『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』

来夢

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第1章 異世界転生

第4話

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決意の日から3年の月日が経った。

小説なら赤ちゃんから3歳になるまでの話など、1話~2話程度で済むのだが、実際に体験してみると恐ろしいほど時の経つ時間が長い。おまけに乳幼児目線では住んでいる屋敷はアホかと思うぐらい広いんだ。

3歳になると、若干だが親や従者達から手が離れたので、屋敷にある書庫へと入り浸る。

この書庫、書いた俺が言うのもあれだが、かなりの本の量がある。知識は力なり、ペンは剣より強しなど名言のあるとおり知識は重要となると思ったから物語にそう書いた。

主人公には高い知力を求めた訳ではないがこうなると、書いてよかったと思う。

て言っても、色々と本を手に取って見てみたが、本が沢山あると言っても子供向けの本ばかり。それこそ英雄譚や昔話が多い。

俺の記憶と本の内容を見て色々と擦り合わせしたりしているが、今のところは大きなズレは無いのだが、残念と言うべきなのか教育関連の本は無いに等しかった。

少しがっかりしつつ、ずっと気になっていた聖女と聖騎士の事について調べたが、英雄譚で聖女は出てきても、詳しい情報の手掛かりがない。よほどのレア職なんだろうか?

手に届く範囲での本を参考にして紙に纏めてみると、若干の食い違いというか、自分の考えてよりも細かく設定されていた。

まず神託の儀で、神様からスキルを与えられるのだが、血筋や12歳までどのような人生を歩んできたかで得られるスキルに差が出るようだ。なので貴族達は12歳になるまで家庭教師を付けたりするのが一般的のようだ。

教育格差を感じるがこれは致し方ないのであろう。

適性の弱い強いは血筋によるらしいが、剣や槍スキルも努力次第では身に付くそうだし、落ちこぼれてたり集団生活や規則正しい生活が苦手な者たちは冒険者になるそうだ。思ったより自由でよかった。

それにこの国では努力をして神託で上級スキルを与えられた若者たちは、無償で一般の学校に入学出来るようだ。特待生みたいなものだな。たぶん。

ちなみに文字と言えば、母親が寝る前に読み聞かせをしてくれたお陰で、この世界の文字の読み書きは出来る様になっていた。思考能力はアラフィフだからな。

もっとも、そこのところは隠していたので重要なメモは日本語で書いている。一度書庫で寝落ちしている時に書いた物が見つかってしまったが、子供の落書きと言うことで落ち着いたようだ。

そんなわけで従者達に神童だと持てはやされたが、そんな事で自惚れやしない。なんせ俺は日本で教育を受けてきたのだ。出来て当然だ。

加えて言えば書庫に入り浸っているのは何も本を読む為だけではない。魔力操作の鍛錬をする為には丁度良い場所なのだ。

だから布石も打ってある。普段はワガママや悪戯し放題、訳が分からなくても書庫の本を与えると大人しくなるという演技までした。

「なぁヴェル、なぜおまえは、大人の読む本を読もうとするんだ?」

「紙とインクの匂いが好きだからです。ページを捲る度にその匂いに癒されます」

紙とインクの匂いが好きな3歳児だぞ?ライナスの毛布?いや、もはや変態かフェチかってレベルだ。

両親達は最初は怪しんだが、大人しくなる上に昼寝をさせる手間も省けると言う事で今は放置状態だ。現代社会に於いて、親が子供にスマホを与えているのと同じ感覚なんだろうね。わかります。

優しい母はその為に、書庫に子供用のベッドを用意してくれた。ありがたいことだ。

ここまでの話でわかったと思うけど、実のところ昼寝なんかじゃなく、3歳から魔力操作で魔力の限界値を上げる為に、魔力切れで気絶するまで鍛錬をしているわけだ。見た目は昼寝だけどね。

それでも自分の扱える魔力量が確実に増えていることだけは断言できる。

自分で書いた設定では、全開で強く魔力を流せばそれなりに強力な魔法が使えるけど、魔力を一点集中時間も掛かるし魔力切れで気絶したら不発な上に、そこで終わりなので魔力切れには注意が必要だと書いた。

