特進クラスのふざけかた

やすを。

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48話 特進クラスも青春したい!

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 「久しぶりだね」

 「ああ。変わらないな、彩白は」

 「そりゃね。最後に会ったの半年前だから、そんな大差ないよ」

 「えっ、女子って変化すごいって聞くけど……」

 「それどこ情報? もし本当だったら、私女子じゃないじゃん!!」

 「……それ、自分から言っちゃうんだ……」

 外見もそうだけど、中身も変わってないのかよ。まあ、僕はそっちの方が隣にいて安心するんだけどね。

 「変わってない女は嫌?」

 「変化が凄い女が嫌」

 「……それさ、大部分の女の子を敵に回すけどいいの?」

 「別に、彩白が味方でいてくれれば問題ないでしょ」

 僕は思ったままをそのまま言った。少し間があったことは気になったが、それが僕のせいだということに、気づくはずもなかった。

 それが僕の言葉に心打たれたから、という事に知る由もなかった。

 「……たまにそういうクリティカルな発言するの……ずるいよ……」

 「は? え? クリティカルってなに?」

 「な、何でもない!! 早く学校行こう!」

 何だったんだ? こういう時に鈍感って不利だよな。

 僕は首を傾げながら、足早に向かう彩白の後についていった。

 それから僕らは卒業式に参列し、数時間にもわたる日程が終わるのを眠気に負けないように待っていた。何席かの生徒はその欲望に負けたようだった。

 式も終わり、いよいよ高校生活のクライマックスが訪れていた。どのクラスでも、式の後の余韻に浸る生徒たちの姿を僕は、席から傍観していた。

 もしかしたら、というか確実に僕は薄情なのだろう。全く涙が溢れてくる気配がなく、周りに釣られる感じも皆無だった。

 「輝波君~! 彩白も写真撮ろ~!!」

 「あ、うん」

 何故だろう、女子から写真を頼まれるとは露にも思わなかった。

 幸いだったのが、彩白とセットだった事。もし彼女がいなかった場合、おそらく死んでいただろう。色んな意味で。

 「……終わった……」

 滅茶苦茶疲れた……何で女子ってこんなに写真を撮るんだよ……。

 「キー君、今度はグループで撮ろうよ!!」

 「……はい」

 そして僕は再び写真ラッシュに突入していくのだった。クラスの男子と、グループメンバーと。三桁に乗るのではと疑ってしまうほどに、シャッター音を聞いた気がした。

 ようやく落ち着いた頃、クラスにはもうほとんど人は残っていなかった。どうやら各々で打ち上げをしているようだった。もちろん僕らも計画していた。

 「輝波、置いてくぞー!!」

 「……頼む、置いていってくれ」

 「なんて斬新な返事……そんな人いないぞ」

 真斗はそう返すと、他3人を連れて廊下を歩いていった。

 「早く来いよー!!」

 真斗がそう言うと、他のみんなも重ねがけに言った。僕はそれを聞いて嬉しくなった。

 「キー君、行かないの?」

 「……そろそろ行くよ」

 僕はキチンと椅子に座り直すと、意を決したように立ち上がった。

 「キー君?」

 僕は、廊下と反対側の窓の近くにいた彩白の元に行った。

 「彩白」

 春の暖かなそよ風が、僕らの間を吹き抜け、カーテンを少しだけ揺らしていた。満開に咲き誇った桜の花びらは快晴の空に高々と舞い上がっていた。

 僕らは向かい合って、少しだけ微笑んでいた。

 「半年間待ってくれてありがとう。僕のわがままを聞いてくれてありがとう」

 「本当だよ。この日まで、凄く長く感じたな」

 彩白はそう言うと、『でも、』と続けて言った。

 「でも、そんなことどうでも良くなるくらいに、今日を楽しみにしてた」

