魔法使いの「願い事6つだけ」

汐田 瀬羽音

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第1章

第14.8話:初めて願ったもの

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それは、頭のてっぺんから耳にかけて、鳥の羽のような形をしたものがペタンと髪と耳に覆い被さっていたのだ。

「…ほんもの…?」
私は恐る恐る、未知の物体に手を触れて確かめてみるが、確かに羽の付け根は少女の頭にくっついており、鳥の羽を触っているような感触がした。

ーーバサッ

私は急に見てはいけないものを見てしまったかのような気持ちに襲われ、
急いで少女にフードを被せた。

ホントはスミカの話を聞いて、何かの手違いだったらいいのにと今まで願っていた。

けれどもそんな期待は無情にも崩れ去ってしまう。

「どうすれば…いったいどうすればいいの…」
私は少女を抱きかかえながら少女に顔をうずめる形で考えた。

どうして一緒にいれないんだろう。
この子が神様の子なんかじゃなく、私みたいに普通の女の子だったら良かったのだろうか…

「神様の子なんかじゃなかったら…良かったのに」
少女に埋めていた顔をあげながらも私は少女の顔に堪えきれない涙をこぼした。

その時だった。ふと辺りが明るいことに気がついた。
明かりの正体はすぐにわかったものの頭上の六花は先ほどまでより強い光を発している。

その光に手をかざすと、銀色に輝く光が手に移りだした。

その輝きはいつかスミカが見せてくれた魔法の使い方を私の記憶から呼び覚ました。
「強い願いを一瞬の間に爆発させる…そうだ!」

私は首にぶら下げていた小さな巾着袋を取り出し、紐を開いた。
それは紅の魔女から別れ際にもらった触媒だった。

触媒と聞いてはいたものの実際に中身を取り出すのは初めてだった。

はじめは水晶やキラキラと光る砂のようなものを想像していたが、
中身は米のような小麦のような何か作物の種のように見えた。
とにかく今はこれにかけるしかない。
私は手に移った銀色の光で触媒を包むように握りしめ
願いを込める。強く、この一瞬に。

その一瞬、自分の目すら眩むような大きな光が
握りしめた手から漏れだした。

そっと手を開いてみると、銀の光は触媒に移っていた。
その様子はスミカが最初に淹れてくれたハーブティのように
ホワホワとした光を放っている。

あの時のように私を救ってほしい。
そんな思いで私は触媒を口にし、
先ほど薬を飲ませた時と同様に口移しで少女に飲ませたのだった。

「あれ、、なんだか急に眠たく…」
だんだんと意識が遠のいていくのを感じる。

「私が…守ってあげなくちゃ…いけな…のに」
頭の中で思ったのか口に出した言葉なのか自分でもよくわからないまま
私は眠るように意識を失った。

夢を見ている。
夢の中でこれは夢だと気づいてしまう。
そんな夢を見ている。

空も白、地面も白、その先の景色すらも白
この真っ白な世界で、目の前に真っ白で大きな鳥が
今まさにその大きな翼で私を包もうとする。

翼に包まれた私は、なんだか心がポカポカして
とても安心する。
でも安心してるのは私?それとも…?

そんなふわふわとした意識に浸っていると、
翼の外で何やら声が聞こえてきた。

その声はだんだん大きく、より鮮明に聞こえてくる。

「姉さんここだ!おい、リッカしっかりしろ!」
「リッカ!起きな、リッカ!」

やっぱり私は夢は見ていたと再認識する。
ゆっくりと目を開くと目の前には師匠がいて
すぐそばにはスミカがトンネルをかがむようにしてこちらを覗き込んでいる。

「あれ…?どうして…?そうだ、この子がずぶ濡れで倒れてて、それで熱がでて大変で!」
私は飛び起きるように少女を抱きかかえ、トンネルを飛び出した。

雨はすっかり止んでおり、夜通し降った雨が霧となり早朝の香りがした。
「そうだスミカ、この子がここで倒れてたの!ドームで手当てしないと!」

スミカは一瞬こちらを見て驚いたような顔をし、すぐに片手で表情を隠した。
何故そんな表情をしたのか私にはわからなかったけれど、
今はとにかく少しでも早くこの少女を安全なところで休ませてあげたかった。

「師匠も手伝って!」
「お…おう…。っていったい何をすりゃ…」
「ポーチ持って!」
「うおおおう…!」
私は師匠にポーチを放り投げ、師匠は半分潰れながらも必死に持ち上げ耐えている。

「スミカ、私先に帰ってるね!」
私はスミカにそう言い残し、少女を抱え、ドームへ急ぐ。


「姉さん…良いんですかい?なんだか聞いてた話と違う気がするんやけど…」
「あの子から神気を感じなかった…。それにリッカにも記憶の改ざんが見受けられた…」
「そりゃあ…もしかして誰かが悪さを…?」
「いいや、恐らくリッカが魔法を使ったんだ。
 六花の花弁のうち1枚、以上に魔力を消耗していた…。」
「なっ!?アイツにそんな力がもう宿ってたんですかい」
「…私も驚いたよ。」

「師匠ーーーーーーー!早くーーー!!」
私は一度だけ振り返ってモタモタしている師匠に大きな声で叫んだ。
夢の正体はわからないけれど、今はなんだか新しい朝が来たような気がするのだ。

「弟子は師に似るというが…ホント、師弟そろってバカだねぇ…。
 おまけに魔法の使い方も一緒ときたもんだ…ほんと、バカだよ…。」

雨が上がった朝の森に雫がゆっくりと流れ落ちた。
霧が朝日に照らされ少しずつ景色に溶けてゆく。

そうして今日も、新たな一日が始まろうとしていた。
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