そこは獣人たちの世界

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第三章

特訓再開

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うっすらと意識が戻り始める。外からの光がかなり強い。寝ぼけつつ時計を見ると昼過ぎまで寝てしまってたようだ。ガロはと探したけど、寝室にはいなかった。まぁ先に起きてるよね。さっさと下りてお昼作らなきゃかな。
そう思ったけどリビングにもいない。机に書置きだけ置いてあった。どうやら先にギルドで情報を集めに行っちゃったらしい。起きたら地下訓練所に居ろって書いてあるし、お昼を食べたら向かうか。
Cランク昇格試験の時も、そのあとの塔もそうだったけど、今後はもしかしてこうして別行動とることも多くなるんだろうか。パートナーだから完全に違う依頼とかはあんまないだろうけど、できるだけ一緒に居たい。
ちょっと憂鬱な気分になりつつもギルドの地下訓練所に入れば集中力も出てくる。ガロが来るまでは闇魔法の練習だな。ぶっつけ本番がたまたまうまくいったからって次もまたうまく使えるとは到底思えない。熟練度をあげなくちゃ。
闇魔法に嫌な思い出があるっちゃあるけど、仕える手段は増やさないと。僕はガンの魔法までしか扱えないんだから。まずはバレットを使えるのか試さないとな。一度使ったから闇のイメージはできる。それを礫状に形成するのもそれほど難しくはなさそうだ。

「ダークバレット。」

前にかざした手の目の前にほぼ黒のような深い紫色の礫が出来上がる。不気味というか異様というか、嫌な思い出云々じゃなく不快感のある感じ。まぁ闇ってそういうもんだと割り切るしかない。一回引っ込めて壁から的引っ張り出して用意する。

「ダークバレット!」

少し離れたところから打ち出すと、闇の礫が十字の的に突き刺さる。別にへこんだりもしなくて威力は微妙かと思ってたら、礫が消えると当たったところが木らしい茶色から闇と同じほぼ黒い紫色に変色していた。

「なにこれ?ガロが来てから聞けばわかるかな?」

まるで腐っていくかのように木がどんどん変色していく。まるで毒が広がるようで怖い。というか魔法そのものは消えたのに効果が残るタイプなのか。水とか火ですら消えるっていうのに。いや、意識すると僕でもある程度影響を残せるけど。
首をかしげてるとゴンゴンと障壁を叩く音が聞こえてくる。振り返ればガロの姿が見えた。わからないことは聞くしかない。さっさと障壁を開けてガロが入ってきたらすぐに障壁を見えない障壁にと切り替える。

「どうしたんだ?そんな慌てて。」

「ね、ねぇガロ。闇系の魔法ってあぁ言う効果があるの?」

「ん?これは腐蝕か腐敗?いや、闇ってことは闇崩れか。」

「闇崩れ?」

「あぁ、現象自体は腐蝕に近いな。闇によって犯されて脆くなる。」

どっちかっていうと脆弱化みたいな感じなのかな?もしかしてガロに買ってもらった剣が折れたのもマーシャルさんの闇纏いで脆くなってたのが原因なのかも。

「それよりキオ。俺の買ったハンガーはどうした?使っていたのは安めのハンガーソードだっただろ。」

「えっと、それは、昇格試験の時に折られちゃって。」

「なに!?」

う、やば。これ怒られる流れだよね。管理が甘いとか受け方が甘かったとか。かなり怖い目してるもん、この後の特訓がもっとやばくなるよこれ。

「なににやられたんだ?タピスの森から出なければそんなやばい魔物はいなかったはずだ。いや、たとえ森の奥に行き過ぎてビッグフォレストベアに出会ってもキオなら剣を折られはしないだろ?」

「えっと、魔物じゃなく試験官になったマーシャルさんに折られちゃったんだけど。」

「マーシャルか、なるほど。そういえば闇もマーシャルのを見てって言ってたな。闇纏いで折られたってことか。そこまであいつの力を引き出したことをほめるべきか。それともマーシャルに折ったことの請求をするべきか。」

ガロが階段のほうをぎろりとにらむ。怒ってるのが僕にじゃなくマーシャルさんになったのはいいけど、後でどうなることやら。でも折られたことはまだ根に持ってるから知らないっと。

「まぁ、おかげで上質な片手ハンガーをもらえちゃったんだけどさ。」

「ショートハンガーな。確かに上物だが、Cランク祝いに俺が買ってやってもよかったのに。」

僕がポーチから取り出した片手ハンガーじゃなくってショートハンガーを見て渋い顔をする。そっか、Cランク祝いに上質な武器を買ってくれる予定だったのか。うーん、ならもらったのはミスだったかも?

「まぁ言ってもしょうがないな。盾も出せ、どんどん盾と片手剣での受け身練習させていくぞ。」

「ひぇ、そ、それでやるの?」

「あぁ、本格的に徹底的にやるぞ。」

ガロが取り出したのは愛用してる大剣。いつも使ってるのを見てるからこそどれだけすごいのかわかってる。手加減はしてくれるだろうけど、構える手がちょっと震える。
当然のように剣を持つ右側から大剣を迫ってくる。だからって剣で受けちゃだめだ。しっかり体をそらして盾で受ける。もちろんバックラー型のこの小さい盾で完全に受けたりはしない。盾は剣の平部分を押すように大剣をそらしきる。
ちらっと見たガロの顔が笑った。剣で切りに行けるような余裕はないなこりゃ。すぐさままた右側から大剣が迫ってくる。体勢は崩れてはないけど盾をそっちに出そうとしてもまにあわない。しょうがなく剣で受ける。これも刃同士でぶつかり合わせるようなことはしちゃいけない。ただでさえ小さくなってるんだから。平部分をかちあげるようにして一瞬だけ止める、さらに体を反転させて盾で受け流す。

「悪くない動きだ。どんどんいくぞ!」

「うぅ、が、がんばるよ。」

ちょっと声はかけられるけどまたすぐに大剣が迫ってくる。休むような余裕なく、夕刻まで受け流し訓練が続いた。
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