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44話 あの時の心残り
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「お邪魔するぞー!」
その声と共に巧と沙耶香が部屋に入ってきた。両手には大量のお菓子と携帯ゲーム機、カセットに場違いに感じる宿題。
冬休みに入った今、受験前に思い出を作ろうとして集まったのがこの4人。僕の家で夜を明かそうという計画を立てた。僕の家で盛り上がる事をしようと考えた結果、2人の何とも偏った荷物となった。
「翔太―、ゲームするぞ!」
「よっしゃ! かかってこいや。」
時刻は午後の2時。ここから4人は怒涛のゲーム祭りを始めた。対戦や協力ができるゲームが、僕の家と巧や沙耶香が持ってきた中に多数あって、それを片っ端から遊んでいった。その結果、気がつけば夜の10時。
流石に焦った僕らは、1人ずつお風呂に入りリフレッシュをした。そしてその後は1時間の宿題の時間。どこか親と来た旅行を思い出す。長期休みどこに遊びに行くにも、泊まりだったら必ず宿題を持参し、1時間はやった。
まさかこの歳になって、あの時と同じ事をするとは夢にも思わなかったな。でもあの時と全く違うのは、親友達と話しながらマイペースに進められるという事だ。それが宿題という苦痛を緩和してくれる、薬のような役割を担っていた。
「寝たな……」
「寝たわね……」
「寝たね……」
巧は疲れたのか、既に夢の世界に旅立っていた。確かに昼間のゲームで一番場を盛り上げたのは紛れもなく、巧だった。もしかするとそこらへんが関係しているのかもしれない。
「沙耶香ちゃん。」
「葵ちゃんどうしたのかしら?」
葵は唐突に沙耶香に話を振った。
「修学旅行の時、翔太から話を聞いてるはずなんだけど、覚えてる?」
「もちろん。あれを忘れるなんて出来ないわよ。」
葵はそう聞くと、どこか胸を撫で下ろしたような気持ちを持ったように見えた。
「良かった……」
しかし沙耶香には意味が分かっていないようで、いくつもハテナマークが頭の上に並んでいた。
「どうしたの?」
「沙耶香ちゃんと巧くん、そして翔太をあんな危険な目に遭わせて、説明なしは流石に酷いな、って思ってさ。」
「私たちもだけど、あなたも十分酷いことされてきたみたいじゃない。」
「沙耶香ちゃん、かなり怖い思いさせたんじゃないかって思った。」
「確かに、あの場はすごい怖かったわね。」
葵は少し罪悪感に駆られたような表情を浮かべた。別の葵が責任を感じるようなことではないにも関わらず、自分が間違えを犯したかのような声色で言った。
「本当にごめんなさい! こんな事態に巻き込んだのは私のせいだから!」
「別に葵が何かしたわけじゃないんだろう? ならいいじゃん。結果的にはそうなっちゃったけど、皆んな怪我もなくこうして変わらず生活出来てるんだしさ。」
僕はそう言って、沙耶香もにこやかに笑いながら、僕の言葉を肯定した。
「やっぱり、それまでの経緯を話しておく必要があるのかなって、勝手に思って今、沙耶香に話そうと決めたんだ。」
葵は正座をしたままそう言った。その返答として、沙耶香は落ち着いた声色でこう言った。
「言う必要なんて無いわよ。悪いのは全部あっち側なんだし、葵ちゃんが自分の辛い歴史を思い出す事はしなくていいもの。」
「沙耶香……本当にありがとう。」
「いいのよ。葵ちゃん脅威はいなくなったんだし、それだけで私は満足。葵ちゃんが暮らしやすい環境を作り出せたから。」
沙耶香は嘘偽りのない様子でそう言った。やはり沙耶香は委員長が適任だと、僕は再び思い知らされた。
そのまま寝付けることなく、僕らはオールした。その後、2人が家路に着いた後に、布団に入るとそこから爆睡してしまった。
