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第1章
第18話:誰がための子守歌
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「うーん、これは雷球がきれちまってるかもしれないねぇ。明日にでもワットを呼ぶとするよ。」
スミカは外灯の元の部分を見ながら言った。
どうやら雷球ってのを修理すれば灯りが灯るようになるらしい。
「ワットっていうのは…?」
「ああ、まあ電気系の灯りを専門に取り扱う奴でね。また明日紹介するけど鳥人だよ。」
「超人…。」
私はどんなすごい人が明日来るのだろうと少しワクワクしたりもした。
スミカが超人と呼ぶからにはきっととんでもないミラクルを起こすに違いないと期待していた。
「あ、そうだ。ロッカ」
すっかり部屋で待たせっきりだったのを忘れていた。
ロッカの様子を見に行くと、どうやら待ちくたびれたのか、
ベットでスースー寝息を立てて眠っていた。
今起こしても夕飯の支度がまだできていないので
また待たせるのも悪いかと夕飯ができるまで寝かせておくことにする。
トントントンと軽快な音をたてながら、今朝採れたばかりのキノコや山菜を刻む。
台所でスミカと横並びで夕飯の支度をするこの日常が、なんだか今日は特別な時間だと感じた。
特に意味もない雑談をするところが今日、この日ばかりは、スミカに打ち明けたいと心が騒ぎ出したのだ。
「ねぇスミカ。」
「ん?」
「スミカは私がいなくなったら…どう思う?」
「なんだい、さっきの客が言ったことを真に受けてるのかい?」
「ううん、そうじゃない。そうじゃないんだけど…ちょっと気になったんだ。」
スミカは刻んだキノコが入ったスープを味見しながら、答える。
「そうだねぇ…。手塩にかけた弟子がいなくなっちまうのは残念に思うけれど、
あたしからすればどこかでよろしくやってる分には、構わないっちゃ、構わないけれどね。」
スミカは小皿に少量のスープをよそい、スープの味見を勧めてきたので
私はそれを手に取りながら、一言答える。
「そっか。」
スープに映る自分の顔はどう言葉にしたらいいのかわからない顔をしている。
「なんだい、えらく大人しいじゃないか。」
聞く体勢となってくれている今を逃すまいと私はスープを一口で飲み干して口を開いた。
「最近、いろいろと思い出しそうなんだ。ここに来る前のこと。」
「ほう。良かったじゃないか。」
「でも、肝心なところで靄がかかって思い出せないんだ。」
「不安かい?」
スミカも何か私の胸の内を察してくれたようだったので、
私はスミカの言葉に甘えて、どう伝えたらいいかもわからないまま言葉を続けた。
「うーん。思い出せないことが不安ってわけじゃないんだけど。時々怖くなる。
なんだか思い出したら私はここにいられなくなるんじゃないかって、そんな予感がするんだ。」
スミカは沈黙を味見でごまかすようにして、静かに答える。
「…。そんなことは思い出してから考えればいいさね。」
「そっか。でもスミカはもし私が…ううん、なんでもない。」
1回目とは違う、もし私がに続く言葉をスミカに打ち明ける勇気は
今の私には無かった。
「あんたがここを出ていくことになれば止めないし、ここにいたかったらいればいいさね。」
「うん…。」
その問いの答えはスミカに問うべきではなく、
私自身に問うべきものだと後になって思ったのだ。
その後、眠っていたロッカを起こして、いつものように夕飯を3人で食べた。
この3人がいつまでも一緒に過ごせたらいいのにと考えてしまう。
布団に入ってからもずっとそのことばかり考えていた。
きっと私はこのカシオペイアから遠く離れた世界からきて、そこで私を産んだ母と生涯共に暮らすことを誓った父がいるはずだと考えている。
