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19 僕だけの彼女
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《side:ジェフリー》
「貴方の婚約者になるフェリシア嬢よ。
仲良くしなさいね」
「初めまして、フェリシア嬢。
こんなに美しいご令嬢と婚約出来るなんて、僕は幸せ者ですね」
母親からフェリシアを紹介された時、義務的に彼女を褒めながらも、僕は少しだけがっかりしていた。
フェリシアは美人だけど冷たい印象で、僕の好みでは無かったからだ。
この国では未だに、女性は従順である方が良いという風潮が強く、そのせいか容姿についても、キリッとした美人よりもフワフワした可愛らしい女性の方が好まれる傾向にある。
そして僕もご多聞に漏れず、将来は優しくて可愛らしい女性を妻に迎えたいと夢見ていたのに……。
だが、お茶を飲みながら話をしてみると、フェリシアは気が強そうな容姿に反して、とても気遣いが出来て聞き上手であった。
表情が殆ど変化しないので分かりにくいが、優しい子なのではないだろうか。
───そんな風に思い始めた時だった。
紅茶のシフォンケーキを一口食べた彼女が、一瞬だけフワリと頬を緩ませたのだ。
(可愛い……!!)
ずっと無表情だったフェリシアの不意打ちの微笑みにノックアウトされた僕は、その瞬間から彼女の事が気になって仕方なくなった。
婚約が成立してからは、頻繁にバッセル家を訪問したり、デートに誘い出したりして彼女の表情を観察するのが楽しみになった。
美味しい紅茶のシフォンケーキを食べた時。
綺麗に開花した一輪の薔薇をあげた時。
ミルクを舐める子猫を見ている時。
木漏れ日が揺れる新緑の森を散歩した時。
彼女の微かな表情の変化で、好きな物、喜ぶ事を見つける事に幸せを感じた。
自分だけが知っている彼女の可愛い表情が、大好きになった。
僕が風邪を引いて寝込んだ時、フェリシアは自分で栽培しているという薬草を持って見舞いにやって来た。
「この薬草は、鮮度が高いほど効果が出やすいのです」
そう言いながら自ら煎じてくれた薬湯は、とても苦かったけど、本当に良く効いた。
僕が苦しむ様子を見守る彼女は微かに眉根を寄せて心配そうな顔をしている。
熱に浮かされてぼんやりしながらも、彼女が新しい表情を見せてくれた事が嬉しくて、『風邪を引いた甲斐があった』とまで思った。
二人が十二歳の頃、フェリシアの母親が突然亡くなった。
とても不幸な事故だった。
街を歩いている時に、暴走して突っ込んで来た馬車からフェリシアを庇って命を落としたのだ。
葬儀の際、フェリシアは涙を見せなかった。
「自分を庇って母親が死んだのに涙も見せないなんて、冷たい娘だ」
参列者達にはそんな風に言われていたが、涙を流さないからって、悲しんでいない訳では無い。
フェリシアの表情の変化に敏感な僕には、彼女の気持ちが痛いほど分かった。
だから、今まで以上に頻繁に会いに行き、立ち直るまで側で彼女を支えた。
この頃の僕は献身的とも言えるほど、フェリシアに尽くしていた。
だけど───。
「貴方の婚約者になるフェリシア嬢よ。
仲良くしなさいね」
「初めまして、フェリシア嬢。
こんなに美しいご令嬢と婚約出来るなんて、僕は幸せ者ですね」
母親からフェリシアを紹介された時、義務的に彼女を褒めながらも、僕は少しだけがっかりしていた。
フェリシアは美人だけど冷たい印象で、僕の好みでは無かったからだ。
この国では未だに、女性は従順である方が良いという風潮が強く、そのせいか容姿についても、キリッとした美人よりもフワフワした可愛らしい女性の方が好まれる傾向にある。
そして僕もご多聞に漏れず、将来は優しくて可愛らしい女性を妻に迎えたいと夢見ていたのに……。
だが、お茶を飲みながら話をしてみると、フェリシアは気が強そうな容姿に反して、とても気遣いが出来て聞き上手であった。
表情が殆ど変化しないので分かりにくいが、優しい子なのではないだろうか。
───そんな風に思い始めた時だった。
紅茶のシフォンケーキを一口食べた彼女が、一瞬だけフワリと頬を緩ませたのだ。
(可愛い……!!)
ずっと無表情だったフェリシアの不意打ちの微笑みにノックアウトされた僕は、その瞬間から彼女の事が気になって仕方なくなった。
婚約が成立してからは、頻繁にバッセル家を訪問したり、デートに誘い出したりして彼女の表情を観察するのが楽しみになった。
美味しい紅茶のシフォンケーキを食べた時。
綺麗に開花した一輪の薔薇をあげた時。
ミルクを舐める子猫を見ている時。
木漏れ日が揺れる新緑の森を散歩した時。
彼女の微かな表情の変化で、好きな物、喜ぶ事を見つける事に幸せを感じた。
自分だけが知っている彼女の可愛い表情が、大好きになった。
僕が風邪を引いて寝込んだ時、フェリシアは自分で栽培しているという薬草を持って見舞いにやって来た。
「この薬草は、鮮度が高いほど効果が出やすいのです」
そう言いながら自ら煎じてくれた薬湯は、とても苦かったけど、本当に良く効いた。
僕が苦しむ様子を見守る彼女は微かに眉根を寄せて心配そうな顔をしている。
熱に浮かされてぼんやりしながらも、彼女が新しい表情を見せてくれた事が嬉しくて、『風邪を引いた甲斐があった』とまで思った。
二人が十二歳の頃、フェリシアの母親が突然亡くなった。
とても不幸な事故だった。
街を歩いている時に、暴走して突っ込んで来た馬車からフェリシアを庇って命を落としたのだ。
葬儀の際、フェリシアは涙を見せなかった。
「自分を庇って母親が死んだのに涙も見せないなんて、冷たい娘だ」
参列者達にはそんな風に言われていたが、涙を流さないからって、悲しんでいない訳では無い。
フェリシアの表情の変化に敏感な僕には、彼女の気持ちが痛いほど分かった。
だから、今まで以上に頻繁に会いに行き、立ち直るまで側で彼女を支えた。
この頃の僕は献身的とも言えるほど、フェリシアに尽くしていた。
だけど───。
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