【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko

文字の大きさ
23 / 56

23 救護室の美魔女

 国境警備団は、妊娠出産時に休暇が貰えたり託児所が併設されていたりして福利厚生がしっかりしているので、女性にも人気の職場なのだとか。
 流石に女性騎士はまだ少ないらしいが、掃除婦や洗濯婦、食堂の職員や事務員として沢山の女性が働いているみたい。
 この国は女性の社会進出が少し遅れ気味なので、珍しい事例だ。


「まあ、魔獣が大量発生したりするとかなり忙しいけど、十年前に比べればノンビリしたもんよ。
 空いた時間は、私とお茶でも飲みながら、お喋りしてくれると嬉しいわ」

 十年前と言えば、隣国との関係が悪化して、国境付近が騒がしかった頃だ。
 しかし、どう見てもマリリンさんは二十代前半。
 十年前はまだ子供だったのでは?

 そんな私の疑問を察して、彼女は衝撃の発言をする。

「十年前は、まだ私も駆け出しの治癒師だったけど。
私、今年で三十二歳なの」

「えっ!?本当ですか?
 てっきり二十代前半くらいかと思いました……」

 まさかのコールドウェル様より年上!?
 コールドウェル様が老けているのか、マリリンさんが若見え過ぎるのか……或いは両方か?

「ふふっ。有難う。
 フェリシアちゃん、良い子ねぇ」

 嬉しそうに笑った彼女は、子供を褒めるみたいに、私の頭をぐりぐりと撫でた。

「程々にして下さい、マリリン様。
 フェリシア様のお髪が乱れます」

 放って置いたらいつまでも撫で回しそうなマリリンさんの手を、ミアがやんわりと止める。

「アハハ、ごめんごめん。
 つい、ウチのチビと同じ扱いしちゃった」

 ………チビ?

「マリリンさん、お子さんがいらっしゃるんですね」

「うん。五歳の男の子。未婚の母」

 見た目二十歳そこそこにしか見えないのに未婚の母かぁ。
 でも、実年齢を考えると、もっと大きな子供が居てもおかしく無いのよね。
 なんか脳が混乱してくる。

 託児所があるのは、マリリンさんみたいな一人親でも働き易い環境を作る為かもしれないな。
 嫌な想像だけど、やっぱり騎士をしていれば殉職してしまう事もある。
 自分の配偶者がそうなった時、子供を抱えて生きていく為にはこういう職場があるのは有り難いよね。
 コールドウェル様は残されてしまった家族の事も考えて職場環境を整えているのかも。
 やっぱり見かけによらず、優しい人だ。



 お互い簡単な自己紹介をし、仕事の説明を受けて、マリリンさんに指示されながら足りない薬草の手配や調剤などを行う。
 国境警備団はかなり大所帯なので、薬を作る量も半端じゃない。
 帳簿付けや書類の整理、器具の洗浄消毒など、意外と雑務も多く、今迄はこれをマリリンさん一人で処理していたかと思うと、彼女のノホホンとした性格とのギャップに驚かされる。

「いやぁ、手伝ってくれる人が居ると仕事が早く片付くわね」

 しみじみと呟くマリリンさんに、少しはお役に立てた気がしてホッとした。
感想 215

あなたにおすすめの小説

「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」 新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。 それもそのはず。 2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。 でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。 美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。 だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。 どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。 すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?  焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【完結】愛してました、たぶん   

たろ
恋愛
「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。 「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・