特進クラスのふざけかた

やすを。

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1話 それは突然に

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 特進クラス。

それは学校が設置する、勉強に特化させた精鋭達が集まるクラス。学校の威信をかけて作られた、言わば学校の勉強面の顔と言っても過言ではないだろう。

そんなところに僕、春森輝波は今日をもって足を踏み入れるのだ!!

何でそんなところにって? それはね……僕が時代に追いついたからさ!

まあ、そんなボケはいいや。早く教室行こう。でも緊張するな…………知らない人しかいないから。

僕は禿げ上がった元担任から、要らない激励の言葉と嫌悪感溢れる笑顔を貰いながら、クラス割の紙を受け取った。

あった……! 『2年I組16番』か。特進クラスってIと Jなんだな。

僕は大階段を上がり教室に向かう。どうやら目的の教室は右端にあるらしい。

紙を見てて思ったけど、人数少ないな。2クラス合わせて、普通クラスの人クラス分しかいない。僕はそれを見て、少しだけ怖くなっていた。

僕は教室に足を踏み入れた。心臓の鼓動がうるさく感じるほどだったし、不安感が押し寄せてくるようだった。

目線が僕に集まる。驚きの目線、探る目線、訝しげな目線、そして懐かしそうな目線を向ける人もいた。僕は居心地が大層悪かった。

ここまでアウェー感出されるって中々やべーよな…………。でも別にいいし! 自分でこいつら全員抜かしてやるし! 寂しくなんかないし……!

僕は1人机に座りながら、英単語帳を開いて苦手な英語の勉強を始めた。髪の毛を無意識にいじりながら、小声で暗唱して頭に擦り込んでいった。

十分程度時間が経って、僕への興味もほとんどなくなってきた頃、ふと顔を上げて教室を見回した。

さぞ高度な勉強の話でもしてんだろうな。こうすっと胸に落ちていくような情報だったり、勉強方法とか熱い話を繰り広げてんだろう。

僕は色んな人を見ながら、様子を伺っているとアル六人組の集団が目に入った。女子4人男子2人という、普通クラスでは考えられないような構成で、笑い合っていたのが衝撃的だった。

どんな話をしているんだろう。そんな疑問から、不信がられないよう目線を単語帳に落としながら聞いていた。

「昨日クリロワしてたんだけどさ…………」

ん……? なんか聞いたことあるゲームの名前が聞こえてきたんだけど。

「紫音雑魚すぎ。」

「真斗お前、バスの中で勝負な! お前をボコすから、放課後待ってな。」

紫音と呼ばれた女子が、真斗という男子にそう言った後、クラスが凍ったように静かになった。

「何で……私、こんな雰囲気になるようなこと、言ってないんだけど。」

「紫音、お前の存在が滑ってんだよ! 大丈夫だ! 俺らがいるから、何とかなるぞ!」

熱いこと言ってんだけど、2人とも当たりキツくないか? てか、こんな男女の距離近いって異常だよ。

「存在が滑ってるって、どういう事? ヌルヌルしてるって意味?」

「ヌルヌルってなんかエロいわね!」

何言ってんだこの人たち! てか、ツッコミはこのクラスにいないわけ!? ボケの渋滞がすぎるぞ!

僕は単語帳を眺めながら、心の中でそうツッコんでいた。どうやらこのクラスにはツッコミがいなようだ。だからどうというわけではないが、少しこのクラスの実情を掴めた気がした。

チャイムがなり、担任がやってきた。話を進め始業式を行った後、再び教室に戻ってきた。

自己紹介をする時間すらなく、今日の全日程は幕を閉じた。僕は誰とも話す事なく帰宅の準備を進めていた。

「ねえ。」

「ん? どうしたの?」

「君さ、鹿島小出身?」

「そうだけど、君も?」

「そうなの! 多分、キー君でしょ? 久しぶりだよね。」

「えっ、川北さんだよね。ごめんだけど、話したことあった?」

「あったよ! 私のこと覚えてない?」

「うん…………」

白髪でこんな整った女子いたっけ?

……あ! 白髪といえば。いた、1人だけ。

「あの、いつも泥だらけで遊んでいた子。あの子、川北さんだったの?」

「そう、それ私! 確かにあの時の面影は無いかもね。」

そう笑いながら彼女は言った。

「その笑い方! 確かにあの子だ。」

「笑い方? そんな変な笑い方してる、私?」

「違うよ。柔らかい、向日葵みたいな笑顔。」

懐かしいな。僕はその笑顔が、はっきり言って好きだった。

「花みたいって何だろう? まっいいや。私君にさ、ひとつお願いがあったんだよね。」

「お願い?」

急な話の方向転換に驚きつつ、次の言葉を待った。

「私に勉強を教えてくれない?」

 川北さんはそう言った。

 「はっ?」

 僕はそう呆気に取られたのだった。
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