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40話 道端の攻防戦
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「お疲れー! あの男ども、キモいな本当に。」
沙耶香は楽しげに笑いながらそう言った。しかしよく見てみると、彼女の目の奥は笑っていなかった。考えてみると当然で、見ず知らずの好きでもない男どもに体を触られたからだろう。
「後3時間くらいか。もう始まってるみたいだな、歩行者天国。」
「それって、渋谷のスクランブル交差点みたいなやつ?」
「そうそう。これからは、俺らが有利な時間が始まるぞ。」
と言うのも、昼時とそれが相まって人通りが何倍にも多くなる。そうなれば人混みの中に隠れやすくなるし、見つかりにくくもなる。僕らにとっての楽園という訳だ。とはいえ見つかる事だって大いにあり得る。気を抜かずに行くべきである。
「まずさ、昼食べない? みんな全然食べてないし動いてばっかだから、そろそろエネルギー不足じゃない?」
「でも見つかったら終わりだぜ?」
「さっきみたいに窓がない店ならバレないから大丈夫よ。」
「まあ、確かにな。」
「とりあえず二手にわかれましょ。その方がより見つかりにくくなるから。」
「じゃあ、僕と葵、巧と沙耶香のペアで行こう。」
「そうね。ここでペアを変えておくべきだものね。」
そうして僕らは別れて別々の店に向かった。何故窓がない店を選ぶのか。それは外から見つけられないから。チンピラ達はあまり人がいる場所に出たがらない。視線を集め、居心地が悪いからだ。外から見えない店は、店員に確認するしかなく、チンピラが嫌がる工程を踏まなければならない。
僕らは地下のソーキそばのお店を見つけ、そこに入った。店内は狭く、僕らは奥にある2人席に腰掛けた。僕らの話題はさっきの作戦についてだった。
ネタバレするとかなりベタなタネで、あそこのトイレには人が1人通れるほどの窓が設置されていて、葵がトイレに入ると待機していた沙耶香と代わり、葵は外にいる巧と走って反対側に走っていった。僕の方に鬼は来ていたから、反対側はガラ空きだった。
ソーキそばが運ばれてきて、30分をかけて食べた。その間一回もチンピラ達が訪れることはなく、少しずつ緊張感もほぐれてきた。その後、僕は巧と連絡を取り、再び集まった。残りは約3時間だった。
「じゃあまた後で。」
「ああ。また会おうぜ。」
残り2時間半。その間、何度か逃げながら何とか作戦会議を完遂させて、実行を始めた。今度は2人で行動をする事にした。
そういえばさっきインスタ見たら、チンピラ達がのびてる姿がストーリーに上がってたな。こりゃ参った……あれやったの僕なのに。変な事にならなきゃいいけど……。
僕らはあてもなく、何か話すわけでもなく、ずっとうろつくチンピラ達に怯えながら、逃げていた。時々追いかけられることもあったが、何とか振り切って、物陰に隠れながら生き延びていた。
そんなことを始めて、約1時間経った頃、僕らは挟み撃ちに遭っていた。インカムからは巧が、「俺らも囲まれてるぞ。」と危機的状況に追い込まれていた。
流石にまずいなこれは。あっちサイドも頭を使って、一気に2人を捕らえるという手段に出たのか。あの男もなかなかやるな。
「さて、そろそろこのゲームを終わらせよう。俺らの仲間をよくも可愛がってくれたな。許さないからな。」
そして両方向からチンピラどもが襲いかかってきた。流石の僕でもこれはお手上げだった。
「さあ、面を拝めさせてもらうぜ! おりゃ!」
「残念でしたー! バーカバーカ!」
そうこっちはダミー。それであっちはというと……。
「へへ。こっちもダミーなのさ。お疲れ様!」
そう巧は挑発的に言った。僕らは相手がこの作戦に出ると、始めから分かっていた。だから僕らの連れた女子は両方とも偽物。本物は、別働隊と一緒にいるはずだ。うちの担任兼柔道部顧問の、学内最強とも呼び声が高い先生が側にいるはずだ。
「そういうことで、そろそろ離してあげてよ。その子は関係ないんだからさ。」
「ちくしょう! 大人を舐めやがってー!」
「お前らは子供を舐め過ぎてたんだよ。別に僕らがお前らを舐めてるわけじゃない。」
そして僕は巧と落ち合う場所に急行した。僕の隣にいるのは、葵のいる班のうちの1人。葵と仲の良いこの女子は、「葵のためなら」と率先してこの役を引き受けてくれた。
「ありがとな。協力してくれて。」
「葵のためだしいいよ。それにしても言ってることが本当だとは思わなかった。」
そうその女子は、不安げな面持ちで下を向いた。恐らく葵のことは心配なのだろう。僕も巧が同じ立場だったら胸が張り裂ける想いになる。
