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第1章 異世界転生

第23話

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 朝食後、平服を用意して着替える。

こうして出掛けるのは、じいさんのお見舞いの時に行った海沿いの町ミューゼの町以来だ。着替え終わるとホールでジュリエッタを待つ。

「レリクさんも平服に着替えていると言う事は、同行してもらえるんですか?」

「もちろんです。お嬢様と坊ちゃんに、何かあったらいけないですからね」

「もうそろそろ、その坊ちゃんって言うのやめませんか。呼ばれ慣れていないから自分の事だと思えなくて」

「分かりました。それではヴェル様とお呼びします。外に出たら身分を隠す為に呼び捨てさせていただきます。いいですね?」

「はい。普段から呼び捨てでも構わないけど、そう言う訳にはいかないんでしょう?」

「ええ。仰るとおりです」

レリクさんは、いつもジュリエッタの護衛をしている下級騎士だ。ジュリエッタに剣術を教えているのも彼である。前から思っていたけど坊ちゃんは無い。じーさんだからな、オレは。

レリクさんは、俺の横に立ちきょろきょろとしている。屋敷内には危険がないのにご苦労な事である。

「レリクさん。腰掛けたらどうですか?」

「いえ。自分は職務中でありますので、ここで結構です」

「なら話をしませんか。それくらいはいいでしょ?」

「ヴェル様がそう仰るのなら」

そう言うと、レリクさんはソファーに腰掛ける。

「で、早速なんですけど今日町でスライムを買おうを思ってるんです。スライムと戦った事ってありますか?」

「ありますよ。毒を持つポイズンスライムなら嫌というぐらい」

「ですよね、で、スライムってコアを破壊すると水と言うか液体になるでしょ?」

「ええ。まぁそうですね。間違っていません」

「スライムを殺さずに、切り取るのは可能なのかなって思って」

「可能だと思いますよ。コアに当たらなかった時は分かれて小さくなるだけですから。まぁ、小さくなるとやつらは逃げ出しますからね。倒すのなら一撃で仕留めるように心掛けていますよ」

それを聞いて心の中でガッツポースを決める。コラーゲン無限増殖なら小金貨2枚などはした金だ。

「なんだか嬉しそうですね。何か企んでいますね?」

「ははは、分かりますぅ~」

いや美容のためね、エロイ事に使うわけじゃない。まあローションは作れるだろうな。あんなこともこんなことも…

とは言え彼女も作らなかったし心臓に負担が掛かるので、その手の商売の所へも行った事はない。腹上死なんて笑えない冗談だ。心臓病と言う、時限爆弾のような病気だったが、この体に転生してからは嘘のように心臓は丈夫で、健康な体がいかに素晴らしい物なのかが分かった。

