囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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71話 囁き少女の体温

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 最終日は近くの名所に立ち寄ったり、テレビで紹介されていたご飯などを心ゆくまで楽しんだ。
 帰り道、勝の車に揺られながら駅まで向かうが、遊び疲れたこともあり皆夢の中に居た。

「響君、楽しかったかい?」
「はい、別荘もお借りしてBBQもさせて頂いて、おかげさまで最高の夏休みになりました」
「はっはっは、学生の夏休みなんてここからだろ?まだまだ楽しいことはいっぱいなんじゃから、これからはもっと忙しくなるぞー」

 朝の悪夢のこともあり、眠りにつくことに若干の抵抗があったが、勝との会話のおかげで退屈しない移動をできた。


「おじい、車とか別荘とか諸々あんがとね」
「有咲ちゃんのお願いじゃからな、わしも童心に帰れた気分じゃよ」

 駅で下ろしてもらうと『これから用事がある』と、手短に別れを告げる。


 新幹線内では、今回のプチ旅行での思い出を話しながら、感傷に浸っていた。


「んーなんだか、あっという間だったなー」
「ねっ、まだまだ遊び足りないよー」

 駅のホームから出ながら、旅行当初の待ち合わせの場所に戻って来た。

「高校生の夏休みはまだまだ有り余ってるから、また遊べばいいだろ?」
「道元のくせにいい事言うじゃん」

 勝からの受け売りの言葉を使い、透子たちから見直される。
 途中まで皆で一緒に帰りながら、途中で一人また一人と別れていく。

「二人だけになっちゃいましたね」
「いつも通りって感じだな」
「響さん…この後のご予定は?」

 予定が無いことを伝えると『少しお時間をください』と家へ案内された。
 菖蒲の家に入るのは二回目で、今回も菖蒲の部屋に通された。

「美味しいお茶っ葉を使いましたっ、お土産で買ったお菓子と一緒にどうぞ」
「美味いな」

 響も自分のために買ったお菓子を広げた。
 菖蒲は響にクッションを渡し『抱いてていいですよ』と、意図が分からないことを言い出す。
 仕方なくクッションを抱えながら、お茶とお菓子に舌鼓を打つ。

「予定あるか聞いたのはお茶をするためか?」
「まぁ…それもありますっ」

 煮え切らない回答をお茶で喉奥へ流し込み、旅行内での思い出をリレー形式に思い出していく。

「菖蒲にホーム画面知られてたの知らなかったんだが?」
「はい、言ってませんもん」

 初日、菖蒲にホーム画面をバラされたことは、響の生涯における恥の一つとなった。

「海で流された時は本当に恐怖でした」
「色々流されたもんな」
「っわ!忘れてください!!」

 菖蒲は自分を抱きしめ、身悶えする。

「最終日は…もしかして俺がうなされてたことを気にして誘ったのか?」

 菖蒲のクッションを抱かせたことや、真っ直ぐ家に帰らせず一人にならないようにしてくれたのは、菖蒲なりの気遣いだったのかもしれない。

「…そういった意味合いも…あります…」
「変に気を遣わせて悪いな」
「いえっ!…私がしたくてしてることですし…あんな響さん初めて見ちゃいましたし…」

 菖蒲はモジモジとクッキーを小さい口で頬張りながら、響のクッション辺りを見つめていた。

「…昔の夢を見たんだ。中学時代の」
「教えなくても大丈夫ですよ?」
「身勝手かもしれないが、俺が菖蒲に話したいんだ」

 菖蒲は湯呑みをテーブルの端へ動かすと、正座で真剣な眼差しを響に向ける。
 響は夢での内容をだいぶ濁しながら伝えた。


「だからあんなに強く抱きしめられたんですね」
「…その件は悪かった」

 菖蒲は響の夢の中に出てきた、黒髪の子について質問をする。

「見たことはある方なんですか?」
「多分…な。でも確実に他のクラスメイトとは違ったんだよ」

 菖蒲は顎に手を当て、右斜めを向きながら考えを巡らせる。

「響さんが密かに思いを寄せていた方…とか?」
「それは無いな」

 響は黒髪少女について、改めて考えを巡らせるも出てくるのは嫌な思い出だけ。

「っ響さん?大丈夫ですか?」
 気付かず内に表情を歪めてしまっていたのか、菖蒲が心配そうに声を掛ける。

「あぁ、ちょっと考え事をしてただけだ」

 すると菖蒲は立ち上がり、響の隣に腰を下ろした。
 菖蒲は座ると、響に控えめに寄りかかった。

「…少しは落ち着きますか?」
「…落ち着いた」

 響は寄りかかる菖蒲の体温を感じながら、冷めたお茶を飲み干した。
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