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メルティンの作戦
メルティンと話を終えたルティたちが戻った時、こそこにはほかの家臣たちはいなかった。
ザインも消えており、部屋にはソーマだけが残っていた。
「陛下」
「ルティ。……大丈夫か?」
「はい。兄とお話ができました。……機会を作ってくださり、ありがとうございます」
無事、家臣たちを説得できたのだろうか?
ルティがちらりと周りを見たことに気づいたのか、ソーマが険しい顔をした。
「――ひとまず、彼らには下がってもらった。……ルティの兄をハレムに入れることを条件にな」
「そう、なのですね……」
まあ、そうなるだろうなとは思っていた。
メルティンがハレムに入ることは、そもそも決まっていたことなのだから、なに一つ傷つく必要はない。
だから大丈夫だと、自分に言い聞かせた。
そんなルティを隣で見ていたメルティンは、若干眉間に皺を寄せつつ一歩前に出る。
「国王陛下。……無礼を承知で一つよろしいですか?」
「……許す」
ソーマは肘掛けに肘をつき、手の甲にほおを乗せた。
普段は見ない不遜な態度に驚いてしまう。
「俺はあなたが運命のつがいだと、確証を持てません」
「なるほど。それは私もだ」
「ならなおさら、時間をかけてお互いのことを理解するべきかと思います」
メルティンははっきりとそう言い放った。
ハレムのオメガは全てソーマのものであり、彼が思いどおりにできないことはない。
だからソーマがメルティンをつがいにすると言えば、それを拒否することはできないのだ。
それがわかっているからこそ、メルティンは牽制したのだろう。
だがあまりにも失礼な物言いに、ルティのほうが不安になってしまった。
不敬罪などで罰せられてもおかしくはない。
メルティンの隣であわあわと慌てていると、ソーマが軽く鼻を鳴らした。
「必要ない。……あと少しでルティの検査結果が出る。それで全てわかるはずだ」
「――検査結果?」
「あ……。僕の第二の性をもう一度調べたんだよ。その結果があと少しで出るんだ」
ルティの答えに、メルティンはありえないという顔をした。
「どうして今さらまた調べたの? ルティはベータだって診断が出たのに……」
「それは……」
「ルティが私の運命のつがいである可能性が高いからだ」
ルティの代わりにソーマが答えた。
そしてもちろん、その答えにメルティンが納得するわけはわかった。
メルティンは折れてしまうのではと不安になるほど、首をかしげる。
「陛下の運命のつがいは俺なんじゃないの?」
「…………どうだろうな。そこを確かめるためにも、まずはルティの診断結果を待つ。それまでは君になにかを求めることはない」
「ふーん……。まあ、いいか! その結果、ルティがオメガじゃないとわかれば、ルティはハレムから出してくれるんですよね?」
メルティンはルティがハレムにいることが気がかりらしい。
自分のせいだと悔やんでいるのだろう。
だからこそ、ルティの自由を第一に望んでいるようだ。
もう答えが決まっているかのようにうんうんと頷くメルティンに、ソーマはきっぱりと言い放った。
「いや。……たとえ、ルティがオメガでなくても手放すつもりはない」
だがソーマはそれを許してはくれないらしい。
きっぱりと拒否したソーマに、メルティンはありえないと声を上げた。
「それを周りが許すとでも? ……オメガでもないのに、ハレムにいるなんてルティがかわいそうです」
「兄さん、僕は……」
「ルティは流されやすいんだよ。……だからちゃんと考えないと。ルティは外に出て、しあわせにならないとダメだよ!」
メルティンは心配してそう言ってくれているのだろう。
けれど、とルティはソーマを見る。
するとソーマもルティのことを見ており、目があった。
「――僕は……、もう、しあわせだよ。……陛下のおそばにいられて」
本当はなにも言うつもりがなかったのに。
あの黄金の瞳に見られると、無理だった。
だからそんな言葉が、ポロリと口からこぼれてしまったのだ。
「だからこのままでも大丈夫だよ。それにやっぱりベータだったら、ハレムで兄さんのお手伝いもできるしさ」
本心を言うのならソーマのそばから離れたいとは思う。
彼が他の人を愛するところなど、見たくないからだ。
だがソーマがそれを望むのなら、ルティは従おうと思っている。
それにハレムに慣れていない、メルティンのそばにいてあげることができるのはいいことだろう。
「……ルティ。……でも、それじゃあ…………っ」
メルティンは悲しげに瞳を伏せた。
彼の考えはありがたいが、今すぐはソーマも納得しないはずだ。
だから本当に大丈夫なのだと、メルティンの肩に触れようとした。
しかしその手は、なにも掴むことはなかった。
なぜならメルティンは、なにかを思いついたようで、ソーマの目の前まで歩み寄ったからだ。
彼は自身の胸に手を当てると、高らかに宣言した。
「なら俺は、全力で陛下を落としてみせます! 陛下が俺を好きになれば、ルティは解放してくれるんでしょう?」
「――兄さん? なにを……」
なにを言っているんだ?
呆然とするルティを振り返ったメルティンは、そのままソーマの手を握った。
「俺たち運命のつがいなんだから、絶対相性いいに決まってるし! よろしくね、陛下!」
一体なにが起こっているのだろうか?
