『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』

来夢

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第1章 異世界転生

第51話

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 引越しもひと段落ついたので、予約をしていた血液型検査の為王都国立治療所へ向かった。鍛錬中に怪我をしても速やかに治療ができるようにとの事で冒険者登録する際に血液型の申告は必須となっている。

それにしても、輸血が必要になるほどの出血量の怪我って…どれだけ過酷な鍛錬をさせる気だ?実際は依頼中の大怪我に備えているんだと思うけど。

世界の医療体制の事について聞いてみると、切創や骨折などは治癒魔法やポーションで治るので入院する必要は無いが、骨折の時にポーションを使う場合は正しく接いでからでないと骨が曲がってくっついてしまうので、冒険者ギルドの登録時に一般的な緊急治療に関しては簡単な講義があるようだ。

入院はどう言った病状の患者がするのかを聞いて見ると、失血、疾病、精神疾患、四肢を失った人のリハビリなどが一般的だそうだ。

馬車が走り出して、しばらくすると大きな教会が見えて来た。金を掛け過ぎではないか?と思うぐらい立派な建物だ。

白とベージュをベースとした外壁の上部には釣鐘が見える。朝6時~夜21時の1時間おきに鳴る鐘はここで鳴らすようだ。建物の上部のガラスはステンドグラスが使われていて、なんちゃら大聖堂と言ってもいいだろう。知らない人が見たら王宮だと言われても信用するんじゃないか。

「儲かってんだな~」と思わず口に出てしまったけど、二人は苦笑いをしながら沈黙。図星のようだ。

「後から観光ついでに神様にお祈りに行こうか?」

と言うとあっさりと却下された。王族となるとアポ無しでは色々と面倒な事になるんだってさ。

教会を通り過ぎると、じいさんが入院していたと同じような治療院に到着した。貴族専用の治療院なので作りもさほど変わりがない。

治療院に入って受付を済ませると、診療室に案内されて採血が始まる。

「以前に採血を行った事はございませんか?」

白い修道服を着た、若くかわいいシスターにそう尋ねられた。

「いえ、初めてです。優しくしてくださいね」まるで…いや止めておこう。婚約者二人のジト目が痛い。

「少しチクっとしますよ。気分が悪くなったら言って下さい」

全員が採血を終えたが、結果が出るまで3日掛かるそうだ。後日じいやさんが聞きに結果を聞きに来てくれる事になった。

帰りの馬車の中で、二人にシスターにちょっかいをかけるなと怒られた。洒落と軽口ぐらいでめくじらを立てるのはやめて欲しい。

ちなみに血液型の結果は オレとジュリエッタが火。マイアが水であった。A、B、AB、Oでは無く火、水、風、土と分類されているようだ。

屋敷に戻るとシャロンさんの引越しの手伝いをする。とは言っても、王宮から貸し出されたアイテムバッグもあるし女性用の下着なんかもあるので、伝える事などほぼほぼ無かったのだが、アイテムバッグからサンドバックが出てきた時は流石にドン引きしたぞ。

シャロンさんを従者用の部屋に案内をする。

「ここが、シャロンさんの部屋となります」

「本当にこのような大きく綺麗な部屋を使っていいのか?」と、上級騎士とは思えない言葉が返って来た。

「えっ!一体今までどんな所に住んでいたのですか?」

「ああ。王宮の一角にある女子寮だ。あそこはこの部屋よりも狭く壁が薄いから会話もまる聞こえでね」

「そうなんですね。王宮騎士ってそんなに扱いが悪いんです?」

言葉に詰まったシャロンさんが苦笑いをする。

本来は王宮騎士ともなれば寮を出て居を構えるのだが、料理や洗濯が苦手なシャロンさんは無理に居座っていたんだって。ははは。こりゃレリクさんもいろんな意味で前途多難だな。

新居での食事は充分満足のいくものだった。流石王家御用達。それからお風呂に入ってから寝室に入ると、火照った体を冷ます為にバルコニーに出て二つの月を眺めた。

すると婚約者の二人がやってきた。

「どう?新居の感想は?」

「いい感じだよ。まだ子供なのに一国一城の主になろうとはね。出来すぎて不安になるけどね」

「何を言っているのですか?まだ始まったばかりですよ。これからの過ごし方は私たち次第です」

「そうだね。これから宜しく」

「「こちらこそ宜しくお願いします」」2人はにっこり微笑むとベッドに入りいつものように魔法の鍛錬をして眠った。


□ ■ □


引越ししてから数日が経ち色々と落ち着いたので、今日から本格的に剣術の稽古に入る。

「まずは、この庭をランニングしよう。あそこの角からあちらの角までは100メートルくらいか。その区間はダッシュでいこうか」

「シャロンさん、それ本気で言っていますか?女子二人には結構きついのでは?」

この屋敷の周回は約400mある。いくら今まで鍛えていたとはいえ、婚約者の二人も一緒なのでこれは少々やりすぎだ。16歳の体が出来上がった状態ならともかく9歳の歩幅ではきつい。

