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12 幼過ぎる妻
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《side:マーティン》
「マーティンは、ディアナ嬢と婚約したんだって?
七歳年下か。男の夢だな」
飲み屋のカウンターで、学生時代からの悪友は、ニヤニヤと笑いながら俺の肩をバシバシ叩いた。
「ふざけんな。何が夢なもんか。
あんな乳臭いガキ、欲しけりゃくれてやる」
「乳臭いのは今だけだろう。
ディアナ嬢は、ビスクドールみたいな美少女だって評判だし、五年もすればきっと美人になるさ。
今から自分好みのイイ女に育て上げるのも、また一興だぞ」
「嫌だよ、面倒クセェ」
お子様のお守りなんて真っ平だと、この時は思っていた。
だが、この友人の言葉をもっとちゃんと聞いておけば良かったと、俺は後悔する事になる。
俺がディアナと婚約したのは、二十歳の時。
その頃の彼女は、まだ十三歳のクソガキだった。
父上が投資に失敗したせいで、金が必要になって結んだ縁談だった。
侯爵家の嫡男である俺は、本来ならば嫁など選び放題だった筈なのに。
自分が金で買われたみたいに思えて、この縁談には初めから不満しか無かった。
婚約の顔合わせの時、俺は彼女をジロジロと眺めた。
ピンクブロンドの髪に、大きなラズベリーレッドの瞳。
白く柔らかそうな頬。
十三歳としても、少々童顔で背も小さいんじゃないだろうか。
ロリコン野郎ならば涎を垂らして喜びそうだが、生憎俺の好みはセクシー系の美女だ。
それなのに・・・・・・
何故こんな女と結婚せねばならないのか。
舌打ちが抑えられない。
金の為とは言え、ガキのご機嫌を取るつもりなどない。
まあ、書類上だけでも婚姻を結んで、持参金をせしめることが出来れば、両親も文句は言わないだろうと思っていた。
「お前の様なガキを愛するつもりはない。
父上の命令だから、結婚はしてやるが、何も期待するなよ」
そう宣言して、直ぐに席を立った。
目の前で泣かれたりするのも面倒なので、サッサと自室に戻ろうとしたのだが、背後から予想外の台詞が投げ掛けられた。
「かしこまりました」
チラリと振り返った時に見えた彼女の口元は、微かな笑みを湛えていた。
(見た目に反して気の強い女だな)
そんな結婚なので、挙式は互いの家族のみが見守る中でひっそりと行われた。
初顔合わせ以降、会っていなかったディアナは、二年経っても全く成長しておらず、女らしさは見えない。
どう見てもお子様だ。
特に胸元が残念だ。
まあ、どうでも良い。
所詮はお飾りの妻だ。
持参金さえ受け取れば、後は別邸に押し込めて置けば良いだろう。
「お前が今日から住むのは別邸の方だ。
最低限の使用人は用意したから、贅沢は言うなよ」
「因みに旦那様はどちらに住まわれるのですか?」
「勿論、本邸に住む。
愛する女と住むのだから、邪魔をするなよ」
今度こそ泣いて縋って来るだろうと予測したのだが・・・
「はい。
では本邸の方には近寄らない様に致しますね」
何でもない事の様に、爽やかな笑顔で了承されてしまうと、妙に腹が立って仕方ない。
そして、俺は恋人と本邸で暮らし始めたのだが・・・・・・。
一緒に暮らし始めて三年が過ぎた頃から、その恋人への気持ちに変化が生じた。
彼女は異国から来た踊り子で、正確な年齢は教えてくれなかったが、俺よりずっと年上だったのだろう。
出会った頃は俺好みの妖艶な美女だったが、少しづつその美貌に翳りが見え始めた。
その上性格は傲慢で、金遣いも荒い。
惚れていた頃ならば、それも魅力だと思っていたのだが、恋の熱が冷めてしまえば、ただの面倒な女だ。
彼女との喧嘩が絶えなくなり、そろそろ潮時だろうかと思い始めた頃だった。
忘れかけていた書類上の妻からの手紙が舞い込んだのは。
「マーティンは、ディアナ嬢と婚約したんだって?
