『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』

来夢

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第1章 異世界転生

第48話

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 買い物を終えたので、風見鶏でじいやさんと合流して、お気に入りのから揚げを食べてから、総合ギルド会館の3階にある建築ギルドに向った。

「建築ギルドってどんな業務をしているんだい?」

「そうですね~。主な仕事内容としては屋敷の設計や土地管理、職人の斡旋といった感じです。後はインフラ関係の業務を職人を集めて依頼する感じと言ったところでしょうか」

不動産会社と工務店が一緒になったといった感じか?

総合ギルド会館に着くと、冒険者ギルドは閑散としていて『本当にこれでギルドとして機能しているのかよ』と疑問に思う。ギルド嬢が一人受け付けにいたが暇そうだ。期待していた雰囲気とは違い落胆する。

「いつもこの冒険者ギルドってあんな感じなのか?」

「ええ。貴族街って事もありますが、王都周辺には迷宮が学園内にしかありませんので、学園迷宮探索の無い日はこんなものなんですよ」

「町の冒険者ギルドに行けば沢山の依頼はあるわよ。荷物運びや商人の護衛、薬草集めに素材集め、ドブさらいに迷子探し、街道近くの低ランクの魔物を間引きするような依頼などなどは、貴族達はやりたがらないわね」

「そうですね。汚い、きつい、危険な依頼は誰でも嫌な仕事ですから」

3K職かよ!と、心の中でつっこむ。実際に依頼内容を聞いてみるとテンプレな依頼ばかりだが、冒険者なんて名ばかりで、なんでもや?でギルドとは人材派遣会社なんじゃないかと思ってしまう。

でもまあ、インフラなどを維持するには、いずれの依頼も町や村にはなくてはならない業務なのは確かだ。

「でもさ、それでよく貴族街の冒険者ギルドは職業として機能してるな~」

「王都の貴族ギルドでは、各領地の報告書を纏めたり決済をしたりするのが通常業務なんですよ。受け付けの奥の部屋では、所狭しと職員が動き回っていますよ」

「なるほどね」

案内板通りに通路を歩いて行くと、突き当たりを右に曲がると階段があった。目的の建築ギルドは3階なので階段を上がって行く。

3階に上がると、建築ギルドは銀行の支店のようになっていた。相談窓口のような場所が5箇所設けられていて、身形の良い貴族ぽいで席は全て埋まっている。

貴族の一人がマイアに気が付いたようだが何事も無かったように視線を外す。

『風見鶏の時も思ったけど、これはこれで不敬じゃないのか?ま、いちいち水飲み鳥のようにぺこぺこ頭を下げられるのも面倒だが』

チラッとマイアに目をやるがマイアはそれにはすっかり慣れているようでスタスタ歩いている。受付窓口に向うと、40代前半の男性職員が営業スマイルで一礼をする。

「ヴェルグラッド様ですね。お話は王城の方から伺っております。応接室で対応させていただきますので、ご足労ですが私に付いてきて下さい」

「あ、はい。宜しくお願い致します」

なぜ俺の名?と思っていると、ギルド職員がカウンターから出てきてそのままカウンター横の通路を通って奥の応接室向かった。

応接室の前に着くと男性職員はコンコンとドアノッカーを叩く。

「王室からお話がありました王族の方々が、お見えになりました」

職員が声を掛けると、扉の奥から「入って貰いなさい」と、ハスキーボイスで返事が返って来た。

扉が開かれると、部屋は応接室と言うだけに、ソファーや机があるだけのシンプルな造りになっていて、左目には黒縁のモノクルを掛けた、恰幅の良い男性が席を立ち待っていた。

「この度は、こような場所まで足を運ばていただき恐縮でございます。申し遅れましたが、私はこの建築ギルド長のレンザ・メリックスと申します。以後お見知り置き下さい」

ギルド長は胸に手をやりさらりと一礼する。

事前に連絡がいっているらしく、じいやさんから名前だけの簡単な紹介があり、促されるままソファーに腰を下ろす。

「新しく屋敷を建てるそうですが、大きさ、間取りなどに、ご希望はございますか?参考にこちらで今仮住まいされる屋敷の図面を用意致しました」

ギルド長はA2判程度のテンプレ図面をサンプルとして机に広げ、メモと万年筆を用意していた。

今日買い物をしている最中に色々と話合いをした結果、屋敷の大きさは仮住まいの屋敷と同等で風呂は檜風呂、出来れば地下に鍛錬場を作りたいと希望した。

「なるほど。地下室は、浸水のリスクが伴いますので、下水道に繋げることになりますが宜しいでしょうか?もちろん下水の臭いは気にはならないように施工をさせていただきますが」

「是非お願いします」

それから、さらに詳しく話を詰め、内装や床材の色、靴を履き替える前室、各部屋の大きさを決めた。

それから、外溝の話になったので、庭にはガゼボを作ってもらう事にした。広い庭で気の合う連中とお茶会やバーベキューをしたい。

庭木の設置場所、厩舎、小屋、裏口の場所など、結構無茶を言ったけど全てのこちらの意見は通る。大きさが大きさだけに、施工期間は半年ほど時間が掛かるそうだ。

「窓や扉のデザインなどは1週間以内に直接商店に見に行って選びます」

「分かりました。決まり次第商店を通してで結構なので、ギルドに連絡いただけるようお願いします」

打ち合わせが終ると、陛下が剣術の指南役を派遣してくれる事になっていたので会館を出て屋敷に戻る。

約束の時間まで1時間ほどあったので、ジュリエッタは家族や友人に手紙を書くと執務室に行き、じいやさんも陛下宛の報告書を作ると言う事で、オレはマイアがどんな魔法が使えるか試す事になった。

部屋に魔法関係が書いてある本を手にすると、玄関ホールで待つマイアと合流する。

それにしても、ジュリエッタとの付き合いは長いのに友人がいたとは…自分だけがぼっちだったと思うと少し寂しい。

庭に出ると、生活魔法を試すがこれは俺とジュリエッタ同様に使えなかった。

「残念です。期待させてごめんなさい」

「いいって。俺たちも使えないのだから何らかの制限が掛かっているんじゃないかな?それじゃ、聖属性魔法を試してみようか?ひょっとしたらジュリエッタと同じように聖属性魔法が使えるかもしれないからさ」

「分かりました。やってみます」

マイアは神妙な面持ちで「ヒール」と詠唱すると手のひらに緑色の魔法陣が一瞬顕現して霧散した。

「ま、まさかの聖属性持ちか!」

「ええ。ジュリエッタと同じ聖属性ですわ」

マイアは嬉しそうにすらすけのようにぴょんぴょんと飛び跳ねた。かわいい。まるで、いや、やめておこう。

そうこうしているとジュリエッタが手紙を書き終えて外にやって来た。

「マイアの魔法適性どうだった?」

「それがですね。ジュリエッタと同じ聖属性に適性がありました」

「被ったけど問題ないんじゃない。もし私達が冒険者になってパーティを組んだら凄い事になりそうね」

「ええ。今から非常に楽しみですわ」

とりあえず、攻撃魔法は何らかの封印があるっぽい。いざ戦いになったら正直きついかもと思っていると、黒塗りの馬車が屋敷の前で止まる。どうやら陛下が派遣した剣術指南役が到着したみたいだ。
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