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第1章 異世界転生
第63話
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夜になると、後は寝るだけという状況になってからあらためて3人だけで執務室に集まる。ジュリエッタの記憶を共有し、今後どう行動していくかを話し合うためだ。
「ジュリエッタ。神界で前世のことを見せてもらったけどひとつ確認したい。具体的に悪魔が操る魔物はどこで現れるんだ?」
「これは、この国が亡国になってから詳しく知った話なんだけど、最初に北の迷宮都市バーレンが魔の手に落ちたの。そこを足掛かりに王都を目指す魔物がバーレン近くの森に集結、となるのだけどさっき見てもらったけどこれは囮。王都を守る為に各領地から軍事的資源が集め始めたのを見計らったように時間差で各地の迷宮から次々と魔物が現れて、対応できない都市や町が陥とされ続けたのよ」
ジュリエッタは当時の事を思い出したのか沈痛な表情だ。
「でも、でもですよ?どの領地にも兵士や冒険者が必ずいる筈です。迷宮が近くにある都市なら尚更です。なぜそんなにあっさりと領地を攻め滅ぼされたのでしょうか?」
「数の暴力と言ったところかしら。悪魔に誘導された魔物が大量に迷宮から出てきて、一気に町に流れ込むのよ。どんなにランクの高い冒険者や熟練の兵士でも、突然大量の魔物が町に現れて、住民達に向かって無差別に攻撃するから兵士やランクが高い冒険者がいたとしても対処できることは限られているわ。領主やギルドも対応する前に統制が取れなくなった。とっいった感じかしら」
「なるほど。統制が取れなくなれば成す術がない。頭の痛い問題ですね」
確かに日常的な生活の中でいきなり大量の魔物が襲ってきたらできることは限られている。兵士は指揮官の指示の元で戦略を立てて戦う団体戦には向いているが、言うなれば対人戦特化と言えるだろう。魔物相手となると冒険者パーティの方が頼りになりそうだ。
しかも、兵士は上司の命令を受けてから、冒険者はギルドの要請を受けて依頼と言う形で動くと言うのが一般的だ。この辺りは日本と一緒で、責任の問題とか契約という概念がある限り緊急時だからと言って自由に振る舞っていいわけじゃない。この辺りの緊急対策は陛下に判断や法改正を進言する必要がありそうだ。
「だから、迷宮コアを破壊して迷宮としての機能を止めたのか」
「ええ。迷宮はたとえコアが破壊されたとしても、数年もすればまた竜脈からの魔力さえ途絶えていなければ新しいコアが作られるのよ。とは言ってもコアの破壊についてはかなり反発があったわ。学園や学校で教育を受けていない住民や冒険者達にとって魔石は重要な生活基盤だから。そして国と冒険者ギルドが話し合った結果、国が生活の補助をする事で協力協定を結んだというわけ」
なるほど。迷宮コアを破壊しても数年経てば復活するのか。ま、そうじゃなければ石油が無く、魔石を資源としているこの世界では生きていけないのだろう。
「さっきも言っていたけど、地下迷宮以外にも違う種類の迷宮があるんだ?知らなかったよ」
「他国に数は少ないけど遺跡や塔の迷宮があるわ。魔素の濃い竜脈付近にしか存在はしないけど」
「でもさ、迷宮の入り口には結界が張ってあるんだろ?スタンピードが起こったとしても迷宮から出られないんじゃ?」
「悪魔がその結界石を壊すのよ。悪魔は魔物と違って結界が効かないのよ。迷宮コアを破壊したとしても数年後には新しい迷宮が出来るからいたちごっこっていうか、こちらだけが消耗していく感じね」
「どういった対策が有効だろう。確か王都の陥落はワイバーン部隊が空中から攻撃を仕掛けてきたんだったね」
「うん。悪魔も空を飛べるしね」
「空が飛べる種族とかはいないの?ハーピー的な?それか飛べる魔物を操れる技能とか?」
ラノベやゲームによる知識では対空戦が出来る魔物をテイマーが操る、あるいは自身が空を飛べると言ったなんらかの手段があったわけだがここではどうだろう?