僕はそんな彼女と別れると、葵と共に集合場所に向かったのだった。
沙耶香は楽しげに笑いながらそう言った。しかしよく見てみると、彼女の目の奥は笑っていなかった。考えてみると当然で、見ず知らずの好きでもない男どもに体を触られたからだろう。
「後3時間くらいか。もう始まってるみたいだな、歩行者天国。」
「それって、渋谷のスクランブル交差点みたいなやつ?」
「そうそう。これからは、俺らが有利な時間が始まるぞ。」
と言うのも、昼時とそれが相まって人通りが何倍にも多くなる。そうなれば人混みの中に隠れやすくなるし、見つかりにくくもなる。僕らにとっての楽園という訳だ。とはいえ見つかる事だって大いにあり得る。気を抜かずに行くべきである。
「まずさ、昼食べない? みんな全然食べてないし動いてばっかだから、そろそろエネルギー不足じゃない?」
「でも見つかったら終わりだぜ?」
「さっきみたいに窓がない店ならバレないから大丈夫よ。」
「まあ、確かにな。」
「とりあえず二手にわかれましょ。その方がより見つかりにくくなるから。」
「じゃあ、僕と葵、巧と沙耶香のペアで行こう。」
「そうね。ここでペアを変えておくべきだものね。」
そうして僕らは別れて別々の店に向かった。何故窓がない店を選ぶのか。それは外から見つけられないから。チンピラ達はあまり人がいる場所に出たがらない。視線を集め、居心地が悪いからだ。外から見えない店は、店員に確認するしかなく、チンピラが嫌がる工程を踏まなければならない。
僕らは地下のソーキそばのお店を見つけ、そこに入った。店内は狭く、僕らは奥にある2人席に腰掛けた。僕らの話題はさっきの作戦についてだった。
ネタバレするとかなりベタなタネで、あそこのトイレには人が1人通れるほどの窓が設置されていて、葵がトイレに入ると待機していた沙耶香と代わり、葵は外にいる巧と走って反対側に走っていった。僕の方に鬼は来ていたから、反対側はガラ空きだった。
ソーキそばが運ばれてきて、30分をかけて食べた。その間一回もチンピラ達が訪れることはなく、少しずつ緊張感もほぐれてきた。その後、僕は巧と連絡を取り、再び集まった。残りは約3時間だった。
「じゃあまた後で。」
「ああ。また会おうぜ。」
残り2時間半。その間、何度か逃げながら何とか作戦会議を完遂させて、実行を始めた。今度は2人で行動をする事にした。
そういえばさっきインスタ見たら、チンピラ達がのびてる姿がストーリーに上がってたな。こりゃ参った……あれやったの僕なのに。変な事にならなきゃいいけど……。
僕らはあてもなく、何か話すわけでもなく、ずっとうろつくチンピラ達に怯えながら、逃げていた。時々追いかけられることもあったが、何とか振り切って、物陰に隠れながら生き延びていた。
そんなことを始めて、約1時間経った頃、僕らは挟み撃ちに遭っていた。インカムからは巧が、「俺らも囲まれてるぞ。」と危機的状況に追い込まれていた。
流石にまずいなこれは。あっちサイドも頭を使って、一気に2人を捕らえるという手段に出たのか。あの男もなかなかやるな。
「さて、そろそろこのゲームを終わらせよう。俺らの仲間をよくも可愛がってくれたな。許さないからな。」
そして両方向からチンピラどもが襲いかかってきた。流石の僕でもこれはお手上げだった。
「さあ、面を拝めさせてもらうぜ! おりゃ!」
「残念でしたー! バーカバーカ!」
そうこっちはダミー。それであっちはというと……。
「へへ。こっちもダミーなのさ。お疲れ様!」
そう巧は挑発的に言った。僕らは相手がこの作戦に出ると、始めから分かっていた。だから僕らの連れた女子は両方とも偽物。本物は、別働隊と一緒にいるはずだ。うちの担任兼柔道部顧問の、学内最強とも呼び声が高い先生が側にいるはずだ。
「そういうことで、そろそろ離してあげてよ。その子は関係ないんだからさ。」
「ちくしょう! 大人を舐めやがってー!」
「お前らは子供を舐め過ぎてたんだよ。別に僕らがお前らを舐めてるわけじゃない。」
そして僕は巧と落ち合う場所に急行した。僕の隣にいるのは、葵のいる班のうちの1人。葵と仲の良いこの女子は、「葵のためなら」と率先してこの役を引き受けてくれた。
「ありがとな。協力してくれて。」
「葵のためだしいいよ。それにしても言ってることが本当だとは思わなかった。」
そうその女子は、不安げな面持ちで下を向いた。恐らく葵のことは心配なのだろう。僕も巧が同じ立場だったら胸が張り裂ける想いになる。
僕はそんな彼女と別れると、葵と共に集合場所に向かったのだった。
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