ラノベの設定でよくある全属性を最初から習得って具合にしようと思ったが、騎士家系なのにそれはどうなんだろうと思って自重してしまった。まさか裏目に出るとは。

こうして毎日魔力操作の鍛錬をしていると、魔法適正さえあれば魔法が使えるのではないかと思い試してみたくなる。好奇心というかどちらかと言うと冒険心だな。

なので、本に書いてあったとおり微量の魔力を右手に流して「ライト」と詠唱してみると手のひらに小さな黄色い魔法陣が顕現した。魔法陣に魔力が流れると少し発光した後に魔法陣は消え、僅かばかりだが右手が光る。

「あれ?マジで?!」

つい、日本語が口をつく。

神様のところに呼ばれて、チート機能を与えられた記憶は無いが実は呼ばれていたのか?そこまで都合が良いわけないか。

それからは、外に光が漏れないように布団をかぶり光を出す練習をした。魔力を流せば流すほど光が強くなる事がわかる。これが魔力操作の恩恵か。これは利用価値があるぞ。

そんな訳で本に書いているとおり、光の魔法を発動しながら「魔法陣展開」と詠唱する。すると、魔力を集めた右手に魔法陣が現れて消えずに残っている。

「やった!!できちゃったよ」

ここまでできちゃうと色々と試したくなるな。ひょっとしたら書いた設定とは違うかも知れない。勉強するまで弄るつもりはないが、がぜん楽しくなって来た。そう思いそればらばと「ステータス・オープン」と詠唱してみる。

それからも、それっぽい言葉を言ってみるが反応は無い。ひょっとしたらステータスカードがあれば反応をするかも知れないが、12歳まではステータスカードが貰えないので確認出来ない。

「くっそ~!これは駄目だったかっ!それじゃこれでどうだ!鑑定!」

机においてあった本を手に取って、半ばやけくそでそう詠唱すると、なんと!本の上に白色の魔法陣が現れて消えると鑑定結果が出る。

名称:魔法知識の本 子供向け 価値:小金貨1枚 

「まままま・マジか!!金の価値は分からないけど凄いぞこれは。これは全部試すしか無いな!」

あまりにもテンションが上がったので、それから本に書いてある俗に言う生活魔法を試してみた。が、残念ながらこちらの方はまだ使えなかった。それからは、本で読んだ魔法を試してみるが一般的な魔法は全て適正が無い。

このまま諦めるよりは全部試してみようと、英雄譚に書いてあった勇者が使える重力魔法を試してみる。

パワーライズ力上昇

体全体に魔力が行き渡るようにイメージしてそう詠唱すると、足元に紫色の魔法陣が現れる。魔法陣が消えると、全身が少し光り嘘のように体が軽くなる。

「えっ?どう言う事だ?」

どういうわけか使えてしまった。

主人公のヴェルにしろオレにしろ、勇者にするつもりもなるつもりなどさらさら無かったが、試しに裏設定である空間魔法を唱えてみる。上手くいけばアイテムボックス持ちだ。

「ストレージ!」

こちらはなんの反応も無い。なんだかホッとしたような、残念なような…ああ、でもこれからは、光魔法と重力魔法を中心に鍛えれはいいんだな。

それからは、重力魔法で何が出来るか探る。

まずは体を鍛える為には体に負荷を与える必要がある。軽く魔力を流して「オーバーロード過負荷」と詠唱をする。先ほどと同じで魔法陣は紫色に光ると、体がずっしりと重くなる。

「うっは~。こりゃマジきつい」

解除は魔力を流すのをやめればいいだけだ。使い方を間違えたらとんでもない事になりそうだ。魔力操作の鍛錬をしておいて良かった。

次に両足にだけに魔法を掛けてみる。もちろん軽くだ。

すると、軽く飛び上がっただけで天井に着きそうになった。危うく天井を貫くところだ。魔法操作を鍛練しておいて良かった。

軽く歩いてみるが高速で足が動く。楽しいが、人が見たらどう思うだろう?想像するだけで不気味だなこりゃ。

次に、物にどのような影響を与えるか試してみた。本を持つと予想通り本が軽くなる。こいつはやばい。とんでもないチートスキルだ。使い方次第では無敵と言っていいんじゃないか?

これからは魔力の鍛錬だけじゃなくて、体に負荷を掛けながら毎日屋敷の周りを走って体を鍛えようと思う。死なない程度にね。
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