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78話 厨二病少女との思い出
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黒髪の少女は響に気を取られ、自己紹介をするのを忘れていたため慌ててコホンと喉を鳴らす。
「我は!天使美神!!気軽にミカエルと呼んでくれたまえ!」
黒髪の少女は包帯を巻いた手で目を隠し、声高々に自己紹介を終える。
先程までの不思議な言葉遣いの原因がようやく分かった。
この少女、美神は遅めの厨二病患者だった。
「先生殿!我の席は響殿の近くを所望する!」
「いや、普通に空いてる席に座ってくれ」
美神は大人しく廊下側の端の席に腰を下ろした。
「響さん、あの方ってもしかして?」
「…もしかしたら…いや…」
ホームルームが終わると美神は、響の元へ駆けて来ると同時に片膝をついた。
「響殿!我は貴殿が好きだ!是非契りを結んで貰いたい!」
「っはぁ!?」
転校初日に、ほとんど初対面のような少女に告白された響は、口と目を大きく見開いた。
響の横で、不服そうな表情で菖蒲が頬を膨らませながらジト目を向けてくる。
「…付き合って数日で浮気ですか?」
「っいやいや!違うぞ!?」
告白されている最中に菖蒲を宥める響を見た美神は、考えを巡らせるように頭をトントンと指で突く。
「響殿、この淑女は一体?」
「こいつは…」
響の口を抑え『ここは私が』と言わんばかりの表情で、美神にノートを突き出す。
『私は源菖蒲、響さんの彼女です!!』
「なんとっ!」
菖蒲は響の腕を両腕で包み、肩に頬をくっつけると自分の所有物を主張する子猫のように美神を睨む。
美神は天を仰ぎ、腰に両手を当てると再度響を見つめる。
「響殿のような殿方、想い人が居ない方が不自然…今回は我のタイミングが悪かった…っか!」
「待て待て!まだ脳が理解に追いついてないから、一旦詳しい話を聞かせてくれ」
美神は前髪をピンで留めると、自分の席から椅子を運んでくる。
「我と響殿の出会いは、まだ我が天界から追放されていた時…」
「…その話長くなりそうか?」
物々しいモノローグから始まった話は、授業の終わりごとの時間を使い、放課後になったタイミングで完結した。
「つまり、俺がいじめられている美神…」
「ミカエルだ」
「…ミカエルを助けたから俺を好きになったと」
美神は両手で頬を包みながら、身体をクネクネとさせながら照れる。
「この内容なら一分も要らなくないか?」
「何を言う響殿!この物語を語るには、まだまだ時間が足りないぐらいだぞ!」
美神は拳をブンブンと振ると、時間が足りないことを惜しく思うように時計に敵対心を向ける。
響は顎に手を当てると、昔の記憶を辿った。
「確かに中学の時に庇った子はいたが、ミカエルだったのかは覚えてないな」
「なんとっ!響殿は記憶に攻撃を受けた経験が!?」
いちいち大袈裟な想像力にため息を漏らしていると、隣で菖蒲が囁く。
「響さんが庇った子ってとこは、響さんが…辛い想いをしたことに関係のある方ということではないですか?」
「もう終わったことだから気にしてないが、確かにその可能性はあるな」
響は美神を見つめると、一つの頼み事をする。
「ミカエル、中学時代の雰囲気に戻せるか?」
「…響殿は未成熟の乙女が好みであったか。っは!つまり菖蒲殿を選んだ理由も!」
『響さんはロリコンなので正解です』
完全に不正解だが、この際どうでもいいことだった。
美神は恥ずかしそうにしながら、徐々に見た目を変えていく。
「朧気だが、このような姿をしていたと思うぞっ」
「確かに俺が庇った子に瓜二つだ…」
前髪をいじりながら頬を染める美神は、中学時代に庇った子で、夢に出てきた少女そのものだった。
「我がクラスの連中に、話し方や見た目をからかわれていた時…身を呈して助けてくれたこと、改めて感謝すると同時に謝罪をしたい」
美神は九十度に曲げた身体を響に向け、誠心誠意の謝意を示す。
「もう終わったことだ、気にするな。俺こそ怪我した時に保健室に運んでくれてありがとな」
「響殿の寛大な心に感謝する。しかし、我の見た目は朧気なのに保健室の記憶はあるのだな?」
「…夢の中で中学の思い出に出てきたんだ」
美神は驚いた表情を浮かべると、悪役のような笑いをしながら、響を指差す。
「この我、大天使ミカエルが夢で出てくるとは…つまり我は天使ではなく、悪魔であるサキュバスということであるか!?夢の中で一体どんないかがわしい行為を!!」
自分の胸元や鼠径部を手で隠し、鼻息を荒くしながら響に迫る。
菖蒲は暴走した美神を止めると、二人の間で一定の距離を保つようにと両手を伸ばす。
『落ち着いてください!とりあえず今日のところは終わりにして、また明日話しましょう!?』
「確かに菖蒲殿の言い分も一理あるな…御意、続きはまた明日に!では、さらばっ」
「っなぁ!おいっ」
美神は俊敏に教室を出ていった。
「賑やかな方ですね」
「記憶の子は清楚系だったんだがな、もう脳機能が衰え始めてるの…まぁ、そろそろ帰るか」
