そこは獣人たちの世界

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第一章

ガロが焼くパン

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ゆっくりと家に帰ってきていつものお昼の時間は過ぎちゃったけど、朝も遅めだったからか、ガロはそこまでお腹すいてないようでよかった。でもちょっと意外なことを頼まれちゃった。

「なぁキオ、俺に料理を教えてくれないか?」

「え?別にいいけど、なんで?」

「いや、興味を持ったっていうのと、俺一人でいなきゃいけない時に、キオの料理が食べれなくなると、ちょっと焼いただけの兎肉とかはもう食えそうになくてな。」

「あー、もしかして舌が肥えちゃったかな?なんかごめんね?」 

「謝ることはないが、キオの料理で舌が肥えたってのはあってるな。」

たいした料理を作ってるつもりはないんだけど、確かにあの兎肉の串焼きみたいのよりはさすがにおいしい自信あるもん。ガロのが同じレベルだと、何日も僕の料理でべちゃってたらもうきついよね。

「教えるのはいいんだけど、サンドイッチみたいなのくらいでいいのかな?」

「あぁ、そもそもパンの焼き加減とか肉の焼き加減から違うみたいだからな。その辺から教えてくれ。」

「うーん、感覚でやってるだけだから教えられるかわからないけど、できる限り教えるよ。じゃあ一番使うパンからやろうか。」

パンだけは時間ある時にこまごまと作り置きしてある。もちろんちゃんとカビが生えたりとかしないように2日後には消費しきれる量くらいだけど、いざとなったらガロのマジックポーチもあるんだよね。

「あぁ、よろしく頼むぜ、先生。」

「茶化さないでよ。パンはこのオーブンで焼くから確かに中が見えにくいけど、大体1分っていってもわからないか。一度一緒に焼いてみようか?ガロが切り分けて焼き入れてくれる?」

「了解した。」

僕が支持すると包丁でバケット型のパンを切り分ける。今日の朝もちゃんと切れてたけど、やっぱ切り分けるのは普通にうまい。そしてバターを付けてってあれ?つけないで焼こうとしてる!

「ガロ、バター付けないと!それ忘れてて焼き加減が変だったんじゃない?」

「ん、そういえばいつも何かぬってたな。だがたまに塗らないこともあっただろ?」

「それはチーズ載せたりするときね。何も載せないならバターはつけたほうがいいよ。このくらいをナイフで切って、できるだけなめらかに塗るの。」

当然バターナイフなんてのはない。冷蔵できる魔道具から作ったバターを取り出して、適量をナイフで切ってパンに塗るのを実演する。だろって結構器用そうだし見ればできるはずだ。

「わかった、やってみよう。とりあえず一切れだけな。」

ナイフを渡すと同じようにバターを切り分ける。ちゃんと僕と同じくらいの量切り、ナイフからパンにとなめらかに塗る。うん、ちゃんとできてる。さすがガロという感じだ。

「じゃあとりあえず焼いてみるか。オーブンにいれてくれる?」

「あぁ、バターを塗ったほうが上でいいんだよな?」

「うん、それで大丈夫、僕のも一緒に入れてね。」

「なんか、ちょっとくる言葉だな。」

「なにが!?」

意味深な冗談交じりのセリフを吐いたけど、すぐに2切れのパンをオーブンの網にとのせて焼き上げ始める。あとは僕の感覚で大体1分まって、オーブンをまた開けてもらう。

「・・・なぜだ?」

「いや、僕に聞かれても、分かんない。切った厚みとかバターに多少の差はあっただろうけど、焼き入れたのはガロで、おいてる配置も変な感じしなかったんだけどなぁ。」

僕がバターを塗ったパンのほうはきれいな色に焼きあがるとても美味しそうな感じで、一方ガロが塗ったほうはまだバターがぐずついている。食べちゃえばそれほど気にはならないだろうけどもうちょっと焼きたい感じ。でもこれ以上やいたらきっと前みたいに焦げるんだろうなぁ。

「どうする?もう一度焼くか?」

「いや、ここままでもちょっと冷めれば少しはいい感じになるはず、ただこんなに差が出るものかな?」

「そうだな、あるとすればやはり、魔素的な問題なのかもな。」

「えぇ、これも魔素が関係あるの?」

「なにかの才というのは保有してる魔素が与えるものとされてるらしいぞ。俺もよくわかってないけどな。」

うーん、僕がニンゲンだからって可能性もあるのかもだけど、それってつまり魔素の影響ってことなのかな?それなら子宝封印の影響はほんと何もない感じがする。あったのは昨日ガロが激しくなっちゃったくらいか。

「とりあえず、ガロの少し冷めたみたいだし、ちょっと食べてみるね。」

「キオが食べるのか?俺が食って確かめてみるぞ?」

「いや、一応教える側が食べたほうがいいかなってね。」

そういってちょっとバターの焼き跡が残ったせいでぼこぼこな感じのをパンを食べる。口に広がるバターの味はちょっとしつこめ?これは塩とかチーズとかをかけたら確実にしょっぱい。
あの固いパンのように遠慮したいというほどではないけど、これはこれでどこか残念な感じだ。うーん、どうしたものか。

「悩んでるってことは、あんまりうまくなかったんだな?」

「うん、どうにもね。どうすればいいかな、熱加減を変えるとか、ほんのちょっとだけ焼く時間を延ばすとか、うーん・・・」

「いや、これでわかった。こりゃ俺が作るのは難しそうだ。適度にはできてもキオレベルにはいかないだろう。悪いがキオ、ずっと頼らせてもらうぜ?」

「え、あ、うん。いいよ。」

なんか頼られてると思うとちょっと、いや、すごくうれしい。たかだか料理、されど毎日食べるものだ。やっぱできるだけおいしいほうがいいよね。まずは今日のお昼を頑張って作らないとね。
あ、でもこれならできるかも?いつもはバケットを切り分けてサンドを作ってるけど、小さめのバケットを切り分けずにそのまま丸々の上体で横に切れ目を入れて、そこに野菜を挟むだけ。もちろん塩コショウで味付けはするけど。

「どう?これならできそうじゃない?」

「ほぉ、焼かなくてもうまいのか?ただこの最後の味付けの仕方が多分キオがうまいんだよな。」

「そっか、とりあえずこれ食べてみてよ。」

「おう、んじゃ一口。」

大きく口を開けてガブリと噛みつく。あぁ、なんというかその姿にゾクゾクっとしちゃう僕もだいぶあれだよなぁ。

「どうした?」

「ううん、おいしい?」

「あぁ、なかなかいいな。でもやっぱ肉もはさんでほしいけどな。」

「オッケー、もう一つ分くらい行けるでしょ?そっちは挟むよ。」

「あぁ、たのむ。」

ちょっと気をよくしながらお肉も焼き始める。ついでに僕の分も作るけど、今度はパンを少し焼いてからサンドしようかな。それもおいしいんだよね。
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