そこは獣人たちの世界

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第二章

馬車に揺られる夜

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ちょっと緊張した会話が続いたので次のご飯にはあの食材使いたいとか、ガンの魔法の制度と威力をもっと上げれるようにとか、他愛もない会話もしつつ馬車に揺られながら薄暗くになってきた。
でも変わらぬ速度で馬車は動き続ける。引っ張ってるのは大きな亀だけど、亀だからこそ夜でも気にせず休まず進めるというものだ。馬だったらこのくらい暗くなるといったん止まって休む方が多いらしい。

「ほんとに魔物襲ってきたりしなかったね。夜はどうなの?」

「このあたりの荒野ならあんまり変わりはしないだろうな。パッスの村はだからこそ存続し続けられている。」

「なるほど。」

「まぁ襲ってくるどころか魔物の姿すら見えないのは、舗装道に近寄らせないように冒険者がきちんと仕事しているからともいえるのだろうがな。」

「アリストクラットの冒険者もちゃんと仕事してるってことだね。」

貴族とか領主様とか不穏な存在も多いけど、ギルドはギルドで頑張っているってことだろう。権力者がすべて取り仕切ってるってわけでもないのかな?

「むしろ、外に仕事に出されすぎてるだけ、かもしれないがな。」

「え、どういうこと?」

「町中の問題は貴族飼いの兵がこなし、外の問題はギルドがこなすっていうのはある話だ。」

「そ、そっか・・・」

ギルドに回される仕事が外だけとは考えなかったけど、そういうこともあり得るのか。セリーヌでも王都でもそんなのを見てなかったけど、そっちはギルドのほうが権力あるもんね。

「あぁ、それと、今のうちに寝ておけ。揺れててきついかもだが、パッスを出たらテントを張って寝れるかもわからないからな。」

「え、そうなの?」

「一応森に入るが魔物的な危険はほぼない。たまにソロウルフが出るくらいだが、あいつらは夜は動かない。だがパッスの村の状況によっては眠らず歩き通しになるかもしれない。」

「パッスの状況?そういえばホワイトグレータータイガーだっけ?パッス方面に出たの?」

「いや、パッスとは逆方向だ。インフィリアの向こう側だな。だがそちら側はインフィリアの畜産地帯で、ヘビーボアがよくでるところだ。」

ヘビーボアといえば僕の使ってる皮鎧の素材だったはずだ。確か図鑑でも見たことがある。ただ重いという特徴があるだけで牙も短く、凶暴性も低いとか。

「セリーヌみたいに飼育してるってこと?」

「いや、セリーヌとかと違い放牧に近い状態、というよりも野良の魔物のような状態だ。狩る量は繁殖量によっても変えているという。肉も食えるからパッスとの交易品によく出るが、皮も肉もほとんどがアリストクラットにでるみたいだな。」

「そういえば王都にも少しイノシシ肉は売ってたね。癖が強いから買わなかったけど、アリストクラットからの輸入品だったんだね。」

「あぁ、ここからセリーヌはかなり遠いからセリーヌで皮鎧が出てたのは驚いたがな。」

そういえばちょっと驚いたというか感心したというかそんなだったのを思い出した。ただそれよりもふと思ったことがある。

「うーん、そっか。僕はこの世界の地理がよくわかってないんだった。ちょっとスマホ出してもいい?」

「ここでか?まぁ、御者からは見えないか。」

暗くなってからスマホを出すと結構明るい。設定とかで暗くも出来なくなってるのでこれはこれで不便だ。うまく光が漏れすぎないように隠しつつ地図アプリを開く。一番ズームアウトさせるとさっき一応寄ったアリストクラットの町が表示されている。

「セリーヌの町はどっち側?」

「セリーヌは南東、王都は北東だ。」

まず南東にスワイプしていくと、ほんとにかなり遠くにセリーヌの町が表示される。でもその間は何も表示されていなかった。そういえば前はこんなにスワイプできなかったけど、言ったところが増えたからなのかな?
そう思ってさらに南にやろうとしたら途中で止まる。端の端、海に出るまで見たかったんだけど、これは海が見える街にまで行かないと表示されないのかもしれない。
次は北に動かしていくが、こっちも途中で止まる。東も当然ダメで、西方向には動いたのでそっちにずらすと王都が見えてくる。

「そういえばさ、王都は王都以外の名称はないの?セリーヌとか、アリストクラットみたいな。」

「ん?話してなかったか。王都ロイアルだ。」

わお、まさに王都って名前だね。そう思ってたら地図の王都の表記が王都ロイアルに切り替わった。これ、僕の知識に反映されてるのか。ほんとに僕のスマホなのか不安になってきた。

「微妙な顔してるが、なんかあったのか?」

「うーん、このスマホでも地図が見れるんだけど、行ったところしか見れないし、行ったところでも今みたいに名前を聞いてないと略称のままみたい。」

「は?ま、まぁそういう魔道具なんだろ?」

「ううん、前はこうじゃなかったよ。この世界に来て変わったんじゃないかなぁ。」

「そ、そうか。かなり不思議な魔道具で使い勝手もあまりよくなさそうだな。この間の写真というのはすごかったが。」

「あれね、保存できればいいんだけど。」

できることがかなり限られてるようで、実はブラウザがあるから調べものに関してはかなりできる。といっても元の世界の知識だけど。料理には役立ててるし、来た当初は小説も読んでたけど、他のこともできるかな。アルバムのアプリとか、探せば見つかるかもしれない。

「まぁそれをいじくるのはまた帰ってからにしておけ。もう一度言うが寝ておけよ?」

「あ、そうだった。でもどうやって横になろう?」

「俺の膝に頭を乗せればいい。かけるのはこれを使え。」

そういって半場強制的に横に倒されて膝枕した状態にさせられ、上から薄いけど一枚タオルケットのようなのをかけてくれた。な、なんかそういうことじゃないはずなのにドキドキしちゃって寝れそうにないんだけどな、これ・・・
そう思っていたけど無理やり目をつぶればいつのまにか寝ていたらしく、次に目を覚ますころにはもう余はあけていた。
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