 「そっか、僕は君と会えない日々が寂しかったよ。君の笑う顔、怒った顔、冗談を言う顔、真面目に取り組む顔、漫画を読む顔……全部の表情を早く見たくて仕方なかった」

 それは僕のせいなんだけどね。僕が大学決まらなかったから、今日まで彩白と会えなかったわけだから。

 「来年もよろしくね。同じ学校、学部に進めるのが凄い嬉しい」

 「僕もだよ。それでさ……」

 半年越しの言葉をようやく口に出せる日が来たのだ。

 「うん」

 「……これからは、1番僕の側にいる人になってくれませんか」

 顔が熱い。鼓動がうるさい。緊張がヤバい。

 「……なんかプロポーズみたい」

 彩白はそう言って笑っていた。僕は自分の言葉を思い返してみて、さらに顔が熱くなった。

 「プ、プロポーズはもう少し段階を踏んでから言うよ……!」

 彩白は僕の顔を見てさらに笑っていた。

 「……はあ、やっぱりキー君は裏切らないね」

 「……全然嬉しくない……」

 僕は少し不貞腐れたような表情を浮かべた。

 僕が彩白に視線を戻すと、彩白は真剣な眼差しで僕を見ていた。

 「私は1年半、この気持ちを溜め込んでたの。キー君にはその想いに応えてほしいし、ここまで私を夢中にさせた責任をちゃんと取って欲しいです」

 彩白はそう言うと、徐に僕の方に近づいてきた。

 「これが私の答えです」

 そう言った彩白は、僕の前に立って屈託のない笑顔を見せた。

 そして次の瞬間……

 「……んっ!!」

 唇に柔らかい感触がした。息が少ししにくくなって、それと同時に幸せの感情が流れ込んできた。

 僕は驚きの感情が薄れてきて、現状を受け入れる余裕ができた。

 「……びっくりした」

 「これが私の答え。鈍感なキー君にも分かってもらえるかなって」

 「……ああ。流石の僕にも分かったよ」

 こんな幸せな気持ち、自分の志望校に受かった時よりの何倍も大きかった。

 風力が強くなった。吹き上げる風の音が、僕らの幸せを祝福しているように聞こえた。

 「……そろそろ行く?」

 「……だな」

 僕らは、それぞれ荷物を持って閑散とした廊下を歩いていた。

 もちろん僕らの手は繋がっていたのだった。





 「おせーぞ!!」

 「やめとけ拓人。今さっき、アイツらの関係値がまた一つ上がったんだからさ」

 「……なんで知ってんだよ」

 「えっ、勘?」

 なんで不確定要素を当てにしてんだよ。しかも当たってるし……。

 「嘘つくなよ真斗。さっきクラスメイトがここに来て、教えてくれたじゃない」

 「それ言ったらつまらんだろ……!」

 そんな冗談を僕らは、この後も幾度となく言い合った。

 「特進クラスも恋すんだよ!! 覚えとけよ、馬鹿にしてきた普通クラス!!」

 「……拓人、声でかい……」

 「俺よ、友達に言われまくったんだよ!! 『お前らのクラスってカノカレって概念無いよな』って!!」

 「まあ、こいつらがそれを壊したんだもんな」

「ていうか、その人達が言ったんじゃなくて、作者が言わせてるのよ」

「紫音さんや、メタい発言が過ぎる……」

 まあ、そうだけどさ。とりあえず、この話を締めるとしますか。

 こうして、特進クラスの優等生女子が、今では僕の彼女になりました!! おしまい。


「どう、この終わり方」

「何でこう、あんたたちはメタい発言ばっかな訳?」

「……そう言う紫音も大概だよ」

僕がそう言うと彩白が笑顔で。

「キー君」

「ん? どうした?」

「大好きだよ!!」

「……う、うん……僕もだよ……」

 何でこの場面で言うんだよ……!! まあ、作者よ感謝を言うぞ!!

 僕は作者感謝を述べながら、打ち上げを楽しむのだった。








 


 

 
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