「獣王国には少数だけどワイバーンを調教した部隊があったはず。でも対魔物戦を想定しているのではなく偵察や見回り程度の役割しかないから主戦力ではなかったわね。現世もそれは変わらないと思うわ」
テイマーじゃなくて調教師か。平和な世の中が続くこの世界じゃ数が少ないのも仕方が無い。魔法で飛べる様になればいいのだが…
「そう言えば、過去の文献に、なんでもSランク迷宮の最深部近くの森には翼を持つ馬がいるそうです。御伽噺かどうか、見た事がないので確証はないですが」
「ペガサスか?もしその話が本当なら乗れるのかな?」
「文献には勇者は翼を持つ馬に乗り、魔王の城に向かったと書いてありました」
「英雄譚とか御伽噺か~。ダメ元で探すのもありかもしれないな」
「ジュリエッタの転生前の記憶にはその辺の情報はないのですか?」
「ヴェルと一緒で夢と勘違いしそうな程度の断片的な記憶は残っていると言えば残っているけど…その中にも残念ながらSランク迷宮の事については記憶には残っていないし思い出せないかな。何せ私達がBランクに上がって次はAランクだと思っていたら魔王軍が攻めて来たからね」
もし仮にペガサスを手に入れたとしても、それでは俺達だけが空で戦う事になってしまう。それでは悪魔や空を飛べる魔物に分散されてしまえば数的に問題あり話にならない。飛行機がのような物が、あればと思うがこの世界には魔法があり科学と言う概念がほぼ無い。
だから重力魔法はどんなものかは分かっていても、地上に引っ張られる引力が関係しているなんて理解は出来ないだろうな。
その点、俺は日本での教育である程度知識はある。それに勇者のスキルである重力魔法が使えるのなら空が飛べる魔法の構築の研究も秘密裏に研究してみるのもありかも知れない。
「兎も角だ、時間が許す限りやれる事だけでもやらなくちゃな。取りあえず出来る事といえば防衛を強化する事からか…それならば、王城の周りにもう一つ高い壁を設置して結界石を設置して貰うってのはどうかな?窓には格子を付け悪魔が王城に入らぬように対策をする。王都の外壁や町の高い場所にも結界石を置いて、もしもの時の為に下水道に逃げれるように格子を付けて結界石をいたる所に設ける。食料やなんかを置く地下倉庫を作れば守れる命も多いんじゃないかな?」
「名案ですけど、その結界石が足りません。国中に結界石を作るには結界の魔石が大量に必要ですから」
「その結界石はどこから手に入れるんだい?」
「Aランク迷宮の30層以降に現れるレイスという悪霊の魔物からドロップ出来ます。魔物ランクはAランクと手強く、冒険者から高額で国が買い取っているのが現状なのです」
「そっか。僕達が率先して、そのレイスを狩りまくるとしようか?そうすれば、結界石は大量に集まるだろう?」
「それはそうですけどレイスは魔物ランクがAランクですよ?今の私達の力では」
「これから旅にも出るし、その前にシャロンさんの言うとおり、迷宮でレベルを上げさえすればなんとかなるんじゃないか?」
「そうよ。私達は神様から与えられた特別な力、聖属性魔法が使えるわ。相性がいいからきっとなんとかなるわよ。でもその問題をクリアしたとして、スタンピードはどう押さえるの?迷宮コアを破壊するのも許可がいるだろうし、世界中の迷宮に張ってある結界石を四六時中守り続けるなんて無理じゃない?」
「それなら、こうしたらどうだ?結界石を檻に入れて魔法を防御する何かに入れておくと言うのは、悪魔しか壊せないならそれで何とかなると思うんだが?」
「魔封じの魔道具ならあるけど、結界自体がそれじゃ効き目が無効になるわね」
「そうなるとオリハルコンが必要になりますわね」
まぁ、言わずと知れず前世でも有名な伝説の鉱石だ。今までの話の中でもちょいちょい出てきたが、本当に存在しているとは…
「ええ。超希少魔鉱石です。Sランク迷宮の最深部の魔物からごく稀にドロップ出来るそうです。A、Sランクの素材は迷宮の最深部でしか手に入れられないですし」
「また。Sランク迷宮とはね?Sランク冒険者やSランクパーティもいるんだろ?その人達に頼んじゃだめなのか?」