七歳年下か。男の夢だな」
飲み屋のカウンターで、学生時代からの悪友は、ニヤニヤと笑いながら俺の肩をバシバシ叩いた。
「ふざけんな。何が夢なもんか。
あんな乳臭いガキ、欲しけりゃくれてやる」
「乳臭いのは今だけだろう。
ディアナ嬢は、ビスクドールみたいな美少女だって評判だし、五年もすればきっと美人になるさ。
今から自分好みのイイ女に育て上げるのも、また一興だぞ」
「嫌だよ、面倒クセェ」
お子様のお守りなんて真っ平だと、この時は思っていた。
だが、この友人の言葉をもっとちゃんと聞いておけば良かったと、俺は後悔する事になる。
俺がディアナと婚約したのは、二十歳の時。
その頃の彼女は、まだ十三歳のクソガキだった。
父上が投資に失敗したせいで、金が必要になって結んだ縁談だった。
侯爵家の嫡男である俺は、本来ならば嫁など選び放題だった筈なのに。
自分が金で買われたみたいに思えて、この縁談には初めから不満しか無かった。
婚約の顔合わせの時、俺は彼女をジロジロと眺めた。
ピンクブロンドの髪に、大きなラズベリーレッドの瞳。
白く柔らかそうな頬。
十三歳としても、少々童顔で背も小さいんじゃないだろうか。
ロリコン野郎ならば涎を垂らして喜びそうだが、生憎俺の好みはセクシー系の美女だ。
それなのに・・・・・・
何故こんな女と結婚せねばならないのか。
舌打ちが抑えられない。
金の為とは言え、ガキのご機嫌を取るつもりなどない。
まあ、書類上だけでも婚姻を結んで、持参金をせしめることが出来れば、両親も文句は言わないだろうと思っていた。
「お前の様なガキを愛するつもりはない。
父上の命令だから、結婚はしてやるが、何も期待するなよ」
そう宣言して、直ぐに席を立った。
目の前で泣かれたりするのも面倒なので、サッサと自室に戻ろうとしたのだが、背後から予想外の台詞が投げ掛けられた。
「かしこまりました」
チラリと振り返った時に見えた彼女の口元は、微かな笑みを湛えていた。
(見た目に反して気の強い女だな)
そんな結婚なので、挙式は互いの家族のみが見守る中でひっそりと行われた。
初顔合わせ以降、会っていなかったディアナは、二年経っても全く成長しておらず、女らしさは見えない。
どう見てもお子様だ。
特に胸元が残念だ。
まあ、どうでも良い。
所詮はお飾りの妻だ。
持参金さえ受け取れば、後は別邸に押し込めて置けば良いだろう。
「お前が今日から住むのは別邸の方だ。
最低限の使用人は用意したから、贅沢は言うなよ」
「因みに旦那様はどちらに住まわれるのですか?」
「勿論、本邸に住む。
愛する女と住むのだから、邪魔をするなよ」
今度こそ泣いて縋って来るだろうと予測したのだが・・・
「はい。
では本邸の方には近寄らない様に致しますね」
何でもない事の様に、爽やかな笑顔で了承されてしまうと、妙に腹が立って仕方ない。
そして、俺は恋人と本邸で暮らし始めたのだが・・・・・・。
一緒に暮らし始めて三年が過ぎた頃から、その恋人への気持ちに変化が生じた。
彼女は異国から来た踊り子で、正確な年齢は教えてくれなかったが、俺よりずっと年上だったのだろう。
出会った頃は俺好みの妖艶な美女だったが、少しづつその美貌に翳りが見え始めた。
その上性格は傲慢で、金遣いも荒い。
惚れていた頃ならば、それも魅力だと思っていたのだが、恋の熱が冷めてしまえば、ただの面倒な女だ。
彼女との喧嘩が絶えなくなり、そろそろ潮時だろうかと思い始めた頃だった。
忘れかけていた書類上の妻からの手紙が舞い込んだのは。
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