『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』

来夢

文字の大きさ
53 / 67
第1章 異世界転生

第53話

しおりを挟む
 着工から半年、新しい屋敷が出来上がった。外壁が白い漆喰で塗られた2階建ての屋敷は、仮住まいの屋敷より若干大きく作られてる。

内装も、実際に見に行って指示を出したり、何度も打ち合わせを重ねていたので中のことは概ね把握済みだ。匠が現れて『なんということでしょう!』とびっくりさせるようなギミックなど何もない。まあ新築でそれやったらただの契約違反だからな。

今の屋敷との1番の違いは地下室鍛錬場だ、雨が降っても剣術の鍛錬が出来るようにと作ったものの、今は後悔している。雨の日ぐらい休みが欲しい。そんな日は惰眠をむさぼりたいだろう?

ま、朝鍛錬は毎朝休まず行っていたし、既に鍛錬は、幼い頃からのルーティーンとなっていたので今更弱音を吐くつもりもない。守るべきものも多いしね。

そんな訳で、今日も整列から始まりシャロンさんの朝礼からスタートする。

「ヴェル殿も王城の兵士と遜色ない体力が付いてきたようだね」

「イエッサー!」とちょい悪乗り。

お?やっと基礎訓練が終わったか?と顔を緩めると、シャロンさんが悪そうな顔をして話を続ける。

「城の兵士は1年の訓練が終わると、鎧を着て同じ訓練をするんだ。ヴェル殿はまだ1年経ってはいないが充分ついてこられると思ってる。ただ、子供騎士なんていないから鎧が無くてね。そんなわけでお二方ともご協力をお願いできませんか?」

「もちろん引き受けます。ふふふ。なんなら抱っこでも」

「それいいわね。その意見に賛成よ」

「アホか!!訓練だから!」と思わず声に出していた。

と、まぁこんな具合で、マイアとジュリエッタを交代でおんぶしながら周回をして、腕立ての時も二人が交替で乗っていた。

○仙人流かよ!!キミたちは知らないだろうけどね。

剣の鍛錬というと、今では何回かに一回はシャロンさんから1本取れるようになった。我ながら順調だ。

居合い抜きも鞘から剣を抜くスピードが素のままでもかなり速くなった。これだけ短期間で自覚できるぐらい成長したのは驚きだ。木剣を鞘に納める動作は未だに慣れないが…

ちなみに、ジュリエッタとマイアも、レイビアで素振りと打ち込み稽古を中心に剣術を鍛えている。二人は後衛だし、その後衛の二人を守るのが専属騎士の役割だ。

なので、鍛える必要は無いのでは?と言うと、

「自分の身ぐらい自分で守るわよ。後方から魔物に襲われる可能性もあるしね」

「そうですよ。ずっと後衛にいて守られているだけでは、ヴェルの負担になりますからね」

と、やる気を見せていた。ま、やる気あるのは逆よりは良いだろう。マルチプレーヤー化は助かる。

それからも、3ヶ月間にみっちりと体を鍛えると、おれはすっか細マッチョだ。しかし。所詮9歳なので見た目はサッカー少年程度だけどね。

そんな日常の中、家族や王族達を招待して新築記念パーティーとジュリエッタとマイアの誕生会を兼ねた宴を催した。

ジュリエッタとマイアの誕生日は15日しか差が無かったので1回でまとめてやることになった。

ジュリエッタは11歳となり、出会った頃よりもかなり身長が伸びていた。

女の子の成長が早いのはどこも変わらないようでオレよりも身長が5センチほど高い。マイアでも身長はオレと同じだ。ヒールを履かれると更に身長差が開くんだけどな。とは言えオレの身長は今148センチ。もう直ぐ10歳なら、まぁまぁ大きいんじゃないかな。

新居には実家から母もやってきてくれた。お腹も目立つようになってきたけど、今はもっと動いた方がいいと言われて、それならばと一緒に来たそうだ。

宴が始まると、オレは二人に誕生日プレゼントを渡す。今回オレが用意したプレゼントは閃光の魔石が嵌めてあるペンダントだった。ま、数回しか使えないけど御守り代わりだね。

「二人とも誕生日おめでとう。オレからのプレゼントはこれ」

二人はラッピングを外して中身を見ると大喜び。オレは二人の首にネックレスを掛けた。

「なんだか幸せを感じる。ヴェルありがとう」

「わたくしもプレゼントを貰ってこんなに嬉しいのは初めてです。ヴェルありがとうございます」

「良かった。で、そのペンダントには閃光の術式を施した魔石が嵌められているからいざとなったら、君達を守ってくれるはずだよ」

「ありがとう。魔道具でも私達を守ってくれるのね」

「当然だろ?僕は君達の専属騎士なんだからさ」

閃光の魔石は自作した。半年前に上級悪魔に体を押さえられて動けなかったことがあったのでその対策として取り組んだものだ。

食事が始まると、久しぶりの家族との会話に花を咲かせた。

「男の子かしら?女の子かしら?ヴェルはどっちがいいかしら?」

「どっちでも全力で可愛がりますよ。そういえば、着の身着のまま家を出てしまったので、生まれたら一度家の屋敷に顔を出します。テーゼ達にもきちんとした形で報告したいですし」

