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第三章
セリスの依頼
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ようやく気持ちを落ち着けて帰ってきたけど、あんな風に気持ちを荒げてしまったらちゃんと合格かどうか不安だ。そう思いつつ受付に並んで自分の番になると、なぜか受付ではなく談話室に行くようにといわれた。指定された一番奥の談話室に入るとまさかのマーシャルさんが座って待ち構えていた。
うーん、改めての謝罪とかだったらできればやめてほしいけど、何やら沈痛な面持ちだからやっぱり不合格って通知なのかもしれない。一度合格といったマーシャルさんがあらためて言うとしたらそのくらいだろう。
「とりあえずキオ君。座ってくれ。」
「はい。えっと、やっぱりあのことで不合格になりましたか?」
「ん?あぁ、剣を折ってしまった後のことか。できれば触れたくなかったんだが、あれは完全にこちらのミスだ。申し訳ない。もちろん感情を出さないようにする試験だったので、今後注意するようにとは言うしかないが、合格だ。」
「そう、なんですか。ありがとうございます。」
今後注意するようにといわれて思わずなんか言い返しそうになったけど、注意されて即荒れるのはよくない。それに剣が折れたことは僕にも責任はある。マーシャルさんに完全に当たるのは違う。
「今回呼んだのは合格通知だけではないからだ。これは内密な話になる。だから、感情を表に出さないでくれよ?」
「えっと、はい。」
「君が試験に出た直後に貴族がらみでガロさんに単独指名依頼が入ったそうだ。そして、そのあと連絡がつかない状態になっているそうだ。」
「なんだって!?あ、す、すいません。」
思わず身を乗り出して迫ってしまったけど、今しがた勘定を出さないでといわれたばかりだったから何とかすぐに席に戻れた。
「おちついてくれ。実は詳しい事情は聞かされていないんだ。俺もAランクなんでね。本当はSランク以上じゃないとかかわってはいけない案件なんだろう。」
「なるほど。」
「だがグランドマスターは君にかかわらせるつもりらしい。セリスさんを通じて君にマスタールームに来るように伝えてほしいといわれたんだ。詳しくはそこで聞いてくれ。」
「わかりました。ではすぐに向かいます。」
なんでマーシャルさんを一度通す必要がと思ったけど、落ち着いてといわれて少しだけ冷静に考えられた。ガロはSランクだ。そんな実力の人が失踪あるいは誘拐されたかも何て話、確かに何人にも知ってたら不安になるかもしれない。
僕としてはガロが行方不明というだけで不安だし、すぐにでも探しに行きたいけど、当てもなければ実力不足感慨ない目ないのは確かだ。それでもディバンさんとセリスさんはかかわらせてくれるらしいと言っていた。詳しく聞かなくちゃいけない。
マスタールームをノックして出迎えてもらったら有無を言わせずにとりあえず座らされた。結構まずい状況なのかもしれないと急く気持ちが出てきてしまう。でも目の前にいるのはセリスさんだけだ。ディバンさんがいない。
「まずは来てくださってよかったです。ディバンとしてはキオ君に伝えるのは反対だということだったのですけど、ディバンや私が動くよりもいいと判断したので、キオ君に依頼します。」
「僕に依頼、ですか?どんな内容ですか?」
すぐにガロの話になるかと思ったら依頼の話?それがガロにつながる話なら受けるほかないけど、違うんならばできれば保留したい。
「マーシャルから話は言ってませんか?」
「一応聞きましたけど、詳しくはここで聞くようにと言われて。」
「その件についてです。受けますか?受けませんか?」
これって試されてる?でもそんな場合でもないんだよねこっちは。
「・・・ガロのことについてなら受けます。」
「まぁ及第点としましょう。ですがこれから行く相手のところでは必ず受けないと答えてくださいね。」
「・・・はい。」