「Sランク迷宮の最深部に到達出来る冒険者は、現在この世界に3人しかいないわ。しかも全員がソロ。それにもしオリハルコンが手に入れられたとしても、アダマンタイトや緋緋色金はともかくとして、オリハルコンに関して言えば、加工方法すら現代では失われてしまっているのよ。だから、Sランク冒険者のその3人も敢えてリスクを省みず踏破しようなど考えていないと聞いているわ」
「そのとおりです。Sランク冒険者ともなりますと、国のおかかえとなっています。Sランク迷宮の最深部は100層以上と聞きます。転移石碑があるとはいえ、Sランク冒険者を月単位で迷宮に潜るなどあり得ないと言う事です。お金にも不自由はしていないでしょうし」
『それは、もう冒険者じゃないんじゃないか?要は未知のものに手を出して国家運営に影響のある変化があったら困るから手を出すなってことだろ?』
「そりゃまいったな~そこまでの希少金属なら諦めるしかないじゃないか。この国にもそのSランク冒険者を囲っているのかい?」
「残念ながらいません……この国にはAランク冒険者は現役で30名8パーティほどいますが、そもそもSランク迷宮がこの国にはありません。なので、この200年ほどSランク冒険者はこの国には不在なのです」
「転生前はそのSランク冒険者の3人はどうしてた?」
「思い出したくも無いけどまぁいいわ。ヴェルと旅をしていて会った事のあるSランク冒険者は、漏れなく飼い犬のように飼いならされていて中年太り。分かるでしょ?人生守りに入るとそうなる事を…」
「あちゃ~。怠惰だなまったく。冒険者ランクもギルドカードの更新とか有効期限を決めないと平和な世の中じゃ、よほどの戦闘狂か向上心が無い限りそうなるか」
苦い顔をしてそう言うとマイアも苦笑いする。
「私が他国に囲われているSランク冒険者に、そのような意見を申し入れるわけには参りませんし。でも上級悪魔がヴェルを殺しに来たのは、他国の要人もあの場にいたので知っていると思います。歴史は変わっていますから、ひょっとしてそのSランク冒険者もメタボリックな感じじゃなくなっているかも知れません」
「そう願いたいものだよ」
「だからと言って、全てを他人に期待するのはどうかと思うわ。それなら魔王が復活する前に、私達がSランク迷宮に挑戦するのもありかもね」
「そうだな。世界を破滅から救う為ならやるしかないよな」
ここまで来たら出来る事を出来るだけやるしかない。Sランク冒険者を目指しながら、オリハルコンを手に入れ、出来たらペガサスも手に入れたい。オレ達三人はそう目標を立てた。
あくる日に登城し、陛下に昨日話合った事を全て伝えた。王城の防壁の強化、鉄格子を窓の全てにする、下水道の改良と言うのは合意したが、迷宮コアの破壊についてとマイアが旅をするのは陛下が難色を示した。やはり王女を他国にお忍びでって言う事に引っ掛かるのだろう。
ま、世界の命運が掛かっているのだ。必死に説得して最後は許してくれたのだが渋々だった。
迷宮コアの件は他国との相談の上、決めると言う事だった。
そこから日程の調整に入る。まずは、竜車の改造について馬車職人に連絡をつけて貰った。改造には2週間掛かるそうだ。竜馬は手配してくれる。
その次に解決しなくてはならないのは学園にある迷宮についてだ。学園に迷宮の事を問い合わせて貰うと3日後から1週間特別使用許可が出た。さすがは陛下の一声だ。
空中戦に備えるためのワイバーンの調教師を増やすって話はこの先、旅に出て獣王国と直接交渉する事になった。どのように魔物を調教しているのかが少し楽しみだ。
学園迷宮に行く為の、防具は可能な限り揃えてくれるらしい。それから採寸をしたら早速注文してくれた。2日後には出来上がるそうだ。至れり尽くせりと言ったところである。
なので、早速ギルドプレートを発行しにギルドに行かなければいけなくなった。12歳からしか発行して貰えないのでこちらも裏口からである。
もはやここまでくると、陛下そのものがチートアイテムと言ってもいいんじゃないか?
