『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』

来夢

文字の大きさ
49 / 67
第1章 異世界転生

第49話

しおりを挟む
 馬車の扉が開き金髪を靡かせ白銀の鎧姿にマント姿。剣術指南役にやってきたのは、見目麗しい女性騎士だった。

謁見の時に女性騎士っていたっけか?

まあ、あの時は緊張と謁見の間の豪華さに圧倒されていたので、周りのことなんてほとんど目に入らなかったからな。

それにしても。これよこれ。ファンタジー世界の戦乙女のイメージどおり。これぞ求めていた異世界ロマン!!ほっほっほ。良きかな良きかなと見入っていると二人の目線が痛い。いや。しょうがないよね。カテゴリーが違うんだから。

「お初にお目に掛かります。陛下より剣術指南役として拝命された、元第8騎士団隊長のシャロン・ワイデルンと申します。王命を受け直ちに参りましたゆえ軍装のままなのはご容赦いただきたく」

シャロンと名乗る女騎士は恭しく挨拶した。

「はじめまして。ヴェルグラッドです。初めて女性騎士を拝見しましたが凄くかっこいいですね」

「上級悪魔を撃退した、英雄でいらしゃるヴェルグラッド殿にそう言って貰えるとは光栄です」

シャロンさんがそう言って微笑む。憧れの美女系女性騎士にそう言われてなんというか、心の底からゾクゾクするぞ。なんて言うの?ヒャッハー?

「市井の人達には悪魔の話は刺し違えた事になっていますし、倒したのはジュリエッタです。それに、9歳の子供に英雄なんて似つかわしくありません。ご容赦いただけますか?」

まあ嫁はいるけどな。2人も同時にだ。おい…見てるか矢沢…じゃなくて。

「そうでした。つい興奮してしまいました。申し訳ありません」

「分かっていただけて良かったです。ついでに、私はまだ子供で、シャロンさんはこれから私達の剣術の先生をしていただくのです。これからは敬語を止めてヴェルとお呼び下さい」

シャロンさんは、マイアの方に目をやった。王女に意見を聞きたいのだろう。

「姫様、ヴェルグラッド殿はこう申しておりますが、私はいかがしたら良いでしょうか?」

「ヴェルがそう言うならそれに従って下さい。私達にも敬語は使う必要はありません」

マイアがそう答えると「それは…」とシャロンさんがどうしたらいいか分からないという顔をする。

「私が良いといっているのですから、公の場以外では使う必要はありません」

「はい。では仰せのとおりに」

おいおい。してねーじゃないか。ま、徐々に慣れてもらおう。

まあね、お子様とは言え王族や貴族が相手なら敬語を使うのは当然なんだろうけどさ。そうなると堅苦しいよな。

「それでは、ここで立ち話も何ですから中に入りましょうか?」

「はい。お気遣いありがとうございます」

シャロンさんは、本当に今日は挨拶に来ただけのようで、荷物などは持っていなかった。

屋敷の中に入ると、シャロンさんはレリクさんを見て「おう。レリクではないか。息災であったか?」といきなり声を掛ける。

すると、レリクさんが顔を赤くして固まっている。ん?ん?う~ん?これはひょっとして?

「なに?レリク。シャロンさんと知り合いなの?」

ジュリエッタは二人を交互に見てにやにやしている。

「あ、はい。シャロンさん。ご無沙汰しております」

そう言えば、今思い出したけど、レリクさんは今日はウォーレスさんと王城に出向いていた筈じゃないか?ははあ。そういう事か。

どうやら、レリクさんの想い人と言うのはシャロンさんで、それを知っている陛下、もしくはウォーレスさん、あるいは二人が仕組んだんだな。

シャロンさんが鎧姿のままなのでということで玄関ホールで話す事になった。ソファーに腰掛けると早速ジュリエッタが

「レリク、それでシャロンさんとはどんな関係なの?」

と興味津々で聞くと「ええ。シャロン師匠は私の2コ、あぶっ!」と、シャロンさんに肘鉄をくらっていた。

「歳は言うな。こう見えても私は繊細なんだぞ」

怒る顔が少し怖い。繊細って意味知ってる?でもレリクさんは嬉しそうだ。ドM?

「レリクに代わって私が話をさせてもらいます。レリクとは王都の学園の旧友で王宮騎士になる条件がBランク冒険者と言う条件があるので、銀狼の牙という名でパーティを組んでいました。卒園後、条件をクリアするまで一緒に迷宮に潜っていました。目標であったBランク冒険者になると銀狼の牙は解散し、元々上級騎士家系であった私は王宮騎士に、下級騎士の称号を得たBランク冒険者のレリクは伯爵様の護衛へと就職したのです」

つまりはシャロンさんは、俺と同じだった下級貴族のご令嬢で、元々平民であったレリクさんは護衛の職についたという理解でいいのだろう。

学園で成績優秀者かつ冒険者でもBランク以上になると、下級騎士扱いになれるそうだが条件が厳しいとレリクさんは苦笑いをしていた。その厳しい条件を果たしたレリクさんは努力家なんだろう。

さらにAランク冒険者なら領地無いが上級騎士、つまり下級ではあるが貴族となり、学園に入る資格が得られるそう。

Sランク冒険者ともなれば国家試験のようなものもあり、合格をすれば領地は無いが上級貴族にあたる名誉伯爵を陞爵されると言う事だ。Sランク冒険者ともなれば国の宝とされ囲い込みをされるらしい。一度会って話をしてみたいな。

「なるほど、色々と勉強になりました。それで陛下は何と仰られていましたか?」

「新居に移り次第、邪魔をしない程度に住み込みでヴェル殿を中心に剣術の指南を、そして御者込みで護衛をしろと。今姫様に護衛についているものは、じいや様以外は他の業務に就かされるそうです」

元々、マイアの護衛の4人は交代勤務で屋敷の外で警備に当たってくれていた。上級騎士のシャロンさんとレリクさんが傍付きとなり、お役御免となったようだ。

「せっかく王宮騎士の団長にまで上り詰めたのに、私達のような子供の護衛なんてなんだか申し訳ない気持ちです」

「何を仰る。王族の姫様と英雄である伯爵様、伯爵家のご令嬢とお三方の護衛が出来るなど誉です。それに任が解かれるような事があれば、また騎士団長として戻れます。お気遣いは無用ですよ」

「そうですよヴェル。この人事は出世なのです」

「そうでしたか。勉強不足でもうしわけありません」

ま、日本で言うと宮内庁の要職って事で理解しておこう。

「それでは皆様、明日また荷物を纏めて参ります。これから宜しくお願いします」

「こちらこそ、明日から宜しくお願いします」

シャロンさんを見送ると、レリクさんもまた王城にウォーレスさんを迎えに行く時間になったようで、王城へと向かって行った。

「やるな。ジュリエッタ。レリクさん、喜んでいたじゃないか?」

「誰が見ても、レリクの想い人がシャロンさんって分かるからね」

「でもシャロンは、それに気付いていないようでしたが?」

「恋愛関係に疎そうでしたからね。レリクもまた棘の道を」

それから新しい新居の話しなどをしていると、ウォーレスさんが王都でのお勤めを果たして屋敷に戻ってきた。

「お父様。お帰りなさいませ」

「ああ。シャロンは来たか?」

「ええ。これってお父様が企んだのですか?」

「人聞きが悪いな。陛下と話し合って決めたのだ。そこに他意は無いと言いたい所だがそう言う事だ。察しろ」

やはり二人の策略だったらしい。いやいやそう言う事なら乗るしかないだろう。思春期の高校生みたいだ。いいね青春。オレは応援するぞ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...