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「レティシア=マルグリット=ヴェルディーユ。貴女との婚約を、破棄する!」
王太子アレクシスのその一言が、夜会の空気を瞬時に変えた。
驚愕、ざわめき、そして——なぜか喝采。
「まぁ!」
「ついに“聖女様”が正妃に?」
「これで王国も新しい時代に……!」
会場の貴族たちは、まるで芝居を観ているかのように沸き立っていた。舞台の中心に立たされている私を除いて。
「……そうですか。では、どうぞご自由に」
私は静かに返した。それだけで、周囲の空気が一瞬、凍りついたようだった。
アレクシスの背後に立つ少女——聖女リリィは、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。金の装飾をちりばめた白いドレスに、平民には過分な宝飾品。それらすべてが、王家の寵愛の象徴だった。
「僕は、愛を選んだんだ。君との政略的な婚約よりも、心でつながる関係を——」
「それは結構ですわ。王太子殿下には“お似合いの”お相手が見つかって、何よりですもの」
そう言って、私は会釈ひとつでその場を後にした。
震えはなかった。怒りも、涙も、失望も。
あるのはただ——ほっとした気持ちだけ。
「やっと、“私の人生”を取り戻せるのね」
侯爵家の娘として、国の財政を背負わされ、政略結婚の駒とされてきた十七年間。
一度も自分の意思で何かを選べたことなどなかった。
だからこそ、今この瞬間こそが、私にとっての“始まり”だと確信できる。
馬車に乗り込んだ私を、父ギュスターヴは待っていた。
「想定より半年早かったな」
「ええ。でも、むしろ好都合ですわ」
「そうか」
父の返事はそれだけだった。だが、その声音にはわずかに安堵が混じっていた気がする。
静かに動き出した馬車の窓から、月がのぞく。
婚約破棄? いいえ、それは“ご褒美”だった。
私はもう、誰かの人形ではない。
これからは私の手で、私の道を築いていく。
「さあ、次の手を打ちましょうか」
その声は、小さくも確かに、王都の闇に響いていった。
王太子アレクシスのその一言が、夜会の空気を瞬時に変えた。
驚愕、ざわめき、そして——なぜか喝采。
「まぁ!」
「ついに“聖女様”が正妃に?」
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会場の貴族たちは、まるで芝居を観ているかのように沸き立っていた。舞台の中心に立たされている私を除いて。
「……そうですか。では、どうぞご自由に」
私は静かに返した。それだけで、周囲の空気が一瞬、凍りついたようだった。
アレクシスの背後に立つ少女——聖女リリィは、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。金の装飾をちりばめた白いドレスに、平民には過分な宝飾品。それらすべてが、王家の寵愛の象徴だった。
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「それは結構ですわ。王太子殿下には“お似合いの”お相手が見つかって、何よりですもの」
そう言って、私は会釈ひとつでその場を後にした。
震えはなかった。怒りも、涙も、失望も。
あるのはただ——ほっとした気持ちだけ。
「やっと、“私の人生”を取り戻せるのね」
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一度も自分の意思で何かを選べたことなどなかった。
だからこそ、今この瞬間こそが、私にとっての“始まり”だと確信できる。
馬車に乗り込んだ私を、父ギュスターヴは待っていた。
「想定より半年早かったな」
「ええ。でも、むしろ好都合ですわ」
「そうか」
父の返事はそれだけだった。だが、その声音にはわずかに安堵が混じっていた気がする。
静かに動き出した馬車の窓から、月がのぞく。
婚約破棄? いいえ、それは“ご褒美”だった。
私はもう、誰かの人形ではない。
これからは私の手で、私の道を築いていく。
「さあ、次の手を打ちましょうか」
その声は、小さくも確かに、王都の闇に響いていった。
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