「ジュリエッタ。神界で前世のことを見せてもらったけどひとつ確認したい。具体的に悪魔が操る魔物はどこで現れるんだ?」
「これは、この国が亡国になってから詳しく知った話なんだけど、最初に北の迷宮都市バーレンが魔の手に落ちたの。そこを足掛かりに王都を目指す魔物がバーレン近くの森に集結、となるのだけどさっき見てもらったけどこれは囮。王都を守る為に各領地から軍事的資源が集め始めたのを見計らったように時間差で各地の迷宮から次々と魔物が現れて、対応できない都市や町が陥とされ続けたのよ」
ジュリエッタは当時の事を思い出したのか沈痛な表情だ。
「でも、でもですよ?どの領地にも兵士や冒険者が必ずいる筈です。迷宮が近くにある都市なら尚更です。なぜそんなにあっさりと領地を攻め滅ぼされたのでしょうか?」
「数の暴力と言ったところかしら。悪魔に誘導された魔物が大量に迷宮から出てきて、一気に町に流れ込むのよ。どんなにランクの高い冒険者や熟練の兵士でも、突然大量の魔物が町に現れて、住民達に向かって無差別に攻撃するから兵士やランクが高い冒険者がいたとしても対処できることは限られているわ。領主やギルドも対応する前に統制が取れなくなった。とっいった感じかしら」
「なるほど。統制が取れなくなれば成す術がない。頭の痛い問題ですね」
確かに日常的な生活の中でいきなり大量の魔物が襲ってきたらできることは限られている。兵士は指揮官の指示の元で戦略を立てて戦う団体戦には向いているが、言うなれば対人戦特化と言えるだろう。魔物相手となると冒険者パーティの方が頼りになりそうだ。
しかも、兵士は上司の命令を受けてから、冒険者はギルドの要請を受けて依頼と言う形で動くと言うのが一般的だ。この辺りは日本と一緒で、責任の問題とか契約という概念がある限り緊急時だからと言って自由に振る舞っていいわけじゃない。この辺りの緊急対策は陛下に判断や法改正を進言する必要がありそうだ。
「だから、迷宮コアを破壊して迷宮としての機能を止めたのか」
「ええ。迷宮はたとえコアが破壊されたとしても、数年もすればまた竜脈からの魔力さえ途絶えていなければ新しいコアが作られるのよ。とは言ってもコアの破壊についてはかなり反発があったわ。学園や学校で教育を受けていない住民や冒険者達にとって魔石は重要な生活基盤だから。そして国と冒険者ギルドが話し合った結果、国が生活の補助をする事で協力協定を結んだというわけ」
なるほど。迷宮コアを破壊しても数年経てば復活するのか。ま、そうじゃなければ石油が無く、魔石を資源としているこの世界では生きていけないのだろう。
「さっきも言っていたけど、地下迷宮以外にも違う種類の迷宮があるんだ?知らなかったよ」
「他国に数は少ないけど遺跡や塔の迷宮があるわ。魔素の濃い竜脈付近にしか存在はしないけど」
「でもさ、迷宮の入り口には結界が張ってあるんだろ?スタンピードが起こったとしても迷宮から出られないんじゃ?」
「悪魔がその結界石を壊すのよ。悪魔は魔物と違って結界が効かないのよ。迷宮コアを破壊したとしても数年後には新しい迷宮が出来るからいたちごっこっていうか、こちらだけが消耗していく感じね」
「どういった対策が有効だろう。確か王都の陥落はワイバーン部隊が空中から攻撃を仕掛けてきたんだったね」
「うん。悪魔も空を飛べるしね」
「空が飛べる種族とかはいないの?ハーピー的な?それか飛べる魔物を操れる技能とか?」
ラノベやゲームによる知識では対空戦が出来る魔物をテイマーが操る、あるいは自身が空を飛べると言ったなんらかの手段があったわけだがここではどうだろう?
