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22 初出勤
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仕事をさせて欲しいと懇願する私に、コールドウェル様は渋々といった感じで頷いた。
「…じゃあ、取り敢えず、国境警備団の救護室で調薬補助の仕事をして貰おうかな。
俺は今朝ちょっと急ぎの仕事があるから送ってあげられないが、朝食後、少し休んでからミアに案内して貰うと良い」
「はい。そうさせて頂きます。
ところで、昨日は聞きそびれてしまったのですが、コールドウェル様のご両親にご挨拶をしなくても良いのでしょうか?」
「ああ、言ってなかったかな。
俺の両親は爵位を譲り渡してすぐに、諸国漫遊の旅に出た。
引退したら二人で旅行するのが夢だったそうだ。
連絡は取り合っているから、婚約の件は報告してあるし、賛成してくれているから大丈夫だ。
俺達の結婚式までには一旦帰るそうだが、申し訳ないがそれまでは顔合わせが出来そうもない」
「そうなんですね。
ご両親が納得してくださっているなら、私は良いのです」
引退後に二人きりで旅行なんて、とっても仲が良いのね。
きっと素敵なご夫婦なのだろう。
お会いするのが楽しみだ。
食事を終えて、ミアに案内して貰い、辺境伯邸に隣接した国境警備団の建物へ。
救護室と表示された扉をノックすると、「はーい」と言う言葉と共に扉が中から勢い良く開かれる。
顔を出した人物と目が合って、私は固まった。
「あら、貴女がフェリシアちゃんね。話は聞いてるわ。
私はマリリン・ランドルフ。ここの治癒魔法師よ」
笑顔で握手を求めてきた彼女は、今迄見た事がない位の妖艶な美女だった。
エキゾチックな褐色の肌に、艶やかな黒髪。
腰は細過ぎるのに、胸だけはたわわで、心底羨ましい。
ミアといい、この女性といい……。
もしかして、西の辺境って美女しか居住を許されないのだろうか?
え?嘘でしょ?
大丈夫か、私。
「おーい。フェリシアちゃん?」
思わずジッと見つめていたら、不思議そうに顔を覗き込まれた。
「あ……あぁ、済みません。
フェリシア・バッセルです。今日からお手伝いさせて頂きます。
よろしくお願いします」
慌てて握手に応じ、自己紹介をすると、美女は麗しい微笑みを見せた。
「マリリンって呼んでね」
「わかりました、マリリン様」
「いや、〝様〟とか要らないし」
「では、マリリンさん?」
ウンウンと、満足そうに頷くマリリンさん。
見た目は妖艶なのに、中身はお喋り好きな近所のおばちゃんみたいに気さくな雰囲気だ。
救護室の内部は、学校の保健室の規模を少し大きくした様な感じだった。
広い空間に簡易ベッドが四台設置され、それぞれがカーテンで仕切られている。
壁一面には大きな棚が備え付けられていた。
ガラスの扉の棚には薬が入った瓶と書類が沢山並べられていて、小さな引き出しが沢山並んだ木製の棚には、それぞれの引き出しに薬草の名が書かれたラベルが貼られている。
室内に仄かに漂う薬草の香りを、胸一杯に吸い込んだ。
「薬草の香り……。落ち着きます」
「フェリシアちゃんは薬師なんだよね?」
「はい。でも、雑用とか何でもやらせてください」
「本当に?助かるーーっ!!
昨日まで、私一人でやってたのよー。
ちょっと前までは、もう一人職員が居たんだけど、ここの騎士と結婚して今妊娠中でね」
辺境領では出会いが少ないので職場恋愛が多いらしい。
「…じゃあ、取り敢えず、国境警備団の救護室で調薬補助の仕事をして貰おうかな。
俺は今朝ちょっと急ぎの仕事があるから送ってあげられないが、朝食後、少し休んでからミアに案内して貰うと良い」
「はい。そうさせて頂きます。
ところで、昨日は聞きそびれてしまったのですが、コールドウェル様のご両親にご挨拶をしなくても良いのでしょうか?」
「ああ、言ってなかったかな。
俺の両親は爵位を譲り渡してすぐに、諸国漫遊の旅に出た。
引退したら二人で旅行するのが夢だったそうだ。
連絡は取り合っているから、婚約の件は報告してあるし、賛成してくれているから大丈夫だ。
俺達の結婚式までには一旦帰るそうだが、申し訳ないがそれまでは顔合わせが出来そうもない」
「そうなんですね。
ご両親が納得してくださっているなら、私は良いのです」
引退後に二人きりで旅行なんて、とっても仲が良いのね。
きっと素敵なご夫婦なのだろう。
お会いするのが楽しみだ。
食事を終えて、ミアに案内して貰い、辺境伯邸に隣接した国境警備団の建物へ。
救護室と表示された扉をノックすると、「はーい」と言う言葉と共に扉が中から勢い良く開かれる。
顔を出した人物と目が合って、私は固まった。
「あら、貴女がフェリシアちゃんね。話は聞いてるわ。
私はマリリン・ランドルフ。ここの治癒魔法師よ」
笑顔で握手を求めてきた彼女は、今迄見た事がない位の妖艶な美女だった。
エキゾチックな褐色の肌に、艶やかな黒髪。
腰は細過ぎるのに、胸だけはたわわで、心底羨ましい。
ミアといい、この女性といい……。
もしかして、西の辺境って美女しか居住を許されないのだろうか?
え?嘘でしょ?
大丈夫か、私。
「おーい。フェリシアちゃん?」
思わずジッと見つめていたら、不思議そうに顔を覗き込まれた。
「あ……あぁ、済みません。
フェリシア・バッセルです。今日からお手伝いさせて頂きます。
よろしくお願いします」
慌てて握手に応じ、自己紹介をすると、美女は麗しい微笑みを見せた。
「マリリンって呼んでね」
「わかりました、マリリン様」
「いや、〝様〟とか要らないし」
「では、マリリンさん?」
ウンウンと、満足そうに頷くマリリンさん。
見た目は妖艶なのに、中身はお喋り好きな近所のおばちゃんみたいに気さくな雰囲気だ。
救護室の内部は、学校の保健室の規模を少し大きくした様な感じだった。
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「本当に?助かるーーっ!!
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