シャロンさんは少し考えた後に「確かにそうだな。じゃあこうしよう。疲れたら休憩しても構わない。毎日、何周出来るかを記録として残そうか」と、少し妥協してくれた。

「そう言う事なら」

「それと、訓練中の返事は”了解”に統一しましょう。その方が訓練ぽくて引き締められますから」

「いいですね。それではそうしましょう。みんなそれじゃ”イチ、ニ”と声を出してランニングを始めるぞ!」

「「「了解」」」

俺は4回の休憩を挟みながら何とか10周した。婚約者の二人は7周だった。疲れきったオレ達とは違いシャロンさんとレリクさんは15周と、普段から防具も付けて訓練をしているだけに顔に余裕がある。早く二人に追いつきたい。

それから、女児二人は魔法専門職なので筋トレは免除になった。

「ヴェル、がんばってね」

そんな励ましを受けつつ、オレ、シャロンさん、レリクさんの三人は腕立て伏せ100回を3セット、スクワット30回を3セット、腹筋100回を3セットをこなす。

二人は余裕だが俺にはキツい。終わった後に体育座りをすると、足の筋肉がプルプルしている。

『どこのブートキャンプだよ!』

それから軽くストレッチの後、お昼ごはんを食べて午後の練習に入る。

「3人の防具は、王室から支給される。実戦練習を始めるそれまでは、重しをつけた剣での素振りといこうか」

「了解!」

そんなわけで、重い剣でひたすら素振りをする。とはいっても上段、中段、下段とバリエーションは豊富だ。3歳から負荷をかけてトレーニングをしていて良かった。だが筋肉の筋が切れる感覚が実感できるのがやばい。

その間何度もジュリエッタにヒールで回復して貰い、筋肉の張はあるが痛は無かった事に。夕方になるとやっと鍛錬が終る。「クタクタだ…」手を見るとあれだけ毎日剣を振ったのに手が豆だらけだ。

ヒールを掛けてもらうと豆も癒える。有難いのだがこれでいいのか?バ〇ボンのパパに聞いてみたい。

「ヴェル殿お疲れだったな。兵士でも音を上げる訓練に付いて来るとはな。それに重しを付けた剣をあそこまで素振りが出来るとは思った以上に凄いよ。それに足運びと体の軸がブレがないのはどう言う事だ?熟練の兵士でもよほど鍛錬をしていなければこうはいかないのだが」

「3歳から自主的に鍛錬をしていましたからね。でもキツイすっ!」

「3歳からだと?よく親が許したもんだ。だが上級悪魔を無傷で仕留めたのも納得だよ」

「仕留めたのはジュリエッタです。5歳になるまで、自室で親に隠れて鍛錬をしましたから、両親は3歳からとは知りませんよ」

「まぁ、ヴェル殿には常識が通じないと言う事にしておこう」

『それはあんまりじゃないか!』と心の中で抗議する。

実際は前世でも剣道もしていたし、体幹訓練もしてたからな。しかしながら体が子供だからきついちゃきつい。それにしても兵士の訓練内容と同じだとはな。これからどうなるんだ?不安しかない。

湯船に入って汗を流す。この世界にも風呂があって良かったよ。

ゆっくりと風呂に入ってから髪を乾かすと、シャロンさんがマッサージをしてくれる事になった。筋肉痛の痛みは治癒魔法では消えるが張りなどは戻らない。マッサージが始まると当然のように婚約者二人から物言いがつく。

「マッサージなら私達がやります。やり方を教えて下さい」

「そうですわね。それぐらいしないと婚約者として失格です」

と二人が無い力瘤を作り熱望する。いや、そこは熟練者に任せて欲しい。

「そうですか。それではお教えしますのでやって見てください」

シャロンさんは苦笑いをしながら、二人にマッサージの仕方を教えた。背中に乗られて踏まれるがハッキリ言って物足りない。二人には悪いがマッサージまでが訓練なんだから明日からはシャロンさんにやって欲しいな。こう、ゴリッゴリッとね。

いろいろ疲れたのでご飯を食べたら、早めに寝るとしよう。
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