ルティは唖然とした顔で、メルティンを見ることしかできなかった……。
ザインも消えており、部屋にはソーマだけが残っていた。
「陛下」
「ルティ。……大丈夫か?」
「はい。兄とお話ができました。……機会を作ってくださり、ありがとうございます」
無事、家臣たちを説得できたのだろうか?
ルティがちらりと周りを見たことに気づいたのか、ソーマが険しい顔をした。
「――ひとまず、彼らには下がってもらった。……ルティの兄をハレムに入れることを条件にな」
「そう、なのですね……」
まあ、そうなるだろうなとは思っていた。
メルティンがハレムに入ることは、そもそも決まっていたことなのだから、なに一つ傷つく必要はない。
だから大丈夫だと、自分に言い聞かせた。
そんなルティを隣で見ていたメルティンは、若干眉間に皺を寄せつつ一歩前に出る。
「国王陛下。……無礼を承知で一つよろしいですか?」
「……許す」
ソーマは肘掛けに肘をつき、手の甲にほおを乗せた。
普段は見ない不遜な態度に驚いてしまう。
「俺はあなたが運命のつがいだと、確証を持てません」
「なるほど。それは私もだ」
「ならなおさら、時間をかけてお互いのことを理解するべきかと思います」
メルティンははっきりとそう言い放った。
ハレムのオメガは全てソーマのものであり、彼が思いどおりにできないことはない。
だからソーマがメルティンをつがいにすると言えば、それを拒否することはできないのだ。
それがわかっているからこそ、メルティンは牽制したのだろう。
だがあまりにも失礼な物言いに、ルティのほうが不安になってしまった。
不敬罪などで罰せられてもおかしくはない。
メルティンの隣であわあわと慌てていると、ソーマが軽く鼻を鳴らした。
「必要ない。……あと少しでルティの検査結果が出る。それで全てわかるはずだ」
「――検査結果?」
「あ……。僕の第二の性をもう一度調べたんだよ。その結果があと少しで出るんだ」
ルティの答えに、メルティンはありえないという顔をした。
「どうして今さらまた調べたの? ルティはベータだって診断が出たのに……」
「それは……」
「ルティが私の運命のつがいである可能性が高いからだ」
ルティの代わりにソーマが答えた。
そしてもちろん、その答えにメルティンが納得するわけはわかった。
メルティンは折れてしまうのではと不安になるほど、首をかしげる。
「陛下の運命のつがいは俺なんじゃないの?」
「…………どうだろうな。そこを確かめるためにも、まずはルティの診断結果を待つ。それまでは君になにかを求めることはない」
「ふーん……。まあ、いいか! その結果、ルティがオメガじゃないとわかれば、ルティはハレムから出してくれるんですよね?」
メルティンはルティがハレムにいることが気がかりらしい。
自分のせいだと悔やんでいるのだろう。
だからこそ、ルティの自由を第一に望んでいるようだ。
もう答えが決まっているかのようにうんうんと頷くメルティンに、ソーマはきっぱりと言い放った。
「いや。……たとえ、ルティがオメガでなくても手放すつもりはない」
だがソーマはそれを許してはくれないらしい。
きっぱりと拒否したソーマに、メルティンはありえないと声を上げた。
「それを周りが許すとでも? ……オメガでもないのに、ハレムにいるなんてルティがかわいそうです」
「兄さん、僕は……」
「ルティは流されやすいんだよ。……だからちゃんと考えないと。ルティは外に出て、しあわせにならないとダメだよ!」
メルティンは心配してそう言ってくれているのだろう。
けれど、とルティはソーマを見る。
するとソーマもルティのことを見ており、目があった。
「――僕は……、もう、しあわせだよ。……陛下のおそばにいられて」
本当はなにも言うつもりがなかったのに。
あの黄金の瞳に見られると、無理だった。
だからそんな言葉が、ポロリと口からこぼれてしまったのだ。
「だからこのままでも大丈夫だよ。それにやっぱりベータだったら、ハレムで兄さんのお手伝いもできるしさ」
本心を言うのならソーマのそばから離れたいとは思う。
彼が他の人を愛するところなど、見たくないからだ。
だがソーマがそれを望むのなら、ルティは従おうと思っている。
それにハレムに慣れていない、メルティンのそばにいてあげることができるのはいいことだろう。
「……ルティ。……でも、それじゃあ…………っ」
メルティンは悲しげに瞳を伏せた。
彼の考えはありがたいが、今すぐはソーマも納得しないはずだ。
だから本当に大丈夫なのだと、メルティンの肩に触れようとした。
しかしその手は、なにも掴むことはなかった。
なぜならメルティンは、なにかを思いついたようで、ソーマの目の前まで歩み寄ったからだ。
彼は自身の胸に手を当てると、高らかに宣言した。
「なら俺は、全力で陛下を落としてみせます! 陛下が俺を好きになれば、ルティは解放してくれるんでしょう?」
「――兄さん? なにを……」
なにを言っているんだ?
呆然とするルティを振り返ったメルティンは、そのままソーマの手を握った。
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一体なにが起こっているのだろうか?
ルティは唖然とした顔で、メルティンを見ることしかできなかった……。
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