特進クラスのふざけかた

やすを。

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41話 崩壊の序章

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 「輝波、冬休みどうだったの?」

 「別に大した事してないよ。」

 「あっ、そっか。輝波友達いないものね。」

 「友達くらいいるよ!!」

 僕に予定が無かった理由、それは大きく二つあった。

 一つ、本当に友達が少ない。

 高校に入って出来た友達がほとんどいないし、地元の知り合いもそれぞれの学校のメンツで集まって遊んでいる。

 もう一つ、彩白が音信不通。

 僕的にはこっちの方が怖かった。

 クリスマスの夜に別れた後、今日を迎えるまで、ラインの既読もつかないし、電話にも出ない。家を訪ねてもいつも留守。

 この状態見たら絶対もしものことを疑うよ、誰だって。

 それで、今日の朝起きてラインを見たら彩白からラインが来ていた。

 それもまた不可思議な内容で、少し気味が悪かった。

 「『学校行きたくないな~』なんて、彩白が言うの珍しいわね。」

 「でしょ? なんかあったとしか思えないんだよな。」

 それから間もなくして、僕らの話題の人物が到着した。

 いつも通り、荷物を置いて少し経ってから僕らの方に近づいてくるだろう。そう予想して、みんなでだべっていた。

 「あれ彩白、席に座っちゃったわね。」

 「珍しいな。彩白がこっちに来ないって。」

 向こうで話していた拓人と真斗も僕らの方に来て、同じ話をした。

 「俺が行ってくるか!」

 「お前は良いだろ……熱苦しくて朝から話すと疲れんだから。」

 「違うだろ! 俺が行くことで心に火を灯すんだよ!」

 「その火が強すぎるから言ってんだよ……」

 2人とも、翌朝からそんな漫才みたいなこと言えるよな……。それが羨ましいよ。

 「僕が行ってくるよ。」

 「それがいいな。」

 「ええ。それが一番ね。」

 「だな! 一番いい形じゃあねえか!」

 だったら何で始めから言わないんだよ! 

 とは思ったが、それは心の中に留めておいた。

 僕は彩白の机に向かう。あまりこういったシチュエーションがなかったから、少し緊張気味だった。

 「おはよう、彩白。」

 「うん、おはよう。」

 あれ? やっぱりおかしいな。

 「僕らと話そうよ。」

 「ごめんね、今日はそういう気分じゃないの。」

 「そっか。いつでも話したくなったら来てよ!」

 「うん、ありがとう。」

 調子狂うな……。前会った時は、テンション高くてイジられまくったのに。

 「どうだった?」

 「滅茶苦茶テンション低い。これは疲れてるよ。」

 「あー、冬休み勉強に力入れたんだろうぜ。だからたまってんのかもな。」

 真斗はそう結論付けて、半日の今日はあまり彩白に話しかけるのをやめようという話になった。

 別に省く訳じゃない。話したくない人に話しかけても、苦痛を味わうだけだから、話しかけないのだ。

 「彩白、今日は帰るか?」

 「ううん。少しだけやって帰る。」
 
 彩白はそう言って、いつものように向かい合わせで勉強を始めた。

 「僕さ、冬休み予定なかったんだよね。」

 「ふーん。まあ、そういう時もあるんじゃない。」

 「う、うん……」

 いつもだったら、『友達いないもんね』とか『キー君陰キャだし』とか、遠慮なくいじってくるのに、今日は様子が違った。

 気まずさを抱えた僕は、彩白を意識しながら手を動かしていた。

 「ねえ、キー君。」

 「ん? どうした?」

 「今日マフラー、着てきてくれた?」

 「……今日は着てきて無いです……」

 「そっか。」

 「ち、違うんだよ! これには……」

 着るのが勿体ないから、着れなかったんだよ……。

 「ううん、いいの。好みは人それぞれだから。」

 「彩白……」
 
 やっぱりおかしい。どうしたんだろう、今日は。今のだったらもっと怒ってたのに。

 僕は彩白の言動に違和感を感じていた。でも、それは今日だけの特異的なものだと、一切言及しなかった。

 それから、僕らはいつも通り2人でバスに乗り帰宅した。

 その道中も彩白は一言も発することは無く、寝ているかスマホをいじるかしかしていなかった。

 そして、翌日の彩白も全く同じ状態だった。

 昨日は珍しく、彩白から『週末は部屋に行っていい?』何でラインまで届くし、一体どうなっているのやら。

 今週は親に強制的に旅行に連れていかれる予定だったから、元々断るつもりだった。

 だからラインで、『ごめん、無理。』と送った。彼女からは『分かった。』と簡潔な返答があった。


 そして、彩白は来週から学校に来なくなった。

 
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