「獣王国には少数だけどワイバーンを調教した部隊があったはず。でも対魔物戦を想定しているのではなく偵察や見回り程度の役割しかないから主戦力ではなかったわね。現世もそれは変わらないと思うわ」
テイマーじゃなくて調教師か。平和な世の中が続くこの世界じゃ数が少ないのも仕方が無い。魔法で飛べる様になればいいのだが…
「そう言えば、過去の文献に、なんでもSランク迷宮の最深部近くの森には翼を持つ馬がいるそうです。御伽噺かどうか、見た事がないので確証はないですが」
「ペガサスか?もしその話が本当なら乗れるのかな?」
「文献には勇者は翼を持つ馬に乗り、魔王の城に向かったと書いてありました」
「英雄譚とか御伽噺か~。ダメ元で探すのもありかもしれないな」
「ジュリエッタの転生前の記憶にはその辺の情報はないのですか?」
「ヴェルと一緒で夢と勘違いしそうな程度の断片的な記憶は残っていると言えば残っているけど…その中にも残念ながらSランク迷宮の事については記憶には残っていないし思い出せないかな。何せ私達がBランクに上がって次はAランクだと思っていたら魔王軍が攻めて来たからね」
もし仮にペガサスを手に入れたとしても、それでは俺達だけが空で戦う事になってしまう。それでは悪魔や空を飛べる魔物に分散されてしまえば数的に問題あり話にならない。飛行機がのような物が、あればと思うがこの世界には魔法があり科学と言う概念がほぼ無い。
だから重力魔法はどんなものかは分かっていても、地上に引っ張られる引力が関係しているなんて理解は出来ないだろうな。
その点、俺は日本での教育である程度知識はある。それに勇者のスキルである重力魔法が使えるのなら空が飛べる魔法の構築の研究も秘密裏に研究してみるのもありかも知れない。
「兎も角だ、時間が許す限りやれる事だけでもやらなくちゃな。取りあえず出来る事といえば防衛を強化する事からか…それならば、王城の周りにもう一つ高い壁を設置して結界石を設置して貰うってのはどうかな?窓には格子を付け悪魔が王城に入らぬように対策をする。王都の外壁や町の高い場所にも結界石を置いて、もしもの時の為に下水道に逃げれるように格子を付けて結界石をいたる所に設ける。食料やなんかを置く地下倉庫を作れば守れる命も多いんじゃないかな?」
「名案ですけど、その結界石が足りません。国中に結界石を作るには結界の魔石が大量に必要ですから」
「その結界石はどこから手に入れるんだい?」
「Aランク迷宮の30層以降に現れるレイスという悪霊の魔物からドロップ出来ます。魔物ランクはAランクと手強く、冒険者から高額で国が買い取っているのが現状なのです」
「そっか。僕達が率先して、そのレイスを狩りまくるとしようか?そうすれば、結界石は大量に集まるだろう?」
「それはそうですけどレイスは魔物ランクがAランクですよ?今の私達の力では」
「これから旅にも出るし、その前にシャロンさんの言うとおり、迷宮でレベルを上げさえすればなんとかなるんじゃないか?」
「そうよ。私達は神様から与えられた特別な力、聖属性魔法が使えるわ。相性がいいからきっとなんとかなるわよ。でもその問題をクリアしたとして、スタンピードはどう押さえるの?迷宮コアを破壊するのも許可がいるだろうし、世界中の迷宮に張ってある結界石を四六時中守り続けるなんて無理じゃない?」
「それなら、こうしたらどうだ?結界石を檻に入れて魔法を防御する何かに入れておくと言うのは、悪魔しか壊せないならそれで何とかなると思うんだが?」
「魔封じの魔道具ならあるけど、結界自体がそれじゃ効き目が無効になるわね」
「そうなるとオリハルコンが必要になりますわね」
まぁ、言わずと知れず前世でも有名な伝説の鉱石だ。今までの話の中でもちょいちょい出てきたが、本当に存在しているとは…
「ええ。超希少魔鉱石です。Sランク迷宮の最深部の魔物からごく稀にドロップ出来るそうです。A、Sランクの素材は迷宮の最深部でしか手に入れられないですし」