葵は危険な事に巻き込んでしまった経緯の一環として、自分の過去を曝け出す覚悟を決めた。僕は彼女の度胸に感服するばかりだった。
その声と共に巧と沙耶香が部屋に入ってきた。両手には大量のお菓子と携帯ゲーム機、カセットに場違いに感じる宿題。
冬休みに入った今、受験前に思い出を作ろうとして集まったのがこの4人。僕の家で夜を明かそうという計画を立てた。僕の家で盛り上がる事をしようと考えた結果、2人の何とも偏った荷物となった。
「翔太―、ゲームするぞ!」
「よっしゃ! かかってこいや。」
時刻は午後の2時。ここから4人は怒涛のゲーム祭りを始めた。対戦や協力ができるゲームが、僕の家と巧や沙耶香が持ってきた中に多数あって、それを片っ端から遊んでいった。その結果、気がつけば夜の10時。
流石に焦った僕らは、1人ずつお風呂に入りリフレッシュをした。そしてその後は1時間の宿題の時間。どこか親と来た旅行を思い出す。長期休みどこに遊びに行くにも、泊まりだったら必ず宿題を持参し、1時間はやった。
まさかこの歳になって、あの時と同じ事をするとは夢にも思わなかったな。でもあの時と全く違うのは、親友達と話しながらマイペースに進められるという事だ。それが宿題という苦痛を緩和してくれる、薬のような役割を担っていた。
「寝たな……」
「寝たわね……」
「寝たね……」
巧は疲れたのか、既に夢の世界に旅立っていた。確かに昼間のゲームで一番場を盛り上げたのは紛れもなく、巧だった。もしかするとそこらへんが関係しているのかもしれない。
「沙耶香ちゃん。」
「葵ちゃんどうしたのかしら?」
葵は唐突に沙耶香に話を振った。
「修学旅行の時、翔太から話を聞いてるはずなんだけど、覚えてる?」
「もちろん。あれを忘れるなんて出来ないわよ。」
葵はそう聞くと、どこか胸を撫で下ろしたような気持ちを持ったように見えた。
「良かった……」
しかし沙耶香には意味が分かっていないようで、いくつもハテナマークが頭の上に並んでいた。
「どうしたの?」
「沙耶香ちゃんと巧くん、そして翔太をあんな危険な目に遭わせて、説明なしは流石に酷いな、って思ってさ。」
「私たちもだけど、あなたも十分酷いことされてきたみたいじゃない。」
「沙耶香ちゃん、かなり怖い思いさせたんじゃないかって思った。」
「確かに、あの場はすごい怖かったわね。」
葵は少し罪悪感に駆られたような表情を浮かべた。別の葵が責任を感じるようなことではないにも関わらず、自分が間違えを犯したかのような声色で言った。
「本当にごめんなさい! こんな事態に巻き込んだのは私のせいだから!」
「別に葵が何かしたわけじゃないんだろう? ならいいじゃん。結果的にはそうなっちゃったけど、皆んな怪我もなくこうして変わらず生活出来てるんだしさ。」
僕はそう言って、沙耶香もにこやかに笑いながら、僕の言葉を肯定した。
「やっぱり、それまでの経緯を話しておく必要があるのかなって、勝手に思って今、沙耶香に話そうと決めたんだ。」
葵は正座をしたままそう言った。その返答として、沙耶香は落ち着いた声色でこう言った。
「言う必要なんて無いわよ。悪いのは全部あっち側なんだし、葵ちゃんが自分の辛い歴史を思い出す事はしなくていいもの。」
「沙耶香……本当にありがとう。」
「いいのよ。葵ちゃん脅威はいなくなったんだし、それだけで私は満足。葵ちゃんが暮らしやすい環境を作り出せたから。」
沙耶香は嘘偽りのない様子でそう言った。やはり沙耶香は委員長が適任だと、僕は再び思い知らされた。
そのまま寝付けることなく、僕らはオールした。その後、2人が家路に着いた後に、布団に入るとそこから爆睡してしまった。
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