「なにかと忙しい顔ですね。怪しく笑ったと思ったら、今度は意気消沈したような顔になって」

「ははは、顔に出ていましたか。これにはマリアナ海溝より深い理由があるのですよ」

やべ。顔に出ていたのか。

レリクさんと話しているとジュリエッタがやって来た。いつもはお嬢様らしい服装だが、白いシンプルなワンピースもよく似合う。

赤い髪を綺麗にストレートに伸ばし、黄色いリボンを巻いた美少女。白いワンピースにポシェットをたすき掛けしていて思わず見惚れてしまう。

「どうヴェル。似合うかな」

「いつもの服も似合うけど、シンプルな服も良く似合うし黄色いリボンもかわいいと思うよ」

「えへ。そっかな~。ありがとね」

照れ笑いをしながら嬉しそうな彼女を見ていると、こちらまで何だか嬉しくなる。10年後に期待が膨らむ。

外はまだ幾分寒いので、出された外套を羽織る。

「よし、準備が出来たわ。ヴェルのお金は財布を買うまでレリクに預かって貰らいましょう。その方が安全だわ」

「そうだね。レリクさん。お願いしても宜しいですか?」

「小額なら勿論お預かりしますよ」

「それではお願いします」

封筒にから小金貨を出してレリクさんに渡すと「はい。確かに小金貨3枚をお預かりします」と言ってから、革で出来た財布に仕舞ってコートの内ポケットに入れた。

「それじゃ、外に馬車が待っているわ。行きましょ」

手を引かれて外に出ると、ここに来ていた商人の馬車に一緒に乗せて貰う事になっていたようだ。

馬車に乗ろうとすると、既に商人が馬車に乗っていて、馬車に乗ると挨拶を交わした。その商人の名前はロディウスと名乗った。なんでも、この屋敷専属の商人だそうだ。

「ヴェル様。ロディウス商会では、スライムも扱っています。一度見せて貰ったらいかがですか?」

「取り扱いがあるなら是非見せて下さい」

「ご利用ありがとうございます。伯爵家のお知り合いと言うなら、本来は無料でと言いたいのですが、それでは坊ちゃんも気を遣うでしょう。仕入れ値でお分けいたします」

「商売なのにいいのですか?」

「ええ。今後の顔繋ぎとしたら安い物。今後も我が商会をご贔屓に」

「良かったじゃないのヴェル。この方が経営するロディウス商会と言うのは、この町を代表する大商会よ」

なるほど。流石は大商会の商人だ、随分ときっぷがいい。恰幅もいいがそれは関係ないか。今後スライムを使った製品が開発できればこの商会に任せてもいいな。

ロディウス商会に到着をすると、店構えを見る限りホームセンターに近い感じだ。もの凄くでかい。大商会と言う名称も頷ける。

店に入ると、所狭しと色々な物が売られていた。ジュリエッタはお目当ての物があるようなので、レリクさんと一緒に別行動になった。

ジュリエッタが俺から離れるなんて、めずらしい事もあるもんだ。

俺はロディウスさんと、スライム売り場へと向った。

スライム販売コーナーを見てみると、清流スライム、浄化スライム、バブルスライムが小さな檻に入れられて販売されていた。さながら、ペットショップのようだ。

清流スライムはペット用、浄化スライムはトイレ用、バブルスライムはゴミ処理用と説明文が書かれてある。大小に関わらず値段はどれも一緒だ。ゴミ処理専用のスライムがいたとは驚きだ。

そんな中、目に入ったのは清流スライムという水色の綺麗なスライムだった。名目は観賞用。つまりペットのような存在らしい。

「スライムをペットにする人もいるんですか?」

「ええ。このスライムは綺麗な水さえ与えていれば大人しいですし、扱いが非常に楽なんです。かわいいし、よくなつくので人気商品ですよ」

鑑定をしたいが、ここでスキルを使うわけにはいかない。そう思っていると、ロディウスさんが荷物を大事に抱えている事に気が付く。

「ロディウスさん。ひょっとしてその荷物は大切な物ではありませんか?僕はゆっくりスライムを見ているので置きに行っていただいても大丈夫ですよ」

「そんな。子供一人残してこの場を離れるなど」

「いいじゃないですか。この店は危険もなさそうですし、何よりここで僕が買っても売り上げにならないのなら僕が気を遣います」

「子供とは思えない心遣い。感服しました。それでは坊ちゃん。私は書類を置きに事務所によるので、お買い求めになるスライムを見ていて下さい。5分程度で戻って参ります。迷わないように必ずここに居て下さいね」

頭を下げて去っていくロディウスさんを見て、厄介払いをして申し訳ないと言う気持ちになる。すまん。

こっそり清流スライムを鑑定をしてみると【清流スライム 魔物ランクF 価値 小金貨2枚 特性、穏和な魔物で水さえ与えれば、一日経てば元の大きさに戻る。機嫌がいいとぴょんぴょんと跳ね、ペットとして飼育可能】と書いてある。おいおい、随分と都合の良い設定じゃないか。

これは買わないと言う選択肢は無い。ちなみにオレの書いた小説と違い鑑定結果は、鑑定したものの付近に表示される。ん~ファンタジー。その一言に尽きる。

周りに注意をしながら浄化スライム、バブルスライムを鑑定をしたが、やはり清流スライムを超えるスライムは見つからなかった。購入するスライムは決まった。

そうこうしていると、ロディウスさんが戻って来た。

俺が清流スライムに決めたと言うと、値段を半値にしてくれて、ペット用の籠まで付けてくれた。お友達価格ってやつかな。ありがたい話だ。

話を進めているとジュリエッタとレリクさんも戻って来た。

「ヴェル。希望の物は見つかったの?」

「うん。清流スライムっていう凄く綺麗なスライムを買うことにしたよ」

カウンターに乗せられたスライムを指差すと、ジュリエッタも気に入った様でスライムをつんつんしていた。

「かわいいわね。また屋敷に戻ったら、私も触ってもいい?」

「うん、いいよ」

これから、切り刻むなんて言えない雰囲気だ。

それからレリクさんに小金貨1枚を支払って貰う。

「それでは坊ちゃん。荷物になるので屋敷へとお届けしておきます」

「何から何までありがとうございます。このご恩は必ず」

この時、ジュリエッタも何か買ったようだが、ひ・み・つ・と言って教えてはくれなかった。女の子の物なのか?と思ったが、まだいくらなんでも早過ぎるので考えるのを止めた。

それから革財布を買う。何だか革財布ってのがおっさん臭いが、この世界のトレンドがそうならいいだろう。

財布の代金をレリクさんに貰い銀貨3枚を支払うと、店を出た。さあここからはデートの時間だ。
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