やっぱり試されていたようだ。どうやら受けるって言っちゃいけなかったらしい。受けないといっても教えてはくれるつもりだったのかな?焦りすぎるなと言われてるようで落ち着きを少し取り戻す。
「とりあえず結論から言うとガロは無事ですよ。居場所も突き止めています。拘束されているというわけではないのです。」
「そう、なのですか?でも連絡がないと聞いたのですが・・・」
「王都に簡単には戻れない状態なのです。相手の狙いはディバンなのですが、出すわけにはいかないので、キオ君を代わりに出すのです。」
「つまり、身代わりなんですね、僕は。」
「そうです。」
遠慮なく肯定しちゃったよ。だからここにディバンさんがいないわけだ。セリスさん一人で決めた行動ってことみたいだけど、ほんとに従っていいのだ居るか?不安にはなる。でもガロのことを考えれば聞かなくちゃいけない。
「それで、僕はどこに行けば?」
「ここまで聞いて行ってくれるんですか?ですが、ガロのことなら分かっていると思いますが、あなたが心配するようなレベルの方ではないのですよ?」
「わかってる、つもりなんです。でも心配したくなっちゃうんです。」
「ふっ、実はわかりますよその気持ち。なぜなら私もディバンとはそういう関係なので。」
「え?」
「ディバンのほうが圧倒的に優れているのです。別に私が心配などしなくてもすべて簡単に片づけられる力を持っている。私とは比べ物にならないんですよ。」
セリスさんがまさかそんなことを言うなんて思ってもみなかったけど、目が嘘をついてる目じゃない。どことなく悲しいようなさみしいような眼をしている。でもすぐに真剣な表情にと戻った。
「場所は塔の町タイアンにある一番高い塔のイービルロストです。その頂上にガロはいます。そこに行くまでが依頼です。頑張ってくださいね。」
「わかりました。えっと、僕がそこに入れるもの、なんですか?というか行くだけでいいんですか?」
「入るのは誰でもできるんですよ。入るのは、ね・・・」
なんか不穏な言葉とともに転移石を二つ渡される。一つは王都用のしるしが、もう一つは塔のしるしがあるからタイアン行きなんだろう。とんでもない依頼を受けちゃったけど、ガロに会うためならばとも思える。でもまずは下準備だな。
うーん、改めての謝罪とかだったらできればやめてほしいけど、何やら沈痛な面持ちだからやっぱり不合格って通知なのかもしれない。一度合格といったマーシャルさんがあらためて言うとしたらそのくらいだろう。
「とりあえずキオ君。座ってくれ。」
「はい。えっと、やっぱりあのことで不合格になりましたか?」
「ん?あぁ、剣を折ってしまった後のことか。できれば触れたくなかったんだが、あれは完全にこちらのミスだ。申し訳ない。もちろん感情を出さないようにする試験だったので、今後注意するようにとは言うしかないが、合格だ。」
「そう、なんですか。ありがとうございます。」
今後注意するようにといわれて思わずなんか言い返しそうになったけど、注意されて即荒れるのはよくない。それに剣が折れたことは僕にも責任はある。マーシャルさんに完全に当たるのは違う。
「今回呼んだのは合格通知だけではないからだ。これは内密な話になる。だから、感情を表に出さないでくれよ?」
「えっと、はい。」
「君が試験に出た直後に貴族がらみでガロさんに単独指名依頼が入ったそうだ。そして、そのあと連絡がつかない状態になっているそうだ。」
「なんだって!?あ、す、すいません。」
思わず身を乗り出して迫ってしまったけど、今しがた勘定を出さないでといわれたばかりだったから何とかすぐに席に戻れた。
「おちついてくれ。実は詳しい事情は聞かされていないんだ。俺もAランクなんでね。本当はSランク以上じゃないとかかわってはいけない案件なんだろう。」
「なるほど。」
「だがグランドマスターは君にかかわらせるつもりらしい。セリスさんを通じて君にマスタールームに来るように伝えてほしいといわれたんだ。詳しくはそこで聞いてくれ。」
「わかりました。ではすぐに向かいます。」
