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作戦会議
しおりを挟むリリアナにとってもネイリ―にとっても忘れられない一夜となった夜会から数日後、二人はやっとの思いでモースライト学園の人気のない中庭で顔を見合わせていた。
というのも今日にいたるまでずっと、リリアナは夜会での出来ごとを説明しろと詰め寄るレグラス王子から逃げ切るのに必死でそれどころではなく、ネイリ―はネイリ―で夜会での噂を聞きつけた彼女の取り巻きの対応に追われていたからである。
「レグラス様しつこい!!」
「まだ一人だからいいじゃん、私なんか心配してる振りしてマウントとってくる女達を相手にしてんのよ!?乙女ゲームの令嬢って性格悪すぎるでしょう!!
そんな二人が皇子と取り巻き達をまき、お互いのうっ憤をぶつけ合ったのは王への謁見を明日に控えた日のことだった。
互いに相当なストレスが数日で溜まっていることが伺えたが、肝心なことを今日中に決めてしまないといけない。そう、二人にはお互いの愚痴を聞いている暇などないのである。
「ゲームの世界の令嬢っていうか、女の子なんて大体みんな性格悪いと思うよ」
「確かに・・・・・・でも、ここの令嬢は陰気すぎる。やり方がせこいのよ」
「そんな令嬢や頭のおかしいレグラス様と関わりにならないためにも、どうにかする方法を明日までに考えないといけないんだよ!そうじゃないと、本当に取り返しのつかないことになる!」
この世の終わりのような顔をするリリアナにネイリ―も力強く頷く。
夜会の後、リリアナとネイリ―の家にはそれぞれ王家から正式な書簡が届けられた。
文面にはそれはそれは丁寧にレグラスの非礼の謝罪と国王が会いたがっていることが書かれていた―――――つまりは、息子も悪いが状況が全くもって理解できないのでお前らがきちんと説明しろよという事である。もちろん断る!と言いたいところではあるが、王から直接声をかけられ断ることなどできるはずもなく、二人は王に謁見することとなったのだ。
救いがあるとすれば、ことの中心であるリリアナとネイリ―が一緒に謁見できることだろうか。
「OK!ちゃっちゃっと作戦会議しましょう。私たちの平穏のために」
「リリアナ・・・・・・ううん、寧々ちゃん。その前に一つ確認してもいい?どうしても聞きたいことがあるの」
「・・・・・・なに?」
いやに真剣な顔を向けるリリアナに、何か重大なことでもあるのかとネイリ―は思わず息を呑む。
「どうして髪の毛切っちゃったの!!リリアナの綺麗なホワイトスノーの髪がバッサリなくなってる!!」
絶叫に近い叫びとともに、リリアナはネイリ―に詰め寄る。
そう、数日前に会ったときには腰まであったネイリ―の髪は綺麗に首元で切り揃えられておりロングヘアーから見事なショートカットに様変わりしていた。
「ああ、髪?鬱陶しかったから切ったの」
「そんな簡単に・・・・・・すっごく奇麗な髪だったのに!!」
項垂れるリリアナを他所に、ネイリ―は特に気にする素振りもなく話を進める。
「そ・れ・よ・り!どうやってそのイベント?フラグ?を回避するのよ?この世界は萌歌の方が詳しいんだからあんたが頼りなのよ!!」
「ううー、ネイリ―の髪があ・・・・・・」
ショックを隠しきれていないリリアナを何とか宥め、二人は明日に備えて作戦を練り始めるのだった。
―――――――数刻後
日が傾きだし生徒がちらほらと下校を始める中、二人は相も変わらず中庭で顔を見合わせ明日に決行する作戦のシュミレーションを繰り返し行っていた。
「うん。明日は女優になったつもりで頑張るわ」
「寧々ちゃんはまだいいよ。レグラス様に一方的に婚約破棄された被害者なんだから。でも私は・・・・・・リリアナはそれなりに比があるから、下手したら王子をたぶらかした魔性の女になっちゃう!!」
あの後なんども話あった結果、レグラス王子に全ての罪を擦り付けようということで話がまとまったのである。
少し可哀相な気もしない二人だったが、リリアナは推しのために仕方がないと自身に言い聞かせネイリ―に至っては浮気男など知ったこっちゃないと即座に気持ちを切り替えた。
「そうならないためにも、私があんたに口添えするんじゃない。なるようになるわよ」
「本当、寧々ちゃんってどこにいても寧々ちゃんだよね。・・・・・・うん、頑張る」
萌歌と寧々は幼馴染という事もあり、幼女の頃からの友人である。
だが、二人の性格は正反対といっていい。
萌歌は外で遊ぶより本を読んだり花をめでる方が好きな内気なインドアタイプで、寧々は中で遊ぶより外で体を思いっきり動したり遠出をするのが好きな活発的なアウトドアタイプなのだ。
性格や趣味の違いはあるもののお互いに尊敬しあっていたため高校に上がっても二人の友情は変わることはなかった。
「とりあえす、明日までは私達が一緒にいるところは見られない方がいいよね」
「そうだね、その方がいいかも」
互いに大きく頷き合い、先ににネイリ―が立ち上がる。
「じゃあ、私先に行くわ。また明日」
「うん、また明日ね」
リリアナがネイリ―を送り出す。
中庭から完全にネイリ―が姿を消したのを確認しリリアナも痛む体を起こし帰路に着いたのだった。
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