魔法使いの「願い事6つだけ」

汐田 瀬羽音

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第1章

第12話:痛みの在処

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ーーカランカラン

「おかえり。」

「ただいま、スミカ。ちょっと気になることがあるんだけど…」

「うん?」
スミカはカウンターに肘をつき、ついた肘を支えに顎を乗せて、楽に聞く姿勢を作った。

「さっきのお客さんに渡した薬って傷薬だって言ってたよね?それってさっきみたいな打撲傷用だったりするの?」

「いいや、あの傷薬は心の傷用だね」

その答えを聞いて私は直感した。

恐らく、あの傷薬はサナにではなく、主人であるあの女性に使われていると。

例え傷薬が打撲傷用だったとしてもサナに使っているならあんな扱いにはならないだろうと考えていたところだった。

そして主人に薬を塗っているのもきっとサナだろうと。

拳で殴られた方が殴った方の手当てをする…
なんとも異様な光景だ。

心が癒える前に自らを傷つけて、癒そうとしては、また傷を深めてはの繰り返し。 

ここに大きな矛盾がある。

スミカによるとあの女性はサナに手をあげることを自分への罰だと言っていた。

罰で負った傷を治療したい自分とミスをした自分に罰を与えたい自分が1人の人間の中に共存していることになってしまっている。

いや…ちがう。
罰で負った傷を治療しているのはサナだ。治療対象があの女性なだけで…

だとしたら治療したい感情はサナで
罰を与えたい感情はあの女性…

痛みを感じているのは…?
心に痛みを感じてるのは女性で
肉体に痛みを感じているのはサナ…?

そう考えるのが自然だけれど、
サナはぶたれた時でなくぶたれ終わった時に泣いていたように見えた。

この痛みはどっちだ…?

結局、この先の答えに辿り着くことはできなかったが、
私は1つ確かめる方法を思いついた。

それはここまでに登場しなかった痛みを…。
第3の痛みのありかさえ見つけることができれば、
彼女を理解するうえで一番近いところから話すことができるはず。

ここがきっとホンマもんの心を引き出す懐に違いない。

そのためには…!

「リッカ?あんまり考えすぎないことだよ。」
考えに夢中になって固まっていた私を気遣うようにスミカが声をかけてきた。

「あ、ごめん…。私って一度思考に潜っちゃうとなかなかあがってこれないみたいで…
 それでね。スミカ。ちょっとお願いがあるんだ。」

私はスミカにいくつかお願いをした。
一つ目は次、例のお客さんが来る日には私一人で接客させて欲しいこと
二つ目はいらなくなったティーカップセットがあれば欲しいこと

そのどちらともスミカから承諾を得て
次の来店日である5日後に備えた。
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