囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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72話 コラボカフェのカップル席

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 旅行から数日が経ち、静かな休日を過ごしていた響は、髪型や服装をいつもと変え、長い列に並んでいた。

「道元まじ助かる」
「これはなんの列なんだ?大体の予想はつくが」
「コラボカフェ兼グッズ販売に決まってんじゃんっ」


 休日にお昼頃まで二度寝、三度寝を繰り返していた響の家のチャイムがけたたましく鳴らされた。
 ベッドから滑り落ちるように起き、インターホンを覗くとこちらを物凄い形相で覗いていた透子が居た。

「道元、居るんでしょ?」

 響はあまりの恐怖に尻もちを着くと、その音で響が居ることに気づいたのかドアをガチャガチャとされる。
 その後、恐る恐る扉を開けると『五分も待ってあげるから』と準備を強いられた。


「なんでこんなに並んでる人が多いんだ」
「限定のグッズが目白押しだからねっ」

 透子の推している作品のコラボカフェということもあり、いつもよりも透子のテンションがいつもよりも高かった。
 コラボカフェは十五時頃から始まるらしく、今の時間は十三時半、まだまだ時間がある。

「…長いな」
「こんなんで音上げてたらこの先やってけないよっ」

 何をやっていくことが出来ないのか、あまり意味は分からないが恐らく、これからも頭数として使われるということだろう。
 透子は、しきりにスマホを確認しメニュー表やグッズを眺めていた。

「何かお目当ての物があるのか?」
「メニューに付いてくるコースターはマストとして、推しの料理は全部食べたいし…あっ!グッズは争奪戦だから道元のタッパの見せ所だかんね!」

 今回いくら使う気なのか、響は財布に5000円分程しか入れておらず、場合によっては皿洗いの可能性が見えてきた。

「あ、今回はあたしが奢るから。その分の活躍してよねっ」

 ひとまず財布の心配は免れたようだ。
 透子に今回のグッズのポイントを語られていると、時間はあっという間に開店時間に近づいていた。

「整理券をお配りしまーす」
「来た!」

 響たちの順番は前の方ではあるが、一周目に入店できるかはギリギリのラインだった。
 整理券は一人ずつに配られ、一周目の人の分の枚数が着実に減っていく。

「ギリギリそうだな…」

 整理券を配るお姉さんが響たちの前まで配り終え、響たちの番になる。

「整理券でーす」
「あ、ありがとうございます」
「一周目の整理券が無くなりましたので、二周目の整理券配りまーす」

 響の手には一周目の時間が書かれた整理券があるが、透子の手には何も無かった。

「俺の代わりに透子さんが行ってくれ、協力は出来ないが楽しめるだろ?」
「道元っ!」

 寸劇のように整理券を響から受け取った透子は、整理券に見蕩れていた。
 すると、整理券を配っていたお姉さんが声を掛けてくる。

「お客様はカップルでしょうか?」
「いえ?違いますけど?」
「カップルだったらお席のご用意があったのですが」
「あたし達はカップルです!」

 透子は物凄い剣幕で堂々と嘘をついた。

「…カップル席ってなんなんだよ…」
「…これはちょっと予想外」

 響たちの席は、アニメに出てくる百合カップルの装飾がされた特別席だった。
 なぜこの席が作られたのかは謎だが、確実に言えるのは運営の悪ふざけであるということだけだ。

「メニュー頼むから、道元はお腹の準備して」
「なんだそれ」

 透子は到底一人では食べきれない量を注文すると、響にサムズアップをする。

「ご注文の品でーす。お残しになるとグッズは没収となるので、その点だけはご留意くださいねー」
「グッズは食べ終わった人から購入だから…道元!頑張って!」

 透子もそこそこ食べたが、ほとんどは響の胃の中に消えていった。

「…ご馳走様…」
「やるじゃん道元!」

 どうにか五人前程の料理を食べ切り、無事にグッズも手に入れることが出来た。
 料理を沢山食べさせられたこともキツかったが、店内の中心に位置する場所のカップル席の方がキツかった。

「どうにか攻略出来たな…」
「じゃあここでカップルは解消ね」
「設定に忠実だな」

 透子はお目当てのグッズをカバンから出し、ニヤニヤと見惚れていた。

「じゃあ道元あたし帰るわ」
「俺は都合のいい男かよ」
「んー、またこういう時は頼むから付き合ってよねっ」

 一回り大きくなったお腹を撫でながら、道元はカロリーを減らすため遠回りに帰った。
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