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診断結果
そして迎えた検査結果を聞く日。
ルティとメルティンはソーマの部屋に案内された。
いくらダシャが医師とはいえ、アルファである彼がハレムに入ることは基本許されていないのだ。
ゆえに出向いたのだが、そこでまさかのことが発覚する。
「――お前っ! あの時の……!」
「おや。やはりあなたでしたか。ルティ様を見た時になんとなく気づいていましたが」
ダシャと顔を合わせたメルティンが、彼の顔に向かって指を指した。
そしてそんなことを叫んだのだ。
「……兄さん、ダシャ様とお知り合いなの?」
「――…………海で、出会ったんだよ」
「ああ、だからルティに会った時、驚いた顔をしていたのか」
ソーマの問いに、ダシャが頷いた。
「そうなんです。休暇中に行った海でお会いしまして。その後ルティ様を見た時は驚きましたが、すぐに別人だと気付きました」
「――よく気づいたね? 俺たちそっくりって言われるのに」
ね?
と同意を求めてくるメルティンに、ルティは頷いた。
多少の雰囲気は違えど、ルティとメルティンは一卵性双生児である。
なのでいつもどちらがどちらかわからないと言われるのだ。
だがダシャはさらりと答えた。
「ルティ様は穏やかでいらっしゃいますから」
「悪かったね! うるさくて!」
「おや、ご自覚が?」
「――このっ!」
余裕そうなダシャと、ガルガルと今にも噛みつきそうなメルティン。
なんだか相性のよさそうな二人に、ルティは小首を傾げた。
「なんというか……兄が楽しそうでよかったです」
「そうか? ……そう、なのか?」
ルティと同じように首を傾げたソーマだったが、すぐに咳払いを一つした。
「世間話はそこまでで。結果を話してくれ」
「そうですね。では……」
ついにだ。
ついに結果を聞くのだ。
これによって、ルティの運命は大きく変わる。
ルティとしてはオメガであって欲しいと思う。
だってオメガなら、ソーマの隣にいる理由ができる。
けれど同時に少しだけ怖くも思う。
メルティンとザインの言い合いで思い知った。
オメガとは、羨ましいだけの存在ではないと。
彼らはとても大変な思いをしているのだ。
ヒートを筆頭に、誰かとつがいになっても捨てられるかもしれないという恐怖を抱え続ける。
ソーマはきっとそんなことはしない。
それはわかっているけれど、それでも考えてしまうのだ。
だから心臓はおかしいくらい高鳴っていた。
期待と不安が交互に顔を出す中、ルティは静かにダシャを見つめる。
「ルティ様の診断結果ですが……」
ダシャはにこりと笑う。
「さすが陛下。ルティ様はオメガでいらっしゃいます」
「――!」
ルティがソーマを見れば、彼もまたルティを見ていた。
あの黄金の瞳に自分が映っていることに、安堵のため息をこぼす。
すると同じようにソーマも息をついており、二人して笑ってしまった。
「そんなことあるの……? ルティはベータだって言われてたんだよ?」
「あり得ないことではないです。ルティ様はスラムの出でいらっしゃる。栄養が不足すれば発育が遅れることもありますから。ほかの方々のように、十五際までに第二の性が定まらないことも稀にあります」
「そのせいでルティはベータだと?」
ソーマの疑問に、ダシャは顎に手を当てる。
「ただの憶測です」
「構わない。君の憶測はだいたい当たるだろう。言ってくれ」
ふむ、とダシャはソーマの許しを得てから、自分の考えを述べた。
「ルティ様は元々オメガとしての素質……があったんだと思います。ですが発育不足で、ベータとしての素質が優っていた。けれど陛下がうなじを噛んだことで、オメガとしての性が表だった。これは……」
「――ビッチングか」
「に、近いものかと」
「ビッチング?」
聞き慣れない言葉に、ルティは思わず口を開いてしまった。
それに答えてくれたのは、メルティンだった。
「簡単に言うなら、アルファがうなじを噛むことで、アルファやベータをオメガに変えることだよ。条件が難しいから、普通そんなこと起こらないけど……」
「ルティ様が元からオメガに近かったこと。陛下が優秀なアルファであること。――お二人が運命のつがいだったことから、この仮説が一番強いかと」
ちなみに、とダシャは説明を続けた。
「一卵性の双子の場合、遺伝子がほぼ同じと言われています。……なので陛下がメルティンにも運命を感じたのはそれが理由だと思いますよ」
「ルティがまだオメガとして目覚めてないから、俺のフェロモンに引っ掛かっちゃったってこと?」
「それでも陛下はルティ様に運命を感じられた。素晴らしい感性かと」
ダシャの説明を聞きつつも、ルティは眉間に皺を寄せてしまう。
理解しようとしたけれど、わけがわからないのだ。
ちんぷんかんぷんだと黙り込んだルティに、メルティンが笑う。
「まあいいじゃん! ルティがオメガってことに変わりはないんだし!」
「確かにそのとおりだ。……ルティ。君はやはり、私の運命のつがいだ」
「……陛下」
そうだ。
これで彼の隣にいる理由ができた。
それは素直によろこんでいいことだろう。
ルティがソーマの胸に寄りかかれば、優しく頭を撫でられた。
よかった。
これですべてうまくいくと、ルティはほっと安堵の息をこぼした。
だがそんなルティの耳に、冷静なダシャの声が届く。
「ですが気になる点もあります。もう少しだけ、お話してもよろしいでしょうか?」
そう言うダシャの顔は険しくて、ルティやソーマ、メルティンまで表情を固くした。
「……なんの話だ?」
そう問うたソーマにダシャは答えた。
「先ほど、発育が乏しいとお話させていただきましたね? 確かにルティ様はオメガという診断が出ました。ですがそのなり方は少し特殊ですから……。このままでは、ルティ様はヒートがこない可能性が高いです」
ルティとメルティンはソーマの部屋に案内された。
いくらダシャが医師とはいえ、アルファである彼がハレムに入ることは基本許されていないのだ。
ゆえに出向いたのだが、そこでまさかのことが発覚する。
「――お前っ! あの時の……!」
「おや。やはりあなたでしたか。ルティ様を見た時になんとなく気づいていましたが」
ダシャと顔を合わせたメルティンが、彼の顔に向かって指を指した。
そしてそんなことを叫んだのだ。
「……兄さん、ダシャ様とお知り合いなの?」
「――…………海で、出会ったんだよ」
「ああ、だからルティに会った時、驚いた顔をしていたのか」
ソーマの問いに、ダシャが頷いた。
「そうなんです。休暇中に行った海でお会いしまして。その後ルティ様を見た時は驚きましたが、すぐに別人だと気付きました」
「――よく気づいたね? 俺たちそっくりって言われるのに」
ね?
