訳あって幼馴染と同居始めました

やすを。

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帰り道、僕は夕焼けをバックに一人重い足取りで歩いていた。

はあ……

何で僕ばっかり怒られなきゃいけないんだよ。あれは奏真のやつが起こした事で、僕は関係ないのに……

まあいっか。帰ってゲームでもして忘れよう。

それで早く寝よ。宿題とかもういいや。

僕は一人暮らしをしている。実家から遠く離れたこの地の高校に通うため、親の仕送りで何とか生計を立てられているところだ。

もちろんバイトもしている。でも貰える金額は僅かしかない。

しかし今日バイトは無い。だからゲームし放題な訳だ。

そう思うと僕は心が幾分軽くなってきた。

所々にある街灯も灯ってきて、夜の雰囲気が醸し出されていた。

今日も節約のためにスーパーにより、決めた献立分の食料を買うと再び帰路についた。

住処の近くにある公園がある。そこには小学生の男女が遊び回っていた。

……ん? 

僕は公園を眺めていた時、ふと違和感に気づいた。

あれ、どっかで見たことある顔だな。

いや、でもアイツはここにはいないはず……

だってアイツは中学の時に既に遠くに引っ越していたんだ。そんなアイツがこんなとこにいるはずがない。

僕は恐る恐る子供達が走り回る公園に入って行った。

「あのー、そんな所で何してるんですか?」

僕はブランコに座る一人の女子高生に話しかけた。

なぜ女子高生だと分かったかって?

