そこは獣人たちの世界

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第一章

*じじいの仮説

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受付仕事にまさかの訓練所の道具整備、合わせて大量の書類整理を何とか日が暮れる前に終えれた。訓練所に降りたときにキオに声をかけたかったが、他の奴も一緒だったし、使っていない7か所だけの整備って話だから使ってるところに入るのもあれだったからな。
だからさっさとキオと合流して帰りてぇっていうのにまたじじいの呼び出しだ。キオのことを話せるのはじじいだけだから、話すこと自体はいいんだが、本人をもっと待たせるのはどうかとも思うわけだ。

「で、今日は何の用だじじい?また今日の訓練内容の話か?」

「まぁ、そうじゃの。じゃが少し相談もあるのじゃ。」

「あ?じじいから相談?まぁ言い、聞くぜ。」

じじいがそもそも人に相談事をするってのが変な感じだ。なんかキオとの訓練中にあったのか?

「キオ君はあれじゃろ、お主と同じ狼種の姿をして居るが、本来はニンゲンなんじゃろ?最近人間の姿に戻っておるか?」

「ん?いや、そういえばギルドに来れるようになってからはずっと狼種の姿だな。」

まぁおそらく俺がずっと毎晩絡んでいるってのもあるんだろう。それも何回もキオの中に出してるしなぁ。おっと、少し下が反応しちまった。

「そうか、ならもう今後はお主が絡まない日でもないとニンゲンの姿はみれないか。」

「どうしたんだじじい?まさかキオのニンゲンの姿が見たいとかいうんじゃないだろうな?」

「・・・あながち間違いでもないの。」

さすがにそう返されて俺は息が止まるかと思った。だが、どういう料簡で人間の姿が見たいなんて言ってきたのか、確認しなくちゃいけない。

「なんだ?上に流したニンゲンの情報のせいでニンゲンの姿について資料を出せないかとでも言われたか?それともじじいの趣味か?」

「そう威圧せんでもよい。変なことを言ってすまなかった。じゃがキオ君のニンゲンの姿を見ても同じことを思うのであれば、儂の仮説が正しい可能性が出てくるというだけの話じゃ。」

「同じことを思う?仮説が正しい?じじいの中だけで完結させても俺はわからねぇぞ。」

さすがに俺も威圧しちまったが、もう威圧するのはやめてる。いつもならまっすぐ横に立っているじじいの耳がぺたりと垂れて、毛が多くわかりづらいといえる表情なのにあからさまに負い目を感じているのがわかるからだ。

「おぬしにこれを言わないといけないというのはかなり酷な話なのじゃ。じゃが、今後起こりうる問題をどうにかするには話さなくてはならない。」

「酷な話か、まぁそういうのは慣れてる。だがそれ、キオの話なんだろ?」

「そうじゃの。」

結構酷だと思うようなことはいろいろ起きて慣れているつもりだが、キオのことに関しての話だと俺はちゃんと保てるのだろうか。いや、だがキオのためにも聞かなくてはいけない。じじいがそういうということはそれだけ大切な話だ。

「大丈夫だ、話してくれ。」

「すぐに仮説から話すとお主も混乱するじゃろう。じゃから過去の話から始めるぞ。先日におよそ3000年前、ギルド創設した元二代目国王はニンゲンとかかわりがあった話はしたの。」

「あぁ、あれはかなり驚いたな。」

このギルドというシステムのおかげで今のこの国があるといっても過言ではない。それぞれの街が平和なのもギルドのおかげだ。その根幹にニンゲンがいたという話だたのが驚きだった。

「ではガロよ、およそ2000年前の淫行の魔族については知っておるか?」

「は?まぁ知ってはいるぞ。確か街々で多数確認された奴だろ。そいつにあってはいけない。目を合わせるだけで淫行されて、下手をすれば死ぬまで搾り取られるとかいうやつだ。」

2000年も前の話だから俺としては現実感のない話だが、万が一また現れたときにどう対処するべきかという話になる。あれは魔族の中でも悪に属する奴だったそうだからな。

「その姿がどんな姿だったのかというのを知っておるかの?」

「姿?たしかどこで現れたのも他種族の特徴が体のあちこちにあるやつだろ?あるやつは頭は獅子、右腕は鱗、胴は半分が白くふっくらとした毛で、半分が茶色い短毛とかそういう感じだったはずだ。」

確か現れるごとにいろいろな種族の姿が体に表れていたとかだったはずだ。資料で読んだだけだが、案外覚えてるもんだな。

「よく覚えているの。そういうところがあるのじゃからもう少し応用を聞かせて記憶してほしいものじゃが。」

「あ?なんか言ったか?」

「おっとすまん。これは関係なかったの。それでじゃ。この様々な種族と淫行、そして様々な種族を体に宿しているというのが気にかかっての。古い資料じゃがあさりなおしてみたのじゃ。」

