。
こちらに利のない政略結婚に何の意味があるのか。
そもそも、それを政略と呼べるのか?
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