雨と晴

やすを。

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35話 ノンデリカシーミー

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  初日は全員参加のツアー。コンセプトは『沖縄地上戦』とのこと。結構よくあるテーマだが、一番の人間としての勉強をできるテーマであると思っていた。

バスで巡るツアーにはガイドさんも同行して、場所の説明を色々してくれた。正直、知ってるよ。なんて内容も多かったから、失礼ながらに話を聞き流していた。

「痛ましい話だね。」

「ああ。人間って怖いよな。欲のために何だってやるんだから。」
 
 そのために人も殺すし、欺くそし、利用するし。自分の目的のためなら何だってやるのが人間という生き物の、幾多もある欠点のうちの一つだ。そして葵はそれで人生を狂わされかけた。

 もしあの時僕が止めなければ、葵は今隣にいないし、もしかすると僕もここにいないかもしれない。僕は戦争の悲惨な足跡を辿る旅の間中、そんなことばかりを考えていた。僕が変な人間なのは重々承知だった。

 「どうしたの? 今日はやけに静かだけど。」

 「僕ってそんなうるさいイメージある?」

 「うるさくはないけど、いつもならもう少し話すなって思ってさ。」

 やはり僕の彼女は可愛い。可愛いという言葉が合っているのか分からないけど、僕のことそれだけよく見てくれていることが、とても可愛く感じた。

 「葵と出会わなかったらどうなってたんだろうな、って考えてた。」

 僕は葵にそういうと、葵は僕の両肩に手を乗せて言った。

 「怒るよ、翔太。私たちが出会ったのは、偶然じゃない。必然だったんだよ。」

 「葵…………」

 「だからさ、そんな寂しいこと考えないでよ。これから私たちがどう幸せになるのか。それだけを考えてて欲しいな。」

 葵は始め少し険しい表情だったが、今屈託のない笑顔を浮かべている。そんな僕の彼女をとても愛おしく思った。

 「ちょっと、イチャコラするのは後でにしてくれない?」

 沙耶香は呆れた表情を浮かべながらそう言った。

 別に迷惑をかけた訳ではなかったんだけどな。ただ二人で実りのある話し合いをしてただけ。

 「で、何で葵ちゃんを怒らせた訳?」

 「僕が変なことを言いました……」

 僕はその経緯を簡単に説明した。葵は状況を汲み取ったのか、前にいる巧と話していた。

 「まったくあんたは…………女心が分からないのに、何であんな素晴らしい彼女がいるのよ。」

 「はい、すいません。」

 「私だったら、ぶん殴ってるわね。」

 僕には女心というものが分からなかった。何で葵が僕のことを好きなのかすらも知らない。聞く気もないが、知りたいとは思う。

 「なんかありがとう。ちょっと勉強になったよ。」

 僕らはそのまま4人でなら話をする。そのまま何箇所かを訪れ、昼を食べて、ホテルに夕方に戻った。
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