「おい、ちょっとまてじじい。それがキオと関係ある話、なんだよな?」

「・・・そうじゃ。」

小さく毛の隙間からのぞかせたじじいの目は真剣そのもので、冗談を言ってる雰囲気ではなかった。俺はここまで聞いて、じじいの仮説を聞きたくなくなってきちまっていた。だがじじいは俺を少し見つめ続けた後、そのまま話を続ける。

「出現した期間と箇所をたどったんじゃが、間違いない。徒歩でも移動できる距離じゃ。」

「それで、何が言いたいんだじじいは?」

「儂の仮説を言うと、この魔族は複数いたのではない。姿こそ違えど一体の、いや、一人の存在だったのではないかの。そして、そもそも魔族ではなく、ニンゲンの可能性があるということじゃ。」

「やっぱりそういいたいのか。だが、何も根拠はないんだろ?」

じじいの仮説っていうのはほんとに仮説だ。恐ろしい話だが、キオで確かめればこの仮説が正しいかわかるかもしれないという恐怖がある。そんなことにならないようにはもちろんするつもりだが。

「もちろんじゃ。じゃがの、今日キオ君と触れ合って、愛おしいと思ってしまったのじゃ。もっと儂とだけ話し合っていてほしい。いや触れ合いたいとすら思ったの。」

「はぁ!?」

「おちつけ、儂もキオ君と別れた後どうしてそんなことを思ってしまったのじゃと悩んだものだ。だがの、この仮説が正しいとすると、この感情も仕方ないことだったのかといえる。」

「仕方ない、だと?」

「あぁ、もちろんお主との仲を裂くような真似はせんから安心せい。そんな残酷なことはしたくない。だからこその処置も必要になるがの。」

正直、怒りで我を忘れそうだった。今すぐにでもじじいを殴りつけたいと思っていた。それは今の仮説はようするに、俺がキオに惚れたのはニンゲン特有のその誘惑的な力のせいだと言われているようなもんだからだ。

「酷な話ってのはそいうことかよ。」

「大丈夫じゃガロ。お前たちは誰がどう見ても愛し合っておる。二人の仲を裂くような話をして悪かったとも思うが、今キオ君を愛しているのは決してそれだけの原因ではないはずじゃ。」

「・・・あぁ、そうだな。」

俺がキオを好きなのはそれだけじゃない。そうだな、もしかしたらじじいの仮説が正しくて、惚れた原因はその力によるところかもしれない。だが今俺は本気で愛してる。それは嘘じゃないし、力によるもんだなんて誰にも言わせねぇ。だけどこれだけは確認しておかなきゃいけない。

「じじい、一つ聞いていいか?3000,2000ときたら1000年前にも何かあったか?」

「ふむ、その魔族の事件が起きた後に魔道武具開発部門というのが立ち上げられたのは知っているかの?」

「あぁ、でも今はもうないやつだろ?」

魔道具を武器兵器として使えるようにと立ち上げられたものだ。だがあまり功績がうまくいってなかったんだったか。

「なくなった原因は知っているはずじゃ。思い出せんかの?」

「・・・だいたい1000年前のラミリスか。」

あるじゃねぇか1000年前の大きな事件。すぐに出てこなかったが、それとニンゲンと関係があるかどうかはわからないな。

「ニンゲンとの関係じゃが、おそらくあるじゃろうな。破壊魔道兵器ラミリス。この大陸の半分を焼き尽くすかといわれるような兵器をつくって国からもギルドからも解散させられたわけじゃな。そんなものをずっと功績がよくなかった部門がすぐに開発できると思うかの?」

「あぁ、ニンゲンの知識か、ありえるな。」

「それだけではない。ラミリスの開発時一人の犠牲者が出てるはずじゃ。種族は不明と出ているがの、もしキオ君と同じように魔素保有量が高かったのであれば、人柱にされた可能性は高い。」

「んなっ、いや、だが威力鑑定結果があれだ。可能性はあるのか。」

もちろん実際にぶっ放して大陸半分を焼き払ったわけではなく魔道具鑑定された結果地だけのものだが、それでもそんな兵器のための犠牲たんていやな話だ。

「そうじゃの、だからこそキオ君には 子宝封印しほうふういんが必要じゃと思う。」

「っ!なるほど、それが本命の話ってわけか。」

「そうじゃ、すぐに答えをださんでよい。明日までに考えてきてくれ。でわの。」

じじいも複雑そうな顔をしていたが、それ以上にたぶん俺はかなり険悪な顔をしていただろう。これ以上こんな状態で話せるわけもない。追い出さすように手を払われたのに素直に従って部屋を出た。
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