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24話 少し昔の話
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「僕、ここ好きだよ。」
「そう言ってもらえると、来た甲斐があるよ。」
葵は嬉しそうにそう言った。僕の目の前では男女の集団が、仲睦まじく笑い合っている。僕は地元の絆の強さに微笑ましい気持ちになりながら、眺めていた。
「翔太の地元ってどんなとこなの?」
「自然もないけど、若者が遊べるような繁華街がある訳でもない。たたの住宅街だよ。」
「へー。今度行かせてよ。」
「気が向いたらな。」
「えー。絶対行きたいんだけど。」
「まあ、同居してる訳だし。確かに親に報告に行くべきだよな。」
「そうだよ! だからさ、私を翔太の実家に連れてってよ。」
やっぱり僕の同居人は可愛い。こうやって僕の実家に行きたがるとこが、すこぶる可愛い。
「そうだな。夏休み中はバイトと勉強で潰れるから、冬休みとかなら行けそう。だからそのタイミングで行くか。」
「やったー! 絶対だからね。忘れたら怒るからね。」
「はいはい。ちゃんと覚えておくし、親にも事前に連絡しとくから安心しとけ。」
「うん! じゃあ楽しみにしてるね。」
葵はどこかワクワクしているような顔をしていた。僕は葵のその表情を見て苦笑した。
そんな大した物ないんだけどな。そんなにハードル上げられると、結構困るよ。まあでも、そうやって楽しみにしてるれている分には、嬉しいな。
「葵ー。こっち来てー!」
「行って来い。」
「いいの? 一人になっちゃうけど。」
「良いよ。葵が友達と楽しそうに話してるのを見てるだけで、僕は十分だから。」
「うん。分かった、行ってくる、」
そうして葵は前方の地元メンツに混じって楽しくはしゃいでいた。その光景は恐らく、あの頃繰り広げられていた風景そのままなのだろう。あの空間に何一つ違和感がない。それが何よりの証拠だった。
「翔太って優しいんだね。」
「そうか? そんな事もないと思うけど。」
「優しいよ。あの子が惚れるほどにはね。」
「なっ……!!」
「うぶな反応も可愛いし、こりゃ女性人気高そうだね。」
「いいや? バレンタインだって毎年義理チョコ一個だし、告白された事ないし。全くモテてないよ。」
「あらゃ、確かにそれはモテてないわ。」
「だろ? だから女性人気は低いぞ。」
自分で言ってて悲しくなってくるな。でも、僕には葵がいるからもういらないけどね。葵が僕の側にいてくれればそれで良いし。
「あの子さ、良い子でしょ。」
「それはもちろん。」
「可愛いでしょ。」
「最高にね。」
会話の意図が掴めないまま、誘導のように僕は言葉を発していた。
「そういえば、自己紹介してなかったね。私は星川渚。よろしくね。」
「僕は晴山翔太。よろしく。というか、もう知ってるから、自己紹介の意味ないか。」
情報の巡りが早いこの地域だ、僕の名前なんかすぐに知れ渡っただろう。ましてや、旅館の元若女将の同居人。余計に話題性が増している気がする。
「星川は葵と付き合い長いのか?」
「渚でいいって。葵とは中学からだから、そんなに長くないよ。」
聞けば渚は、小学生の頃までは僕の実家の隣の地域に住んでいたらしい。僕はそれを聞いてとても驚いた。
「それでさ、私翔太に言いたかった事があるんだけど。」
「ん? なんだ?」
「私さ、昔から翔太のこと知ってたんだ。」
「えっ、会ったことあるの僕らって。」
「無いよ。今日が初対面。」
「じゃあ何で?」
僕は話の意味を全く理解できていなかった。これから渚が言いたい事が全く見えなかった。
「苗字を聞いても何も思い出さない?」
星川…………。えっ?