響が立ち上がろうと机に手を置くと、その手を菖蒲が掴む。
「…浮気しちゃ…嫌ですよ?」
「する訳ないだろっ、早く帰るぞ」
美神に遅れて教室を出ると人気が一切無く、一応周辺を見渡した後、菖蒲の手を握った。
「我は!天使美神!!気軽にミカエルと呼んでくれたまえ!」
黒髪の少女は包帯を巻いた手で目を隠し、声高々に自己紹介を終える。
先程までの不思議な言葉遣いの原因がようやく分かった。
この少女、美神は遅めの厨二病患者だった。
「先生殿!我の席は響殿の近くを所望する!」
「いや、普通に空いてる席に座ってくれ」
美神は大人しく廊下側の端の席に腰を下ろした。
「響さん、あの方ってもしかして?」
「…もしかしたら…いや…」
ホームルームが終わると美神は、響の元へ駆けて来ると同時に片膝をついた。
「響殿!我は貴殿が好きだ!是非契りを結んで貰いたい!」
「っはぁ!?」
転校初日に、ほとんど初対面のような少女に告白された響は、口と目を大きく見開いた。
響の横で、不服そうな表情で菖蒲が頬を膨らませながらジト目を向けてくる。
「…付き合って数日で浮気ですか?」
「っいやいや!違うぞ!?」
告白されている最中に菖蒲を宥める響を見た美神は、考えを巡らせるように頭をトントンと指で突く。
「響殿、この淑女は一体?」
「こいつは…」
響の口を抑え『ここは私が』と言わんばかりの表情で、美神にノートを突き出す。
『私は源菖蒲、響さんの彼女です!!』
「なんとっ!」
菖蒲は響の腕を両腕で包み、肩に頬をくっつけると自分の所有物を主張する子猫のように美神を睨む。
美神は天を仰ぎ、腰に両手を当てると再度響を見つめる。
「響殿のような殿方、想い人が居ない方が不自然…今回は我のタイミングが悪かった…っか!」
「待て待て!まだ脳が理解に追いついてないから、一旦詳しい話を聞かせてくれ」
美神は前髪をピンで留めると、自分の席から椅子を運んでくる。
「我と響殿の出会いは、まだ我が天界から追放されていた時…」
「…その話長くなりそうか?」
物々しいモノローグから始まった話は、授業の終わりごとの時間を使い、放課後になったタイミングで完結した。
「つまり、俺がいじめられている美神…」
「ミカエルだ」
「…ミカエルを助けたから俺を好きになったと」
美神は両手で頬を包みながら、身体をクネクネとさせながら照れる。
「この内容なら一分も要らなくないか?」
「何を言う響殿!この物語を語るには、まだまだ時間が足りないぐらいだぞ!」
美神は拳をブンブンと振ると、時間が足りないことを惜しく思うように時計に敵対心を向ける。
響は顎に手を当てると、昔の記憶を辿った。
「確かに中学の時に庇った子はいたが、ミカエルだったのかは覚えてないな」
「なんとっ!響殿は記憶に攻撃を受けた経験が!?」
いちいち大袈裟な想像力にため息を漏らしていると、隣で菖蒲が囁く。
「響さんが庇った子ってとこは、響さんが…辛い想いをしたことに関係のある方ということではないですか?」
「もう終わったことだから気にしてないが、確かにその可能性はあるな」
響は美神を見つめると、一つの頼み事をする。
「ミカエル、中学時代の雰囲気に戻せるか?」
「…響殿は未成熟の乙女が好みであったか。っは!つまり菖蒲殿を選んだ理由も!」
『響さんはロリコンなので正解です』
完全に不正解だが、この際どうでもいいことだった。
美神は恥ずかしそうにしながら、徐々に見た目を変えていく。
「朧気だが、このような姿をしていたと思うぞっ」
「確かに俺が庇った子に瓜二つだ…」
前髪をいじりながら頬を染める美神は、中学時代に庇った子で、夢に出てきた少女そのものだった。
「我がクラスの連中に、話し方や見た目をからかわれていた時…身を呈して助けてくれたこと、改めて感謝すると同時に謝罪をしたい」
美神は九十度に曲げた身体を響に向け、誠心誠意の謝意を示す。
「もう終わったことだ、気にするな。俺こそ怪我した時に保健室に運んでくれてありがとな」
「響殿の寛大な心に感謝する。しかし、我の見た目は朧気なのに保健室の記憶はあるのだな?」
「…夢の中で中学の思い出に出てきたんだ」
美神は驚いた表情を浮かべると、悪役のような笑いをしながら、響を指差す。
「この我、大天使ミカエルが夢で出てくるとは…つまり我は天使ではなく、悪魔であるサキュバスということであるか!?夢の中で一体どんないかがわしい行為を!!」
自分の胸元や鼠径部を手で隠し、鼻息を荒くしながら響に迫る。
菖蒲は暴走した美神を止めると、二人の間で一定の距離を保つようにと両手を伸ばす。
『落ち着いてください!とりあえず今日のところは終わりにして、また明日話しましょう!?』
「確かに菖蒲殿の言い分も一理あるな…御意、続きはまた明日に!では、さらばっ」
「っなぁ!おいっ」
美神は俊敏に教室を出ていった。
「賑やかな方ですね」
「記憶の子は清楚系だったんだがな、もう脳機能が衰え始めてるの…まぁ、そろそろ帰るか」
響が立ち上がろうと机に手を置くと、その手を菖蒲が掴む。
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