と同意を求めてくるメルティンに、ルティは頷いた。
多少の雰囲気は違えど、ルティとメルティンは一卵性双生児である。
なのでいつもどちらがどちらかわからないと言われるのだ。
だがダシャはさらりと答えた。
「ルティ様は穏やかでいらっしゃいますから」
「悪かったね! うるさくて!」
「おや、ご自覚が?」
「――このっ!」
余裕そうなダシャと、ガルガルと今にも噛みつきそうなメルティン。
なんだか相性のよさそうな二人に、ルティは小首を傾げた。
「なんというか……兄が楽しそうでよかったです」
「そうか? ……そう、なのか?」
ルティと同じように首を傾げたソーマだったが、すぐに咳払いを一つした。
「世間話はそこまでで。結果を話してくれ」
「そうですね。では……」
ついにだ。
ついに結果を聞くのだ。
これによって、ルティの運命は大きく変わる。
ルティとしてはオメガであって欲しいと思う。
だってオメガなら、ソーマの隣にいる理由ができる。
けれど同時に少しだけ怖くも思う。
メルティンとザインの言い合いで思い知った。
オメガとは、羨ましいだけの存在ではないと。
彼らはとても大変な思いをしているのだ。
ヒートを筆頭に、誰かとつがいになっても捨てられるかもしれないという恐怖を抱え続ける。
ソーマはきっとそんなことはしない。
それはわかっているけれど、それでも考えてしまうのだ。
だから心臓はおかしいくらい高鳴っていた。
期待と不安が交互に顔を出す中、ルティは静かにダシャを見つめる。
「ルティ様の診断結果ですが……」
ダシャはにこりと笑う。
「さすが陛下。ルティ様はオメガでいらっしゃいます」
「――!」
ルティがソーマを見れば、彼もまたルティを見ていた。
あの黄金の瞳に自分が映っていることに、安堵のため息をこぼす。
すると同じようにソーマも息をついており、二人して笑ってしまった。
「そんなことあるの……? ルティはベータだって言われてたんだよ?」
「あり得ないことではないです。ルティ様はスラムの出でいらっしゃる。栄養が不足すれば発育が遅れることもありますから。ほかの方々のように、十五際までに第二の性が定まらないことも稀にあります」
「そのせいでルティはベータだと?」
ソーマの疑問に、ダシャは顎に手を当てる。
「ただの憶測です」
「構わない。君の憶測はだいたい当たるだろう。言ってくれ」
ふむ、とダシャはソーマの許しを得てから、自分の考えを述べた。
「ルティ様は元々オメガとしての素質……があったんだと思います。ですが発育不足で、ベータとしての素質が優っていた。けれど陛下がうなじを噛んだことで、オメガとしての性が表だった。これは……」
「――ビッチングか」
「に、近いものかと」
「ビッチング?」
聞き慣れない言葉に、ルティは思わず口を開いてしまった。
それに答えてくれたのは、メルティンだった。
「簡単に言うなら、アルファがうなじを噛むことで、アルファやベータをオメガに変えることだよ。条件が難しいから、普通そんなこと起こらないけど……」
「ルティ様が元からオメガに近かったこと。陛下が優秀なアルファであること。――お二人が運命のつがいだったことから、この仮説が一番強いかと」
ちなみに、とダシャは説明を続けた。
「一卵性の双子の場合、遺伝子がほぼ同じと言われています。……なので陛下がメルティンにも運命を感じたのはそれが理由だと思いますよ」
「ルティがまだオメガとして目覚めてないから、俺のフェロモンに引っ掛かっちゃったってこと?」
「それでも陛下はルティ様に運命を感じられた。素晴らしい感性かと」
ダシャの説明を聞きつつも、ルティは眉間に皺を寄せてしまう。
理解しようとしたけれど、わけがわからないのだ。
ちんぷんかんぷんだと黙り込んだルティに、メルティンが笑う。
「まあいいじゃん! ルティがオメガってことに変わりはないんだし!」
「確かにそのとおりだ。……ルティ。君はやはり、私の運命のつがいだ」
「……陛下」
そうだ。
これで彼の隣にいる理由ができた。
それは素直によろこんでいいことだろう。
ルティがソーマの胸に寄りかかれば、優しく頭を撫でられた。
よかった。
これですべてうまくいくと、ルティはほっと安堵の息をこぼした。
だがそんなルティの耳に、冷静なダシャの声が届く。
「ですが気になる点もあります。もう少しだけ、お話してもよろしいでしょうか?」
そう言うダシャの顔は険しくて、ルティやソーマ、メルティンまで表情を固くした。
「……なんの話だ?」
そう問うたソーマにダシャは答えた。
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