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2.イアンと初代守護者「レヴィ・アタン」
しおりを挟むイアンは幼少の頃より神殿の護り人として教育され、自身でもその大任に対して努力をしてきた。
その努力は前守護者によるヴィターナ、ジオンの指導に勝る程の頑張りであり、毎日毎日、血が滲むほどの剣術の練習と水の精を操る為の詠唱を繰り返し、大人との対人戦で血肉が飛ぼうと寝る時間が削られようと弱音を吐く事はなかった。幼少の頃より現在まで一度も訓練を蔑ろにした事は無い。その光景を目の当たりにしてきた護り人の一族は、イアンは歴代でも類を見ない生粋の護り人だ、安泰だ心配する事はないと安心していた。その光景を知らない者達は毎日「レヴィアタン」と叫んでいる変人に見えているのは当たり前だ。護り人からしてみれば特に気にすることの無い事で、イアンの父親は放任主義者のため護り人の仕事を全うすれば何も言わない。街で騒いでいようが声を出す事はなかったのだ。
ヴィターナ、ジオンはその努力を知らない、それは何故か。
護り人としての訓練はレヴィ族の誇りであり、それを口にする事は恥だと教わってるからである。イアンの護り人としての自覚は、周りが思っている百倍以上にあった。
それは守護者としてこれから名を馳せるであろうヴィターナと英雄の息子であるジオンに対しての対抗心。そして、幼馴染であるヴィターナに恋する者として、想い人を護るための力を手にする事が、イアンにとっての原動力になっていた。
──今より三年前。
嵐が吹き荒れる夜、イアンは護り人の訓練終了後に自主練習として荒くれる海の中で詠唱を唱えていた。その詠唱は荒くれる海を制し、水竜を具現化をするという上位詠唱である。
この詠唱は体力を大幅に消耗するため一日に詠唱出来る回数が決まっている。だが、その事を知らないイアンは三回も詠唱練習をしてしまった。三回目の詠唱練習をした瞬間にこと切れたイアンは荒くれる海の中に落ちた。
意識が無い中で波に揉みくちゃにされ、肺に溜まっていた空気は一気に口の外へと放出された。無意識の内に大量の海水を飲み、呼吸は完全に止まった。海面に上がる事はなく、波に揉まれて光の届かない下層へと引き込まれていく、そこでイアンは意識を取り戻すが、一瞬で現状を理解した脳は生きるのを諦め、ただ波に体を任せた。
イアンは死んだと確信した。だが、死んでいなかった。
「ここは・・・」
目を開けたイアンは当たりを見渡した。
透き通るように綺麗な水の大河川にイアンは立っていた。河川の横には緑の葉を沢山つけた大木が一列に立ち並び、後ろを振り返ると大きな滝が爆音を立てながら膨大な水を落としている。
鏡のような水面に緑の大木が反射した神秘的な光景に呆気にとられていると、イアンの周りには水の妖精達が飛んでいた。その妖精達は何も言わずに前方へと飛んでいき、イアンもそれを追い掛けるように前へと歩き出す。
最初は足が余裕でついていたが、次第に水深が深くなっていきイアンは足先を伸ばして背伸びをしながら前へと歩いていた。
イアンは泳ぎに自信があったが、先程の荒波に揉まれたのがトラウマになり泳ぐ行為が怖くなっていたのだ。
イアンは泳がずに人生にない程に背筋・足先を伸ばして歩いた。だが、水面が鼻の高さまで来た頃にまた意識を失う。
「ふふ、貴方は本当に努力家ですね」
透き通るように綺麗な女性の声、身体を起こして目を開ければヴィターナに似た蒼色の艶のある髪を靡かせる美女の姿があった。
「貴方は誰なんですか?」
イアンは目の前の美女に質問した。それに対し美女は笑顔で答える。
「私の名前はレヴィ・アタン。貴方達レヴィ族の祖先にあたる初代リヴァイアサンの守護者よ」
レヴィ・アタンを名乗る美女の眼は嘘偽りなく、信用できるものだとイアンは確信した。その後、数分の間は質疑応答が続いた。
イアンは荒くれる海の中で溺れ死ぬ運命にあったが、レヴィアタンが幻想世界へと飛ばして助け、水の精の詠唱で治療してくれたらしい。
命の恩人であるレヴィアタンから、レヴィ族には伝わっていない事実を知る事になった。
「イアン、貴方の目の前に現れたのには理由があるの、次期守護者ヴィターナは私の直系の血筋の子孫で、簡単に言えば私の生まれ変わりと誕生した。
そして、イアン。貴方は私の旦那様であるイグリオン様の直系の血筋の子孫で、貴方もまたイグリオン様の生まれ変わりとして誕生した。これは単なる偶然じゃないのよ。
リヴァイアサンがヴィターナの体を依り代に復活しようとしている。詳しく言うと依り代となって十年後、生命が尽きる時にね・・・」
レヴィアタンが悲痛な顔をしながら放った言葉に対し、イアンは食い気味に返答する。
「俺はヴィターナは助けたい!」
「ふふ、貴方はそう言うと思ったわ。ヴィターナを救い出す方法はただ・・・、、、」
レヴィアタンからヴィターナを救い出す方法を聞く直前、イアンは現実世界で目を覚ました。
嵐が吹き荒れる夜の中、一人港町で大きな声を荒らげ、己の不甲斐なさを嘆きながら愕然と暗黒に染まった海を眺めた。
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