私はその2人に何を言い残してここに来たのだろう。そしてそれを思い出した時、私はスミカに何を話すのだろう。
もやもやとする気持ちが知らず知らずに体に出ており、私は布団のなかでモゾモゾしていた。
目を瞑り、大きく息を吐いてからゆっくり目を開けると、そこにはこちらをじっと見つめる瞳があった。
「あ…ごめん起こしちゃった…?」
「リッカ、眠れない?」
「んー。少しね。」
「ロッカも眠れない。」
「ロッカはさっき寝てたからでしょ…」
「ちがう。」
「ちがわないっ」
「ちがうもん。」
私はロッカに布団を被せると同時に優しく抱き締めていた。
「じゃあいっしょだね。」
「リッカも夢見る?」
「うん。起きたらほとんど忘れちゃうけどね」
「ロッカは覚えてる」
「どんな夢?」
「お母さんの夢」
その言葉を聞いた時、何故だかドキッとした。
まるで私の考えていた事がこの小さな女の子に漏れてしまったような…。
心を見透かされたような気持ちになった。
たぶんこの両親の話は私にもロッカにもブラックボックスで、
きっと私だけが目を背けている。
そして私はロッカに自分を重ねるように質問をした。
「お母さんのこと、覚えてる?」
「少しだけ。」
「お父さんは?」
「思い出したくない。」
「そっか。ごめんね。」
「いい。気にしない。」
私はこの後、両親に会いたいかどうか聞いてみたかったけれど
どうも地雷を踏んでしまったような気持ちになって、それ以上質問を続けることができなかった。
そんななかでもロッカは言葉を続ける。
「リッカ。お母さんの匂いする」
「そ、そう?」
私はどこか胸がくすぐったい気持ちになりながらも
胸に顔を擦り寄せるロッカの頭を優しく撫でていた。
私はロッカの母親を思い出せない自分の母親をイメージするかのように目を瞑った。
ロッカを撫でていた手は自然とロッカの背中に下りてゆき、背中をトン、トンとゆっくりしたリズムでノックしていた。
気が付けば私はそのゆっくりとしたリズムにあわせて子守歌を歌っていた。
自分で歌っておきながら一度も聞いたことがない子守歌。
その歌詞はどこか切なくて、優しげな歌詞だった。
スミカは外灯の元の部分を見ながら言った。
どうやら雷球ってのを修理すれば灯りが灯るようになるらしい。
「ワットっていうのは…?」
「ああ、まあ電気系の灯りを専門に取り扱う奴でね。また明日紹介するけど鳥人だよ。」
「超人…。」
私はどんなすごい人が明日来るのだろうと少しワクワクしたりもした。
スミカが超人と呼ぶからにはきっととんでもないミラクルを起こすに違いないと期待していた。
「あ、そうだ。ロッカ」
すっかり部屋で待たせっきりだったのを忘れていた。
ロッカの様子を見に行くと、どうやら待ちくたびれたのか、
ベットでスースー寝息を立てて眠っていた。
今起こしても夕飯の支度がまだできていないので
また待たせるのも悪いかと夕飯ができるまで寝かせておくことにする。
トントントンと軽快な音をたてながら、今朝採れたばかりのキノコや山菜を刻む。
台所でスミカと横並びで夕飯の支度をするこの日常が、なんだか今日は特別な時間だと感じた。
特に意味もない雑談をするところが今日、この日ばかりは、スミカに打ち明けたいと心が騒ぎ出したのだ。
「ねぇスミカ。」
「ん?」
「スミカは私がいなくなったら…どう思う?」
「なんだい、さっきの客が言ったことを真に受けてるのかい?」
「ううん、そうじゃない。そうじゃないんだけど…ちょっと気になったんだ。」
スミカは刻んだキノコが入ったスープを味見しながら、答える。
「そうだねぇ…。手塩にかけた弟子がいなくなっちまうのは残念に思うけれど、
あたしからすればどこかでよろしくやってる分には、構わないっちゃ、構わないけれどね。」
スミカは小皿に少量のスープをよそい、スープの味見を勧めてきたので
私はそれを手に取りながら、一言答える。
「そっか。」
スープに映る自分の顔はどう言葉にしたらいいのかわからない顔をしている。
