【完結】二度目の人生に貴方は要らない

miniko

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27 潜入捜査

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フィルから解放された私は、ジョシュア殿下に促されて口を開いた。

「あの、どの程度の鑑定能力をお望みなのかは分かりませんが、簡単な鑑定で良ければ私にも出来ますよ?」

「へぇ。
ローズがディアナ嬢は多才だって言ってたけど、そんな事も出来るのか」

殿下は微かに目を見張った。

「いえ、どれも中途半端な知識なのですが・・・」

「じゃあ、簡単なテストを受けて貰って、大丈夫そうだったら捜査に協力してくれないか?
男性捜査官と恋人同士のフリをして、画廊に潜入して欲しいんだ」

殿下の言葉にフィルが苛立ちを露わにする。

「はあぁ!?
ふざけんなよ、ジョシュア!
それなら、僕がディアと一緒に潜入する」

「お前は目立ち過ぎるから駄目だ。
少し位は我慢しろよ。
あんまり束縛すると嫌われるぞ。
フィリップだって、バークレイを潰したいんだろう?」

「そりゃそうだが、ディアを危険な目に合わせるのは本末転倒だ」

「フィル、私は大丈夫です。
それに、フィルに護られてるだけなのは嫌だわ。
マーティン様の事は、出来れば自分で解決したいと思っていたので、捜査に協力出来るなら嬉しいです」

私の言葉を聞いたフィルは、なんとも複雑な表情をしていた。




テストの結果、私の知識は今回の作戦を実行するのに充分だったらしく、画廊への潜入が決まった。

当日、私に付き添って来たフィルは、ずっと不機嫌そうな空気を醸し出している。

「ディアナ嬢、協力ありがとう。
コイツが今日、君と潜入する捜査官のリオだ。
小柄だけど腕っ節は強いから、安心して」

ジョシュア殿下に紹介された男性は、人懐っこい笑みを浮かべた細身の男性だった。
一見すると強そうには見えないが、だからこそ相手を油断させられるのだろう。

「よろしくお願いします」

私はジョシュア殿下から、映像記録の魔道具を渡された。
どう見ても腕時計にしか見えないソレは、ローズ様が開発した物らしい。
ローズ様、一体何してるんだろう?
従来の物より小型化した為、記録出来る時間はそう長くないとの事。

「だから、贋作らしき絵画だけを撮影して欲しいんだ」

私は腕時計型魔道具の操作方法を教えて貰った。

リオ様のポケットには、音声記録用の魔道具が入っていて、そちらは潜入中はずっと作動しているらしい。
そして、記録と同時に、馬車の中で待つ殿下達にも、その音声が聞こえる様になっているのだそうだ。
危険な状況になったら、援軍が駆けつけてくれると言うので安心だ。

用意された衣装に着替えた私とリオ様は、如何にも成金って感じの派手で悪趣味な雰囲気になった。
この方がカモっぽく見えるのかな?
私のピンクブロンドは目立つので、茶髪の平凡なカツラを被っている。

「僕のディアは何を着てても可愛い」

「・・・ありがとう、ございます?」

この服装を褒められるのは、流石に無理があるような・・・。

「うん、良いねぇ。
ディアナ嬢はなんでも似合うね。
良い感じで俗物っぽいカップルに見えるよ。
ちょっと手とか繋いでみて」

ジョシュア殿下に至っては、最早褒めているんだか馬鹿にしているんだか分からない。

指示通りに手を繋いでみれば、フィルが発する怒気で周囲の温度が下がった気がした。

「フィリップ様、勘弁して下さい。
俺は、命令だから仕方なく・・・」

「何?ディアの恋人役を演るのが不満だとでも言うの?」

「いや、光栄ですが、命の危機を感じると申しますか・・・」

そんな二人の会話を聞きながら、ニヤニヤと笑っているジョシュア殿下は、きっとフィルを揶揄って遊んでいるに違いない。
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