「そういえば、テーゼで思い出したけど、来月に町の教会でデリックとやっと結婚するのよ。近くの村に家を建てて通うから、寂しくはないけどね」

「そっか~。二人ともついに結婚か」

「ええ。ヴェルに先を越されたと焦っていたわね」

「僕は結婚したわけじゃありませんよ。まだ婚約です」

「そこは、否定して欲しくないわね」

「そうですよ。婚約だけで充分ですが、すでにこうしていつも一緒に行動しているんです。結婚と言ってもいいでしょう」

「相変わらずヴェル君は女心がいまいち分かっていないようだね」

いいわけないだろう?女心とか関係なくそこんとこごっちゃにしたら制度そのものの前提が崩れるぜ。わかるか?否定じゃなくて事実だ。
2人とも才媛じゃなかったのかよ。この間から思っていたけど、この手の話題になると途端にポンコツになるな。

「それと、ヴェルも大きくなったから、服は着られないでしょうから納戸にいれておきますね。部屋はそのままにしてあるし、箪笥の変わりに3人で寝られるようにベッドを入れておきましょう。そんなわけで赤ちゃんが生まれたらまた連絡するわね」

「義母様はさすがです。女心が分かっていらっしゃいますね」

「でしょ?」

「ちょっと~!余計な事はよっていてててっ。いや、いいかげんお尻を抓るのはやめて。人前で異性の尻を触るなんてはしたないよ。お母様、それはやめてくださいね」

「「えー!必ず実行をしてください!」」

「先生は、本当にみんなから愛されているのですね」

「そうよ。でもヴェルと違って、お兄様達は自国民みんなから愛されるようにがんばらなくてはなりませんから大変ですよね」

「そうだね。がんばるよ」

「がんばって下さいね」

二人の王子は、マイアの専属の騎士となってから、ちょいちょい算術の勉強をしにくるようになった。

テストで負けた事で悔しい思いをしているのかと思ったけど、効果的な勉強の仕方を求めて年下に教えを乞うなんて意外と柔軟なんだなと感心したものだ。

だけど年下のオレの事を先生と呼ぶのは止めて欲しい。何度言っても聞いてくれないんだけど。

そんな2人の誕生日から3ヵ月。鍛錬は毎日休まず行っていた。基礎練習も終盤にさしかかってきたので乗馬の訓練もする事になった。

ジュリエッタもマイアも王侯貴族の嗜みで既に馬に乗れる。騎士希望であるオレだけが乗れないのは非常にマズい。と言うか情けない。

王城にある、練習場に着くと、ジュリエッタとマイアに乗馬を習う。補助はレリクさんだ。

厩舎からマイアに連れられて白馬が出てきた。

「この馬はエレクシール号と言って私の馬です。とても賢い子なので扱いも楽でしょう」

マイアはそう言うと馬の頭を撫でる。

「えー、それでは、まず馬に乗ってみましょうか?鐙に足を掛けてください」

頷いて鐙に足をかけ、レリクさんに支えて貰って騎乗する。初めて馬に乗ったがトラック並に視点が高い。いや、本当に結構高い。

「それでは、操馬の説明します。まずは馬に乗る姿勢ですが、このように背筋を伸ばして乗るのが基本です。体勢が悪いと馬に負担がいきます。馬を労る意味でも姿勢は正しくです」

そう言われて姿勢を正す。

「それでは馬を歩かせてみましょうか。鐙を軽く一回蹴るとゆっくりと馬が歩き出します」

そう言われたので軽く一回蹴る。すると馬はゆっくりと歩き出した。

「いい感じです。止まる時は手綱を引き、曲がる時は曲がりたい時方向にゆっくりと手綱を引きます。このままこの練習場を一周してみましょう」

そう言われて軽く頷くと、結構揺れるし長時間跨るとケツが痛くなりそうだ。

「これってさ、長時間はきつくないですか?」

「ええ。下手をするとお尻の皮が剥がれます」

「あっそう」

軽くそう返事をしたが聞き捨てなら無い。ヒールで治るのかな。まあ擦り傷だったら外傷だからいけそうだ。

それから何週か練習場を回ったけど、余分な所に力が入ったのか尻よりも足に限界が来ていた。訓練をしていたのに?なにそれ情けない。使う筋肉が違うのか?

それからしばらく乗馬の練習と剣の鍛錬を続けていると、2ヶ月後には馬は自由に操れるようになったし、漸く基礎訓練も終わり本格的に模擬戦へと移っていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...