「なんだい、えらく大人しいじゃないか。」
聞く体勢となってくれている今を逃すまいと私はスープを一口で飲み干して口を開いた。
「最近、いろいろと思い出しそうなんだ。ここに来る前のこと。」
「ほう。良かったじゃないか。」
「でも、肝心なところで靄がかかって思い出せないんだ。」
「不安かい?」
スミカも何か私の胸の内を察してくれたようだったので、
私はスミカの言葉に甘えて、どう伝えたらいいかもわからないまま言葉を続けた。
「うーん。思い出せないことが不安ってわけじゃないんだけど。時々怖くなる。
なんだか思い出したら私はここにいられなくなるんじゃないかって、そんな予感がするんだ。」
スミカは沈黙を味見でごまかすようにして、静かに答える。
「…。そんなことは思い出してから考えればいいさね。」
「そっか。でもスミカはもし私が…ううん、なんでもない。」
1回目とは違う、もし私がに続く言葉をスミカに打ち明ける勇気は
今の私には無かった。
「あんたがここを出ていくことになれば止めないし、ここにいたかったらいればいいさね。」
「うん…。」
その問いの答えはスミカに問うべきではなく、
私自身に問うべきものだと後になって思ったのだ。
その後、眠っていたロッカを起こして、いつものように夕飯を3人で食べた。
この3人がいつまでも一緒に過ごせたらいいのにと考えてしまう。
布団に入ってからもずっとそのことばかり考えていた。
きっと私はこのカシオペイアから遠く離れた世界からきて、そこで私を産んだ母と生涯共に暮らすことを誓った父がいるはずだと考えている。
私はその2人に何を言い残してここに来たのだろう。そしてそれを思い出した時、私はスミカに何を話すのだろう。
もやもやとする気持ちが知らず知らずに体に出ており、私は布団のなかでモゾモゾしていた。
目を瞑り、大きく息を吐いてからゆっくり目を開けると、そこにはこちらをじっと見つめる瞳があった。
「あ…ごめん起こしちゃった…?」
「リッカ、眠れない?」
「んー。少しね。」
「ロッカも眠れない。」
「ロッカはさっき寝てたからでしょ…」
「ちがう。」
「ちがわないっ」
「ちがうもん。」
私はロッカに布団を被せると同時に優しく抱き締めていた。
「じゃあいっしょだね。」
「リッカも夢見る?」
「うん。起きたらほとんど忘れちゃうけどね」
「ロッカは覚えてる」
「どんな夢?」
「お母さんの夢」
その言葉を聞いた時、何故だかドキッとした。
まるで私の考えていた事がこの小さな女の子に漏れてしまったような…。
心を見透かされたような気持ちになった。
たぶんこの両親の話は私にもロッカにもブラックボックスで、
きっと私だけが目を背けている。
そして私はロッカに自分を重ねるように質問をした。
「お母さんのこと、覚えてる?」
「少しだけ。」
「お父さんは?」
「思い出したくない。」
「そっか。ごめんね。」
「いい。気にしない。」
私はこの後、両親に会いたいかどうか聞いてみたかったけれど
どうも地雷を踏んでしまったような気持ちになって、それ以上質問を続けることができなかった。
そんななかでもロッカは言葉を続ける。
「リッカ。お母さんの匂いする」
「そ、そう?」
私はどこか胸がくすぐったい気持ちになりながらも
胸に顔を擦り寄せるロッカの頭を優しく撫でていた。
私はロッカの母親を思い出せない自分の母親をイメージするかのように目を瞑った。
ロッカを撫でていた手は自然とロッカの背中に下りてゆき、背中をトン、トンとゆっくりしたリズムでノックしていた。
気が付けば私はそのゆっくりとしたリズムにあわせて子守歌を歌っていた。
自分で歌っておきながら一度も聞いたことがない子守歌。
その歌詞はどこか切なくて、優しげな歌詞だった。
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