そこは獣人たちの世界

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第三章

登塔開始

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その日のうちに昇格試験と同じようにサンドイッチをつくるけど、どのくらいかかるかわからないから1週間分つくった。ガロが三日も捕らえられているかもっていうんだから、僕がすんなり出てこれるとは思ってない。まぁもし残っちゃってもおいおいたべていけばいいし。
そのまま昨日のうちに出ちゃいたい気持ちはあったけど、昇格試験の疲れもあったし一応は寝た。落ち着かなくてちゃんと寝れた気がしなかったけど。それでもガロのいるところに行く。僕が助けられるのかはいまいちわからないけど。
転移石を使って移動する。一瞬視界が白くなりよく見る教会の風景になる。教会内じゃわからないのでさっさと外に出ると、見える範囲ほぼすべてが塔、塔、塔、そして塔。ここが塔の町タイアンか。
多分これ民家が全部塔なんじゃないかな?まぁ塔といっても二階か三階建ての低いものなんだけど、形がしっかりと塔なんだ。ほんとに圧巻だよ。ただちらほらと普通の家もある。そういうところは大体が何かのお店のようだ。
で、目的地はわかる。町の奥のほうにあるのにここからでも存在感のある大きさも高さも別格の塔が見える。あれがイービルロストって塔なんだろう。なんでそんな名前なんだろうか、セリスさんに聞いておけばよかったかな。
向かう道中にギルドもあった。村ではなく町という証拠だろう。もちろん塔ではなく普通に他のギルドと同じ建物だった。セリーヌの町くらいの大きさかな?王都ほど大きくないけど、普通の建物に比べれば大きいはずだ。なのに小さく感じるのは完全に周りが塔だらけのせいだろう。

「うわ、でっか・・・」

イービルロストの前まで来るとよりわかる。今まで見てきた建物より縦方向は確実にでかい。元居た世界の高層ビルよりもでかい。一度上ったこともある333メートルの電波塔くらいはあるんじゃないだろうか?
縦だけじゃなく横にも広いってのがすごい。この町のギルドくらいには広いんじゃないだろうか。それが上まで続いてるんだから大きさに唖然としたってしょうがないだろう。それにしても、この辺一帯には建物がないんだな。

「君、この塔に何か用かい?それとも見学かな?」

「え?あ、えっと、一応登ろうかと思って。」

上を眺めていたら声をかけられて驚いたけど、声のするちょっとした方向を見ればかなり小柄なリス種の人だった。体格に似合わないくらい大きいしっぽが特徴的だ。どうやら塔から出てきたみたいだ。素直に答えちゃってよかったんだろうか?

「ほう、塔を上りたいんだ。」

「誰でも入って登っていいと聞いたんですけど、間違ってましたか?」

「その情報に間違いはないけど、このイービルロストを知ってる人ならまず登ろうとはしない。何しろ50階もあるからね。入るなら我がご主人様に正式な面会依頼を入れるだろうね。そうすれば上まで直通の道をこちらで案内するから。」

「そ、そうなんですか。でも、登らせてもらいます。」

多分僕では正式な面会依頼を入れることはできないんだろう。まぁ一応この塔の人に登ってもいいといわれたんだ。堂々と入って登っていくしかない。
関係ないけど見た目はかわいらしいのに声色が太いなこの人。あとご主人様といった。もしかしたら奴隷なんだろうか?普通に仕えているだけかもしれないけど、どちらにせよ貴族がかかわってるってことだよね。まぁこの塔も貴族の趣味っぽい感じはする。そう思うと権力の象徴という感じがしてきて、ほんとに上っていいのかちょっと不安になってきた。まぁガロがいるはずだから登るんだけれど。

「では気を付けて登ってくれよ。死体処理はごめんだからね。」

「え?」

すさまじく不穏な言葉を残して塔にと入っていってしまった。そして僕も後を追うように入ったはずなのにもう一階にはリス種の人の姿がなかった。どうなってるんだ?いや、考えてもしょうがないか。すぐ上に登る階段は見える。早速登っていこう。

「うわ・・・」

そして二階にはとんでもない光景になっていた。思わず声をあげちゃうのもしょうがないだろう。床に無数の針がひしめいているんだから。一応上に続く階段までまっすぐ道は開いてるんだけど、それが異様。何か仕掛けがあるのかもしれない。
いつでも後ろの飛びのけるように魔素纏いによる身体強化を行っておく。そのうえでゆっくりと道を進んでいく。道の左右の針は刺されば足を孵化部がと抉るくらいには長く太い。この道にもおんなじ針が突然出てくる可能性はある。
激しく警戒してたけど、特にそういう罠はなくとりあえず階段までこれた。とはいえ階段だって完全に安全という保証はないわけで、魔素纏いを外すわけにはいかない。
今度は二階、さっきよりも針が長くなっている。そして道がまっすぐじゃなく曲がった道になっている。こんな調子でいつどいう罠があるかもわからないのが50階も続くのか。でも引くわけにはいかない。とりあえず同じように針のない道を進んでいこう。
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