魔法使いの「願い事6つだけ」

汐田 瀬羽音

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第1章

第19話:ポロローカ山脈①

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翌朝目が覚めると私はロッカを抱きながら眠っていたようで
ロッカの枕になっていた腕が木の棒のように硬くなっており、まともに腕を曲げれるようになるまでジリジリと痛んだ。

ロッカを起こさぬよう自分にだけ朝日を取り入れるように窓のカーテンを少しだけ開けて、
ふと今日が来客日だったことを思い出した。

「そういえば、今日外灯の修理にお客さん来るんだった…」

修理に来る人の名前は思い出せなかったけれど、何か凄いミラクル的な人だったような気がした。

広間への扉を開けて、洗面所までの通路を歩こうとしたとき、すでに入口側で物音が鳴っていた。

もしかしたらもう来ているかもしれないと、私は急いで顔を洗い着替えを済ませて、玄関へと急いだ。
外へ出るとスミカの隣でテキパキと作業をしている人物が何かを話していた。

「うーん。こりゃ寿命かもなぁ。」

そう話す人物は体が白と黒の斑模様で覆われており、作業する腕は鳥のような羽が生えていた。

「ああ、起きたかい。」
私に気づいたスミカが腰にあてていた手をこちらに向けて
小さく振りながら朝の挨拶してきた。

私も軽く頷く形で挨拶をし、修理の様子を見守ることにした。

「だーめだ。スミカさんこりゃまるっと雷球ごと交換だ。ちょっと2・3日貰えるかい?」

「かまわないよ。すまないね、急遽来てもれっておいてまたトンボ返りさせちまうようで」

「いやいや、メンテナンスにしばらく寄れていなかったこっちの責任っス」

そう答えた斑の人物は頭を掻きながら外灯の蓋を閉じ終えたところでやっと私と目があった。

「おっと、挨拶が遅れてすまねぇ。俺は雷球職人のワッカだ。どうぞよろしくッス」
目元は赤く、一見怖い表情に見えたけれど態度はとてもフランクだ。

「こちらこそ、作業に集中されていたのでなかなか声をかけるタイミングがわからなくて…スミカの弟子で見習いのリッカです。」

軽く握手を交わし、挨拶を済ませるとワッカは持ってきた修理道具をまとめ出した。
ワッカは見た目に反して人と話すときは笑顔で、人は見かけによらないものだと思い出した言葉を噛みしめた。

そんな安心感もあってか私はワッカに興味本位で聞いてみることにした。

「ワッカさん、この雷球ってどうやって作ってるんですか?ひょっとして雷の魔力とかを込めたりとかですか?」

もし魔法の類であれば、ぜひとも後学のために知りたいところだ。
私の目はきっとキラキラと輝くような目を向けていたに違いない。
ワッカは私の瞳を見るなり、大声で笑い出した。

「え?え?私なにかおかしなこと言いました?」

「いやいや、すまねぇ。こんな修理道具を持ってる男を魔法使いみたいに見られるのは初めてだったもんで」

そう笑われて悪い気は一切しなかったが、なんだか自分が非常識なことを言ってしまったようで少し恥ずかしかった。

つい自分の興味のある魔法へと話を絡めてしまうあたりは、私の悪いところかもしれない。
「あ、えっと…」

照れ隠しながらも言葉を続けようとしたところでワッカが口を開く。

「こいつは魔法や自然界の力を集める魔吸石を加工した雷球石ッス。」
ワッカはさっきまで外灯に入っていたと思われる石を手渡してきた。

受け取ってみるもただの丸い石のように見える。
「これが雷球…?もっと水晶玉みたいなものをイメージしてました。」

「まー、本来の使える形となればイメージ通り、中でビリビリしてるのが見えるようになるっス。」

ワッカに雷球石を返すと、代わりに小さな石のペンダントを手渡してきたので両手で受け取ると、それが雷球だと一目でわかった。

「すごい…石の中で雷があっちこっちで鳴っている…。」
実際には音は聞こえないのだが、雷が空を走ることを普段鳴ると呼んでいるため、口にしていて少し不思議な気持ちになったが、それが最も適当な答えだと思った。

「この石の力を原動力に力の大きさや流れを上手く制御してやることで、みんなの生活の役にたってる感じッス。」

「ほえ~~。」
思わず感動の声が口から漏れてしまう。

「ははは、今じゃ生活の必需品ッスからねー。そんなに注目されると説明のし甲斐があるッス。」

ワッカの笑い声にハッとしてまた、自分がどんな顔で石を見ていたのか一瞬想像しながらも平常心、平常心、と胸に言い聞かせながらペンダントを返す。

「そういや、雷球の作り方を知りたがってたね。何だったら作るところを見学するかい?」

「え!いいんですか!?」
ものの数秒でさっきの平常心はお空のどこか遠くへ吹き飛んでしまったようだ。

私は電光石火の如くスミカのほうへ振り向くと、
スミカもやれやれといった表情で頷く。

「やったー!」
思わずガッツポーズをしてしまう。もうここまできたら、いくら取り繕ってもかっこ悪いだけだ。

「ただし、危ないことは無しだ。ワッカいいね?」

「も、もちろんッス。現場は危ないのでうちの小屋で安全に見学って形で…」
鋭い視線を向けられながらもワッカは自分の胸に手を当てて答える。

そんなわけで、私は2・3日ワッカが仕事場とするポロローカ山脈に見学に行くことになった。

出発前にロッカに留守にすることを伝えようと思ったが、起こすと悪いと思ったので、スミカから伝えてもらう形で私はカシオペイアを出た。
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