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第二章
*代交代
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「それじゃあ俺たちは帰らせてもらう。」
「えぇえぇ、3匹もの討伐ご苦労様でした。また何かあった時にはぜひ再び、ガロさんが派遣されてくることを願います。」
心にもないことを吐きつつ、ふんっ、と鼻息を鳴らして部屋を出るガロを太った緑の竜種は精一杯の作り笑顔で送り出す。
ネズミのことを聞いてくるかと身構えていた竜種だが、本当に書類だけを受け取りすぐに出ていったガロを見て、余計なかかわりを作らずすぐに帰還するつもりだろうと考える。同時に居続けられても仕事がはかどらないのでもう消えろとも思いながら。
ガロが出ていった後しばらくたってもメイド姿の兎種は残り続けていた。そして竜種は軽く指を動かして近寄るように指示する。奴隷である彼は当然のように近づくが、その瞬間に殴り飛ばされる。
「ぐぎぎ、ガロめ、まさか本当にあれを失うことになるとは。しかもどちらも結局手に入れられずじまい。」
「手を出すべきではなかったのです。先代はあなたのためにと動きましたが、彼もまた、少し欲を出してしまったのですよ。」
「うるさい、黙れ。」
「失礼しました。」
竜種に後ろから声をかけたのは影から現れた黒い布を体中に巻いたこれまた黒い毛並みの鼠種だった。だが先代といったそいつはガロが首をはねたものよりも毛皮の色はさらに深い黒色で、耳もどちらもきれいなまま。何より、かなりの細身であり、別人だというのがわかる。
「おい、いつまで寝てる。椅子になれ。」
殴られて軽く地面に伏せていた兎種に竜種がけりを追加で入れるが、すぐに立ち上がり、軽く会釈すると、竜種がガロが来ている間に置いていた椅子をどかし、そこに四つん這いになり椅子となる準備を整えた。
もう彼は竜種に従うだけのむなしい心の無いものとなり果てているのだ。そして躊躇なくドカリと重い竜種はその上に座り込む。
「ところで、自分の献上はいつにしますか?」
「あぁ、鼠種のあの習慣か。実を言うとな、先代の耳を受けたのは私ではない。あれも上からもらい受けたのだ。もし耳を渡したいならわたしよりも上に会うか?」
「そう、なのですか?自分としては耳がほしいかと思っていたのですが、必要となるまではこのままのほうが行動しやすいのでこのままいきます。上の方が渡せと言ってきたらすぐお申し付けください。」
鼠種の耳が切れているのは単なるケガや戦闘によるものではない。従うと決めたものに耳を献上するという習慣があるからなのだ。その耳に、自分の真名を刻むことで、いつでも生殺与奪を握らせますという完全服従を意味する。
肉体の一部と真名、そして呪いによって相手に対しどんな抵抗もできなくなる。どんな命令でも聞くようになる。ネズミを扱うものにとって、そして使えることを選んだネズミにとっての栄誉ともなるのだ。
だが細身の黒鼠もデブの緑竜もその習慣を積極的には行わない者たちであった。鼠は耳切よりもまだましとみられるから仕事で動きやすいという目的のため、緑竜はくだらない習慣でそんな体の一部など興味ないというだけだった。だが緑竜がふと思いつく。
「いや、まて、つまりお前と奴隷契約するということだよな?性的な目的で使ってもいいのか?」
「仕事に差し支えないレベルであれば付き合いますが、先代とそういうことをしていたのですか?」
「いや、前の奴はあまり好みではなかったし、お前もそれほど好みの体というわけではない。やはり鍛え上げた筋力のある肉体が好ましい。おい、脱げ。」
おもむろに立ち上がると兎種に脱ぐように命じる。兎種はすぐに自分のメイド服を綺麗に脱ぎ、軽くたたんで机にと置く。下には何一つ着けておらずすぐに全裸が現れる。
いや、実際には何もつけていないわけではない。股間部にだけ鉄の器具が装着されている。いわゆる貞操帯だ。きつく拘束されているが、脱いでいるという今の状態に軽く上を向こうとして痛々しくなっている。
そしてその姿に満足そうにうなずきながら竜種は筋肉質な体を撫で上げた。冒険者時代から鍛えていた筋肉は、今や竜種を楽しませるためだけに維持されているわけだ。
「なるほど、自分や先代とは全然違いますね。不要な筋力です。」
「まぁ、あくまで聞いただけだ。前のにもそういう鍛え方は仕事に差し支えると断られた。」
「自分をその兎と同じ玩具として扱うのであれば、別にかまいませんよ。筋肉をつけ主人好みの肉体になり、愛玩の奴隷になりましょう。」
「それも先代に言われた。まったく、お前たちネズミは同じようなやつらばかりだ。それでは私の信用が上から落ちる。何より、大切な手駒をまた失う。」
忌々しそうに軽く手を振った後、兎種にそのまま四つん這いになるように指を下に指す。ほぼ全裸のその姿のまままた椅子となり、竜種に下に敷かれた。
「ではやはり上の方からお声がかかった時までこのままで仕事をします。引き続き仕事に戻ります。」
「あぁ、まて、その前にだ。もうガロもいない。なんでもいい、ある程度筋肉のついている冒険者を一匹仕入れて来い。優先の仕事だ。」
「かしこまりました。仰せのままに。狼種を狙ってきましょう。」
「ほう、気が利くな。」
「いえいえ、では。」
