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王都ルキアーノ、王宮の謁見の間。
そこに呼び出されたのは、辺境に家族を持つ三組の平民だった。だが彼らが知るはずもない情報が、王宮の中で淡々と語られていく。
「……あなた方の家族が、“加護を拒絶した者の地”に暮らしているのはご存知ですね?」
金の刺繍を施した装束の廷臣がそう問いかけると、平民たちは困惑した表情で頷いた。
「はい、けど……向こうは飢えも戦もなく、皆静かに――」
「問題なのは、“神の声を否定している”という点です」
別の廷臣が冷たく告げた。
「第二王子を名乗る者は、正統な継承権を持ちません。そしてその者と共にあるユスティーナ嬢は、既に神殿より断罪された“魔を招く者”」
「でも……あの人たちは家族を助けて……!」
平民のひとりが声を荒げるが、その瞬間、背後の兵士が一歩踏み出し、無言の圧を放つ。
「あなた方が王家に忠義を尽くすならば、しかるべき書状を……こちらに」
差し出された紙には、“辺境統治者の追放を求める請願”の文字。
この動き――“被害者の声”を装い、民の口から糾弾を叫ばせる――それこそが、リヒャルト大神官の意図した“第二の断罪劇”の幕開けだった。
そして翌日――
「……王都で“辺境に住む家族の安全を懸念する声”が上がった、と?」
ヴィルナを経由して届いた報せに、ユスティーナは顔を伏せ、静かに微笑んだ。
「神殿と王家が“民の口”を使ってきたわ。さすが、汚れを正義に包む手口は見事ね」
「ここまで来たか。……となれば、いよいよこちらも剣を抜く準備をしなければなるまい」
ライオネルが言うと、ユスティーナは頷いた。
「でも、まだ“戦”ではない。“真実の演出”が先。民の声が本物かどうかを、民に委ねる必要があるわ」
その日、辺境ではひとつの新しい祭が開かれた。
名もなき集い。だがその中では、王都から逃れてきた者たちが語り出す。
「私は、彼女に救われました」
「この地で子どもを産みました」
「王都では“病”とされた私が、ここでは“人”として扱われた」
そのすべてが、“加護のない統治”がもたらした“幸福の記録”だった。
その声は、映像符に記録され、音声符に変換されて――密かに、王都へと逆流し始める。
“悪役令嬢”と“反逆王子”が統べる地に、神は降りずとも、確かに“人の意志”が根を張っている。
それは、最も恐るべき現象だった。
神殿にとっても。王家にとっても。
そこに呼び出されたのは、辺境に家族を持つ三組の平民だった。だが彼らが知るはずもない情報が、王宮の中で淡々と語られていく。
「……あなた方の家族が、“加護を拒絶した者の地”に暮らしているのはご存知ですね?」
金の刺繍を施した装束の廷臣がそう問いかけると、平民たちは困惑した表情で頷いた。
「はい、けど……向こうは飢えも戦もなく、皆静かに――」
「問題なのは、“神の声を否定している”という点です」
別の廷臣が冷たく告げた。
「第二王子を名乗る者は、正統な継承権を持ちません。そしてその者と共にあるユスティーナ嬢は、既に神殿より断罪された“魔を招く者”」
「でも……あの人たちは家族を助けて……!」
平民のひとりが声を荒げるが、その瞬間、背後の兵士が一歩踏み出し、無言の圧を放つ。
「あなた方が王家に忠義を尽くすならば、しかるべき書状を……こちらに」
差し出された紙には、“辺境統治者の追放を求める請願”の文字。
この動き――“被害者の声”を装い、民の口から糾弾を叫ばせる――それこそが、リヒャルト大神官の意図した“第二の断罪劇”の幕開けだった。
そして翌日――
「……王都で“辺境に住む家族の安全を懸念する声”が上がった、と?」
ヴィルナを経由して届いた報せに、ユスティーナは顔を伏せ、静かに微笑んだ。
「神殿と王家が“民の口”を使ってきたわ。さすが、汚れを正義に包む手口は見事ね」
「ここまで来たか。……となれば、いよいよこちらも剣を抜く準備をしなければなるまい」
ライオネルが言うと、ユスティーナは頷いた。
「でも、まだ“戦”ではない。“真実の演出”が先。民の声が本物かどうかを、民に委ねる必要があるわ」
その日、辺境ではひとつの新しい祭が開かれた。
名もなき集い。だがその中では、王都から逃れてきた者たちが語り出す。
「私は、彼女に救われました」
「この地で子どもを産みました」
「王都では“病”とされた私が、ここでは“人”として扱われた」
そのすべてが、“加護のない統治”がもたらした“幸福の記録”だった。
その声は、映像符に記録され、音声符に変換されて――密かに、王都へと逆流し始める。
“悪役令嬢”と“反逆王子”が統べる地に、神は降りずとも、確かに“人の意志”が根を張っている。
それは、最も恐るべき現象だった。
神殿にとっても。王家にとっても。
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