「星川先生……?」
「そう。それが私のお母さんの名前。」
「そうだったの!? というか星川先生って子供いたの!?」
衝撃の事実すぎて話が頭に入ってこなかった。
「星川先生は今、35っ事は……18歳の時に出産してたんだ。」
「驚きすぎだって。流石にびっくりしたよ。」
「そりゃ驚くよ。まさかあの星川先生に17歳の子供がいると思わないじゃないか。」
「まあ、普通そう思うよね。私のお母さんだけ、ダントツで若いんだもん。保護者会とかで若すぎて浮いてるしさ。」
そうだったんだ。だから先生は僕のことを受け入れてくれたんだ。先生もかなり特殊な環境で生活していたから、周りと違う僕を見捨てなかったんだ。
僕は長年の疑問がようやく解決できた気がした。先生の器が広いという理由もあるだろうが、やはりその理由も大部分を占めているのではないかと、勝手ながらに思った。
「それでさ、星川先生はここにいるの?」
「いるけど、もう仕事に行ってて今いないよ。会いたいなら別の機会にね。」
「うん、そうする。今度来た時にゆっくり話したいからね。」
また楽しみがひとつ増えた。僕にはそれがとても嬉しく感じられた。
「何の話してたの?」
「ちょっと昔話をね。」
「何それ、聞きたい。」
「また今度ね。翔太も内緒にしててよ。」
「もちろん。」
「何で教えてくれないのさ! というかいきなりそんな二人とも仲良くなったの?」
渚は葵と交代するように前方の集団に混ざっていった。
もうすぐ昼ごろ。そろそろみんなとお別れの時間となった。
「そう言ってもらえると、来た甲斐があるよ。」
葵は嬉しそうにそう言った。僕の目の前では男女の集団が、仲睦まじく笑い合っている。僕は地元の絆の強さに微笑ましい気持ちになりながら、眺めていた。
「翔太の地元ってどんなとこなの?」
「自然もないけど、若者が遊べるような繁華街がある訳でもない。たたの住宅街だよ。」
「へー。今度行かせてよ。」
「気が向いたらな。」
「えー。絶対行きたいんだけど。」
「まあ、同居してる訳だし。確かに親に報告に行くべきだよな。」
「そうだよ! だからさ、私を翔太の実家に連れてってよ。」
やっぱり僕の同居人は可愛い。こうやって僕の実家に行きたがるとこが、すこぶる可愛い。
「そうだな。夏休み中はバイトと勉強で潰れるから、冬休みとかなら行けそう。だからそのタイミングで行くか。」
「やったー! 絶対だからね。忘れたら怒るからね。」
「はいはい。ちゃんと覚えておくし、親にも事前に連絡しとくから安心しとけ。」
「うん! じゃあ楽しみにしてるね。」
葵はどこかワクワクしているような顔をしていた。僕は葵のその表情を見て苦笑した。
そんな大した物ないんだけどな。そんなにハードル上げられると、結構困るよ。まあでも、そうやって楽しみにしてるれている分には、嬉しいな。
「葵ー。こっち来てー!」
「行って来い。」
「いいの? 一人になっちゃうけど。」
「良いよ。葵が友達と楽しそうに話してるのを見てるだけで、僕は十分だから。」
「うん。分かった、行ってくる、」
そうして葵は前方の地元メンツに混じって楽しくはしゃいでいた。その光景は恐らく、あの頃繰り広げられていた風景そのままなのだろう。あの空間に何一つ違和感がない。それが何よりの証拠だった。
「翔太って優しいんだね。」
「そうか? そんな事もないと思うけど。」
「優しいよ。あの子が惚れるほどにはね。」
「なっ……!!」
「うぶな反応も可愛いし、こりゃ女性人気高そうだね。」
「いいや? バレンタインだって毎年義理チョコ一個だし、告白された事ないし。全くモテてないよ。」
「あらゃ、確かにそれはモテてないわ。」
「だろ? だから女性人気は低いぞ。」
自分で言ってて悲しくなってくるな。でも、僕には葵がいるからもういらないけどね。葵が僕の側にいてくれればそれで良いし。
「あの子さ、良い子でしょ。」
「それはもちろん。」
「可愛いでしょ。」
「最高にね。」
会話の意図が掴めないまま、誘導のように僕は言葉を発していた。
「そういえば、自己紹介してなかったね。私は星川渚。よろしくね。」
「僕は晴山翔太。よろしく。というか、もう知ってるから、自己紹介の意味ないか。」
情報の巡りが早いこの地域だ、僕の名前なんかすぐに知れ渡っただろう。ましてや、旅館の元若女将の同居人。余計に話題性が増している気がする。
「星川は葵と付き合い長いのか?」
「渚でいいって。葵とは中学からだから、そんなに長くないよ。」
聞けば渚は、小学生の頃までは僕の実家の隣の地域に住んでいたらしい。僕はそれを聞いてとても驚いた。
「それでさ、私翔太に言いたかった事があるんだけど。」
「ん? なんだ?」
「私さ、昔から翔太のこと知ってたんだ。」
「えっ、会ったことあるの僕らって。」
「無いよ。今日が初対面。」
「じゃあ何で?」
僕は話の意味を全く理解できていなかった。これから渚が言いたい事が全く見えなかった。
「苗字を聞いても何も思い出さない?」
星川…………。えっ?
「星川先生……?」
「そう。それが私のお母さんの名前。」
「そうだったの!? というか星川先生って子供いたの!?」
衝撃の事実すぎて話が頭に入ってこなかった。
「星川先生は今、35っ事は……18歳の時に出産してたんだ。」
「驚きすぎだって。流石にびっくりしたよ。」
「そりゃ驚くよ。まさかあの星川先生に17歳の子供がいると思わないじゃないか。」
「まあ、普通そう思うよね。私のお母さんだけ、ダントツで若いんだもん。保護者会とかで若すぎて浮いてるしさ。」
そうだったんだ。だから先生は僕のことを受け入れてくれたんだ。先生もかなり特殊な環境で生活していたから、周りと違う僕を見捨てなかったんだ。
僕は長年の疑問がようやく解決できた気がした。先生の器が広いという理由もあるだろうが、やはりその理由も大部分を占めているのではないかと、勝手ながらに思った。
「それでさ、星川先生はここにいるの?」
「いるけど、もう仕事に行ってて今いないよ。会いたいなら別の機会にね。」
「うん、そうする。今度来た時にゆっくり話したいからね。」
また楽しみがひとつ増えた。僕にはそれがとても嬉しく感じられた。
「何の話してたの?」
「ちょっと昔話をね。」
「何それ、聞きたい。」
「また今度ね。翔太も内緒にしててよ。」
「もちろん。」
「何で教えてくれないのさ! というかいきなりそんな二人とも仲良くなったの?」
渚は葵と交代するように前方の集団に混ざっていった。
もうすぐ昼ごろ。そろそろみんなとお別れの時間となった。
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