「また。Sランク迷宮とはね?Sランク冒険者やSランクパーティもいるんだろ?その人達に頼んじゃだめなのか?」
「Sランク迷宮の最深部に到達出来る冒険者は、現在この世界に3人しかいないわ。しかも全員がソロ。それにもしオリハルコンが手に入れられたとしても、アダマンタイトや緋緋色金はともかくとして、オリハルコンに関して言えば、加工方法すら現代では失われてしまっているのよ。だから、Sランク冒険者のその3人も敢えてリスクを省みず踏破しようなど考えていないと聞いているわ」
「そのとおりです。Sランク冒険者ともなりますと、国のおかかえとなっています。Sランク迷宮の最深部は100層以上と聞きます。転移石碑があるとはいえ、Sランク冒険者を月単位で迷宮に潜るなどあり得ないと言う事です。お金にも不自由はしていないでしょうし」
『それは、もう冒険者じゃないんじゃないか?要は未知のものに手を出して国家運営に影響のある変化があったら困るから手を出すなってことだろ?』
「そりゃまいったな~そこまでの希少金属なら諦めるしかないじゃないか。この国にもそのSランク冒険者を囲っているのかい?」
「残念ながらいません……この国にはAランク冒険者は現役で30名8パーティほどいますが、そもそもSランク迷宮がこの国にはありません。なので、この200年ほどSランク冒険者はこの国には不在なのです」
「転生前はそのSランク冒険者の3人はどうしてた?」
「思い出したくも無いけどまぁいいわ。ヴェルと旅をしていて会った事のあるSランク冒険者は、漏れなく飼い犬のように飼いならされていて中年太り。分かるでしょ?人生守りに入るとそうなる事を…」
「あちゃ~。怠惰だなまったく。冒険者ランクもギルドカードの更新とか有効期限を決めないと平和な世の中じゃ、よほどの戦闘狂か向上心が無い限りそうなるか」
苦い顔をしてそう言うとマイアも苦笑いする。
「私が他国に囲われているSランク冒険者に、そのような意見を申し入れるわけには参りませんし。でも上級悪魔がヴェルを殺しに来たのは、他国の要人もあの場にいたので知っていると思います。歴史は変わっていますから、ひょっとしてそのSランク冒険者もメタボリックな感じじゃなくなっているかも知れません」
「そう願いたいものだよ」
「だからと言って、全てを他人に期待するのはどうかと思うわ。それなら魔王が復活する前に、私達がSランク迷宮に挑戦するのもありかもね」
「そうだな。世界を破滅から救う為ならやるしかないよな」
ここまで来たら出来る事を出来るだけやるしかない。Sランク冒険者を目指しながら、オリハルコンを手に入れ、出来たらペガサスも手に入れたい。オレ達三人はそう目標を立てた。
あくる日に登城し、陛下に昨日話合った事を全て伝えた。王城の防壁の強化、鉄格子を窓の全てにする、下水道の改良と言うのは合意したが、迷宮コアの破壊についてとマイアが旅をするのは陛下が難色を示した。やはり王女を他国にお忍びでって言う事に引っ掛かるのだろう。
ま、世界の命運が掛かっているのだ。必死に説得して最後は許してくれたのだが渋々だった。
迷宮コアの件は他国との相談の上、決めると言う事だった。
そこから日程の調整に入る。まずは、竜車の改造について馬車職人に連絡をつけて貰った。改造には2週間掛かるそうだ。竜馬は手配してくれる。
その次に解決しなくてはならないのは学園にある迷宮についてだ。学園に迷宮の事を問い合わせて貰うと3日後から1週間特別使用許可が出た。さすがは陛下の一声だ。
空中戦に備えるためのワイバーンの調教師を増やすって話はこの先、旅に出て獣王国と直接交渉する事になった。どのように魔物を調教しているのかが少し楽しみだ。
学園迷宮に行く為の、防具は可能な限り揃えてくれるらしい。それから採寸をしたら早速注文してくれた。2日後には出来上がるそうだ。至れり尽くせりと言ったところである。
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