そこは獣人たちの世界

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第二章

噂話

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フィンルさんに連れられてハーバーのギルドのマスタールームに到着。内装はセリーヌの町に似てるけど、広さは全然こっちのほうが広い。王都のマスタールームのように一応のくつろぐスペース兼僕たちのような来客用スペースがあるけど、あんな豪華なソファーではなくさっきの借り厨房のところにもあった普通の机と椅子だ。
部屋の奥側にフィンルさん、向かい側に僕たち4人で座ったから、さっきの食卓のような感じは全然しない。むしろ面接のような雰囲気が漂う。まぁ緊張してるのは僕だけみたいで、ほかのみんな真剣な表情そのものだけど。

「さて、私から話した方がいいね。今回はオクトさんを救ってくれてありがとう。仕事がなかなか片付かなくてね。まだ残ってはいるんだけど、シーサーペントが出たと聞いて、慌てて出ていったんだよ。」

「あー、まぁギルマスがでたんならオレたちはいらなかったかもだけどな。」

「いや、一歩遅ければオクトさんが危険だったかもしれない。あの人は私が買いに行くまでだいたいあの場所にいてしまうんだよ。全く、危ないというのに。」

一気にフィンルさんの表情が和やかになった。やれやれという雰囲気の中にもどことなくうれしそうな感じがするけど、すぐに真剣な表情にと戻ってしまった。

「今回はかなり難しいが何とか手を回して私から君たち4人への依頼として回しておこう。依頼料は王都で遠征量と一緒に受け取れるようにしておく。本当に感謝しているんだ。」

「それはありがたいが、あのおばあ様がいてしまうのならば結界を広げたりすることも考慮した方がいいのでは?正式な依頼を受ければ自分が魔力を貸すこともできる。」

「残念だが、これ以上海側に広げると本当に釣りへの影響が出てしまうんだよ。それを生業にしてる者もおおい。それに釣だけではない。広げれば船での漁獲にも影響がないとは言い切れないからね。」

ドラドさんの提案を難しいと首を振るフィンルさん。確かに漁獲量に影響が出る可能性があるとなると、せっかくの港町で海産物が減ってしまうことになる。きっと住んでる人だけでなく町の経営にも打撃だろう。

「それなら仕方ないが、今回のようなことは多くないのか?」

「シーサーペントほどの魔物は滅多にだよ。そもそもどうやらクラーケンがリヴァイアサンの生息域に入り、こっちがわまで二匹も来てしまったことから始まっている。海生物のバランスが崩れて餌となる壺蛸が少なくなって、においを追って狙ったんじゃないかと思っているよ。」

「よりによってシーサーペントの好物が壺蛸かよ!つってもそもそもあれくらいの魔物があそこまで町に近づくことがすくねぇか。まぁリヴァイアサンが居たら色々他にも影響出るのはしょうがねぇよな。」

漁業ができなかった以上にリヴァイアサンの影響は大きかったってことか。不安になってるとフィンルさんがこちらに顔を向てにっこりと笑った。

「心配せずともこの町は強いよ。毎年何人かは海での死亡事故がある。今回のクラーケンから始まりリヴァイアサン、シーサーペント、被害はあれども死者は出ていなかった。それだけでもよかったといえるよ。」

「海の魔物、というよりも水性の魔物はまだまだ解明できてない魔物も多い。未知の魔物に船が襲われる危険性もゼロではないか。」

「さすがに海底で戦い続けるのはいくらオレたちでも難しいからなぁ。調べ切るのは無理だろうな。ある程度なら魔素防御と水操作でい続けられるけどよ!」

最後のほうは自信満々に胸を張る水竜に思わずちょっと笑っちゃったけど、ドラドさんとガロはやれやれと首を振って、フィンルさんは何もなかったように話を続けた。

「さて、呼んだのはシーサーペントのことだけじゃない。クラーケンもリヴァイアサンも一見するとひとつの自己のようにも思えるんだが、少し妙なんだ。」

「妙とは?なにか不安面でも?」

「そもそもクラーケンがリヴァイアサンの生息域に入った原因が不明なところさ。普通の状態では入るはずがない。何か他のに追われていた可能性すらある。もちろん魔物の行動なんてわからないから何もかも絶対とは言えないけど。」

「なかなかに恐ろしいことを言いますね。ですが自分としてもクラーケンの様子はあからさまな恐怖でした。てっきりリヴァイアサンへの恐怖かと思っていたのですが、その前から与えられていた可能性はありますね。」

「あー、そういわれるとそんな感じもしたな。おかげで楽に倒せたけどよ。」

ガロの言葉に何もかもわかってないってことを返すドルフィさんにドラドさんも続く。僕たちはクラーケンを見てないからわからないけど、ドラドさんはそんな魔物の状態まで見てたのか。水竜は相割らずだけど。

「何も起きなければいいけれどね。港町は噂話も風に流れてくる。原初の竜が目覚めるかもしれないなんて言われているんだ。」

「話が突飛しすぎているな。そもそもその噂はちょっとした騒動でいつでも無駄に流されているだろ。」

「原初の竜って、何ですか?」

思わず話をさえぎってしまったけど、知らないことで不穏な言葉は一応聞いておきたい。なにしろ僕の存在が存在だから。ちょっとガロも僕のほうを見て思うところがあったのか苦い顔をした。

「えっと、キオ君だったかな?ガロのパートナーになったという。教えてもらってないんだね。」

「はい、聞いたことない言葉だったのでつい気になって。」

「聞いたことがない?どこでも噂になっていて誰しも一度くらいは聞くと思うんだけど・・・まぁいいか。原初の竜、この世界の魔物や私たちの祖先、または生みの親といわれている存在だよ。もっとも一部では架空生物ともされてるけどね。」

「そんな竜がいるんですか。」

「竜という名だけどドラゴンかどうかもわからないそんな噂話だよ。」

架空生物といわれてもすでに自分人と横にいる狼種、竜種、鹿種、おそらく海豚種なんていう獣人の存在、魔物の存在、それが僕にとっては架空の存在だったんだ。この世界の架空といってもいる可能性は考えたほうがいいだろう。もしかしたらその存在に会えば、僕が来た理由とかもわかるのかもしれない。
まぁ知ったとしてもどうするとか、戻りたいとか、そういう気持ちはないんだけど、ただ知りたいと思う。むしろ僕の不安は唐突にこの世界から元の世界に返されないかというところだ。そんなことが起こらないかはぜひ聞きたいところだ。もちろん簡単に会えるとは思ってないし、そもそもいるかどうかって存在なんだけど。
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