まあ、制服を見れば一目瞭然だ。

「あ~、えっと~、同じ学校の人ですよね」

そう、単純に制服が一緒だっただけだ。別にこの人をストーキングしていた訳じゃない。

というか、そんな事はどうでもいい。

僕にはその話し方に聞き覚えがあった。

「もしかして……しずく、っていう名前だったりする?」

「うん、そうだよ~。というか何で知ってるの?」

何でも何も、お前、僕の事忘れたのかよ。

「覚えてないか、同級生に来栖好春って男がいたの」

「覚えてるよ~、だって幼馴染だも~ん、忘れるわけないじゃん」

「そいつが目の前にいるのに、同じこと言えるか?」

「え~……えっ!? 君ハルくんなの?」

「やっぱ忘れてんじゃん!」

ったく、相変わらず記憶ガバガバだな……

「んで? こんな所で何してんの?」

僕は呆れながら問うてみた。

「あのね~、家が燃えちゃったの~」

「ん? は、は……え? まじ?」

嘘だったらもっとマシな冗談にしてくれ。流石に想像の何倍も上にあったぞ。

前からとんでもない事を平然というやつだったけど、いくら幼馴染でも守備範囲外だわ。

「そんなんで嘘ついてどうするのよ~」

この呑気でだらけた口調、ロングの黒髪。
やはりどこからどう見てもしずくの特徴だった。ただ三年経って成長した部分もある。

特に目が行くのは胸部の膨らみ。あの爆弾を持った彼女は男相手に無双できる事間違いなしだ。

身長も伸びているし、顔立ちも女性に近づいている様に見える。

「それで、どうすんだよ。親戚とか友達とかの家に泊まったら?」

「それは抵抗あるんだよね~。男なんて猿ばっかだし、女子は迷惑かけたくないしね」

「じゃあ近くに親戚とかいないの?」

「全員県外だから無理」

ったくワガママなのは変わってないのな。なんかちょっと安心したわ。これで素直に従ったら何事かと思うな。

「んじゃーどうすんだよ?」

「ハルくん泊めてよ」

「……えっ? ほ、本当に言ってる?」

「うん。泊めてくれたらサービスするよ~」

なっ……!! それは健全な男子高校生として良くないと言いますか……何と言いますか……

「あっ、顔赤くなった~。ハルくんも変わらないね~」

「お、おまっ! また、からかって……」

「はははっ、冗談。自分でどうにかするよ~」

しずくは僕の顔を見ながら笑った。どこかこの笑顔が懐かしい。そしてどこか寂しそうに見えたのは僕の気のせいだろうか。

「いいや、お前僕の家に来い」

「え~、私をどうするつもり~?」

「ど、どうもしないよ……」

「本当かな~、怪しいな~」

ったく、たまには素直に人に甘えろよ。幼馴染にくらい強情になるなって。

「いいから来い」

「う、うん……」

僕は強引に静かな左手を掴むと、僕の家に連れて帰った。

こうなったらどうなでもなれ! 大丈夫、僕には手を出せる様な勇気はないから。

何か自分で言ってて悲しくなってくるわ……

「とりあえずここが僕の部屋だ。しずくはここを使ってくれ」

しずくを家に連れて帰り、とりあえず居間の座布団に座ってもらった。

「ハルくん」

「ん? どうした?」

「よくこんな部屋で生活できるね……」

しずくは蔑む様な目線をこの部屋に向けた。

「まあ、片付ける時間がなくてな」

「……本当に色々変わってないね」

「褒め言葉と受け取っとくよ」

僕がそう言うと、しずくは制服の袖を捲ると。

「とりあえず片付けるから、手伝って」

「お、おう」

何だか珍しくやる気だな。いつもなら「もういっか」でこのまま床に寝転がる所だが、やっぱり三年で色々変わったんだろうな。

それから10分後……

「おい、さっきまでのやる気は?」

「だってここハルくんの部屋でしょ~。ハルくんやってよ~」

「何だよそれ。しずくがやるって言い出しただろ?」

「だって汚すぎるもん。ゴミは散乱してるし束ねたゴミ袋も何個も溜まってるし、生活臭も酷いし。幼馴染がこんな生活してて、ほっとけないでしょ~」

「あ、ありがとう」

貶されてるんだから目にかけてくれてるんだか、よく分からないな。まあ大人しくお礼だけは言っておこう。

それから面倒臭がったしずくに何とか協力してもらいながら、部屋の片付けを完了させた。

この部屋こんな広かったんだな……

つい、そう呟いてしまった。

「ハルく~ん、何か作ってよ~」

しずくは終わった瞬間、座布団の上に横になるとそのまま母にねだる時の様な声色で言った。

まったく、この無防備さは相変わらずだな。服ははだけてるし、今襲われても抵抗できない様な格好しているし。

こりゃ、やっぱり一人にしちゃおけないな。

「何が食べたいんだ?」

「美味しいやつ~」

まったく、テキトウなやつだな……

「んじゃ、献立に文句言うなよ」

「美味しかったら何でもいいよ~」

そう言ってすぐにしずくは寝息を立てていた。

本当に世話のかかる幼馴染だよ。

僕は毛布をしずくにかけた。

ふと寝顔が目に入った。それと同時に乱れた制服が僕の理性を攻撃する。

本当に育ったな。

僕は右手でしずくの髪を触った。

寝顔を見るとあの頃と何も変わっていない様に見える。無防備にどこでも寝てしまう。そんな猫のような性格は健在のようだ。

「……エッチ」

「ん?」

「ハルくんのエッチ」

「なっ……!!」

僕は勢いよくしずくから距離をとった。

「ハルくんずっと私のおっぱい見てたでしょ」

「み、見てないです……」

「ふーん……じゃあその赤い顔、どう説明するのかな?」

「すいません」

「素直でよろしい~」

しずくは満足げに言った。

僕は少し意外に思った。もっと嫌悪感を露わにするかなと思っていたのだが、意外と平気なのかもしれない。

ただ幼馴染としては一線を越えるわけにはいかない。その線引きを確かにしないといけないのだ。

「しずく、もう少しでできるから起きてろよ?」

「おっけ~、いい匂いしてきたね」

「でしょ? だから寝るなよ」

「うん」

しずくは楽しみなものを待つような表情で頷いた。

それから出来上がった料理を二人で食べ、他愛のない話を重ねて行った。

皿洗いを二人で協力しながら行い、しずくはまた眠ってしまった。

この寝顔を僕は見ながら、猿どもに渡さないよう守ったいく決意をしたのだった。















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