先代と違いまだまだ友好関係は気づけていないが、多少は気を利かせられると竜種は満足げににやけ、鼠がとってくる獲物を皮算用しつつ待ち焦がれるのであった。
「えぇえぇ、3匹もの討伐ご苦労様でした。また何かあった時にはぜひ再び、ガロさんが派遣されてくることを願います。」
心にもないことを吐きつつ、ふんっ、と鼻息を鳴らして部屋を出るガロを太った緑の竜種は精一杯の作り笑顔で送り出す。
ネズミのことを聞いてくるかと身構えていた竜種だが、本当に書類だけを受け取りすぐに出ていったガロを見て、余計なかかわりを作らずすぐに帰還するつもりだろうと考える。同時に居続けられても仕事がはかどらないのでもう消えろとも思いながら。
ガロが出ていった後しばらくたってもメイド姿の兎種は残り続けていた。そして竜種は軽く指を動かして近寄るように指示する。奴隷である彼は当然のように近づくが、その瞬間に殴り飛ばされる。
「ぐぎぎ、ガロめ、まさか本当にあれを失うことになるとは。しかもどちらも結局手に入れられずじまい。」
「手を出すべきではなかったのです。先代はあなたのためにと動きましたが、彼もまた、少し欲を出してしまったのですよ。」
「うるさい、黙れ。」
「失礼しました。」
竜種に後ろから声をかけたのは影から現れた黒い布を体中に巻いたこれまた黒い毛並みの鼠種だった。だが先代といったそいつはガロが首をはねたものよりも毛皮の色はさらに深い黒色で、耳もどちらもきれいなまま。何より、かなりの細身であり、別人だというのがわかる。
「おい、いつまで寝てる。椅子になれ。」
殴られて軽く地面に伏せていた兎種に竜種がけりを追加で入れるが、すぐに立ち上がり、軽く会釈すると、竜種がガロが来ている間に置いていた椅子をどかし、そこに四つん這いになり椅子となる準備を整えた。
もう彼は竜種に従うだけのむなしい心の無いものとなり果てているのだ。そして躊躇なくドカリと重い竜種はその上に座り込む。
「ところで、自分の献上はいつにしますか?」
「あぁ、鼠種のあの習慣か。実を言うとな、先代の耳を受けたのは私ではない。あれも上からもらい受けたのだ。もし耳を渡したいならわたしよりも上に会うか?」
「そう、なのですか?自分としては耳がほしいかと思っていたのですが、必要となるまではこのままのほうが行動しやすいのでこのままいきます。上の方が渡せと言ってきたらすぐお申し付けください。」
鼠種の耳が切れているのは単なるケガや戦闘によるものではない。従うと決めたものに耳を献上するという習慣があるからなのだ。その耳に、自分の真名を刻むことで、いつでも生殺与奪を握らせますという完全服従を意味する。
肉体の一部と真名、そして呪いによって相手に対しどんな抵抗もできなくなる。どんな命令でも聞くようになる。ネズミを扱うものにとって、そして使えることを選んだネズミにとっての栄誉ともなるのだ。
だが細身の黒鼠もデブの緑竜もその習慣を積極的には行わない者たちであった。鼠は耳切よりもまだましとみられるから仕事で動きやすいという目的のため、緑竜はくだらない習慣でそんな体の一部など興味ないというだけだった。だが緑竜がふと思いつく。
「いや、まて、つまりお前と奴隷契約するということだよな?性的な目的で使ってもいいのか?」
「仕事に差し支えないレベルであれば付き合いますが、先代とそういうことをしていたのですか?」
「いや、前の奴はあまり好みではなかったし、お前もそれほど好みの体というわけではない。やはり鍛え上げた筋力のある肉体が好ましい。おい、脱げ。」
おもむろに立ち上がると兎種に脱ぐように命じる。兎種はすぐに自分のメイド服を綺麗に脱ぎ、軽くたたんで机にと置く。下には何一つ着けておらずすぐに全裸が現れる。
いや、実際には何もつけていないわけではない。股間部にだけ鉄の器具が装着されている。いわゆる貞操帯だ。きつく拘束されているが、脱いでいるという今の状態に軽く上を向こうとして痛々しくなっている。
そしてその姿に満足そうにうなずきながら竜種は筋肉質な体を撫で上げた。冒険者時代から鍛えていた筋肉は、今や竜種を楽しませるためだけに維持されているわけだ。
「なるほど、自分や先代とは全然違いますね。不要な筋力です。」
「まぁ、あくまで聞いただけだ。前のにもそういう鍛え方は仕事に差し支えると断られた。」
「自分をその兎と同じ玩具として扱うのであれば、別にかまいませんよ。筋肉をつけ主人好みの肉体になり、愛玩の奴隷になりましょう。」
「それも先代に言われた。まったく、お前たちネズミは同じようなやつらばかりだ。それでは私の信用が上から落ちる。何より、大切な手駒をまた失う。」
忌々しそうに軽く手を振った後、兎種にそのまま四つん這いになるように指を下に指す。ほぼ全裸のその姿のまままた椅子となり、竜種に下に敷かれた。
「ではやはり上の方からお声がかかった時までこのままで仕事をします。引き続き仕事に戻ります。」
「あぁ、まて、その前にだ。もうガロもいない。なんでもいい、ある程度筋肉のついている冒険者を一匹仕入れて来い。優先の仕事だ。」
「かしこまりました。仰せのままに。狼種を狙ってきましょう。」
「ほう、気が利くな。」
「いえいえ、では。」
先代と違いまだまだ友好関係は気づけていないが、多少は気を利かせられると竜種は満足げににやけ、鼠がとってくる獲物を皮算用しつつ待ち焦がれるのであった。
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