なんでマーシャルさんを一度通す必要がと思ったけど、落ち着いてといわれて少しだけ冷静に考えられた。ガロはSランクだ。そんな実力の人が失踪あるいは誘拐されたかも何て話、確かに何人にも知ってたら不安になるかもしれない。
僕としてはガロが行方不明というだけで不安だし、すぐにでも探しに行きたいけど、当てもなければ実力不足感慨ない目ないのは確かだ。それでもディバンさんとセリスさんはかかわらせてくれるらしいと言っていた。詳しく聞かなくちゃいけない。
マスタールームをノックして出迎えてもらったら有無を言わせずにとりあえず座らされた。結構まずい状況なのかもしれないと急く気持ちが出てきてしまう。でも目の前にいるのはセリスさんだけだ。ディバンさんがいない。
「まずは来てくださってよかったです。ディバンとしてはキオ君に伝えるのは反対だということだったのですけど、ディバンや私が動くよりもいいと判断したので、キオ君に依頼します。」
「僕に依頼、ですか?どんな内容ですか?」
すぐにガロの話になるかと思ったら依頼の話?それがガロにつながる話なら受けるほかないけど、違うんならばできれば保留したい。
「マーシャルから話は言ってませんか?」
「一応聞きましたけど、詳しくはここで聞くようにと言われて。」
「その件についてです。受けますか?受けませんか?」
これって試されてる?でもそんな場合でもないんだよねこっちは。
「・・・ガロのことについてなら受けます。」
「まぁ及第点としましょう。ですがこれから行く相手のところでは必ず受けないと答えてくださいね。」
「・・・はい。」
やっぱり試されていたようだ。どうやら受けるって言っちゃいけなかったらしい。受けないといっても教えてはくれるつもりだったのかな?焦りすぎるなと言われてるようで落ち着きを少し取り戻す。
「とりあえず結論から言うとガロは無事ですよ。居場所も突き止めています。拘束されているというわけではないのです。」
「そう、なのですか?でも連絡がないと聞いたのですが・・・」
「王都に簡単には戻れない状態なのです。相手の狙いはディバンなのですが、出すわけにはいかないので、キオ君を代わりに出すのです。」
「つまり、身代わりなんですね、僕は。」
「そうです。」
遠慮なく肯定しちゃったよ。だからここにディバンさんがいないわけだ。セリスさん一人で決めた行動ってことみたいだけど、ほんとに従っていいのだ居るか?不安にはなる。でもガロのことを考えれば聞かなくちゃいけない。
「それで、僕はどこに行けば?」
「ここまで聞いて行ってくれるんですか?ですが、ガロのことなら分かっていると思いますが、あなたが心配するようなレベルの方ではないのですよ?」
「わかってる、つもりなんです。でも心配したくなっちゃうんです。」
「ふっ、実はわかりますよその気持ち。なぜなら私もディバンとはそういう関係なので。」
「え?」
「ディバンのほうが圧倒的に優れているのです。別に私が心配などしなくてもすべて簡単に片づけられる力を持っている。私とは比べ物にならないんですよ。」
セリスさんがまさかそんなことを言うなんて思ってもみなかったけど、目が嘘をついてる目じゃない。どことなく悲しいようなさみしいような眼をしている。でもすぐに真剣な表情にと戻った。
「場所は塔の町タイアンにある一番高い塔のイービルロストです。その頂上にガロはいます。そこに行くまでが依頼です。頑張ってくださいね。」
「わかりました。えっと、僕がそこに入れるもの、なんですか?というか行くだけでいいんですか?」
「入るのは誰でもできるんですよ。入るのは、ね・・・」
なんか不穏な言葉とともに転移石を二つ渡される。一つは王都用のしるしが、もう一つは塔のしるしがあるからタイアン行きなんだろう。とんでもない依頼を受けちゃったけど、ガロに会うためならばとも思える。でもまずは下準備だな。
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