そこは獣人たちの世界

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第三章

剣のお買い物

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大森熊を倒して王都に転移後、ギルドで討伐報告、死体は解体屋に預けてそれなりのお金にはなった。まだお昼前だしこの後ギルドで特訓かとちょっと思ってたけど、外に出てかなり大きな武器屋にと連れてきてもらっていた。
外に見えるようにガラスの前に装飾も派手な大きな剣や斧に槍、盾なんかも飾ってあって一目で武器屋だとはわかるけど、中に入ると雑多に人が箱から剣とか槍とか斧なんかの武器をいろいろ出してみている。だけど外に飾ってたような綺麗な武器はない。
店が大きい割にはと思ったけど、上の階もあるみたいだから高価なのはここにはないのかな。なんて考えてたらすぐにこっちに狐種の店員さんが近寄ってきた。

「いらっしゃいませ!まさかまさか、雷剣のガロ様がご来店とは、ありがとうございます。本日はどのようなご用件で?」

「こいつの、キオの剣を買おうと思ってな。ハンガーは取り扱ってるか?できるだけ質のいい長剣サイズのハンガーがいいんだが。」

来店早々に出入り口で対応してくれたのはいいけど、雷剣って呼ばれてちょっと不快感を込めた言葉で返しながら僕を前に出す。かっこいいと思うんだけど、そう呼ばれるのはあんまり好きじゃないっぽい。まぁ周りの目もこっちに向くからなんだろうな。

「おぉ、君が最近うわさの虹弾のキオ様ですね。Cランクにしてすでに二つ名で呼ばれてるなんて、さすが雷剣のガロ様のパートナーに選ばれるだけありますね。」

「え?えっと、こうだんって何ですか?」

「8属性による8色の弾丸を操るので虹弾ですね。ギルド役員の間でうわさになっていますよ。」

・・・虹って7色じゃなかっけ?あ、でもまった。確かガディアが8色の盾を出した時も虹の盾って言ってた気がする。この世界では虹といえば8色ってイメージなのかもしれない。元の世界でも実際に7色かは微妙だし。

「そうなんですね、とりあえず武器のほう、よろしくお願いします。」

「おっと、すいません。つい舞い上がってしまいました。質のいい剣でしたら3階へとご案内します。」

狐種の人に階段にと案内されて登りながらちょっぴりとうれしくなる。ついにというか、早くもというのかわからないけど、僕にも二つ名が着いたってわけだ。ちょっと虹弾って言葉の響きがいまいちだけど、文字ならかっこいいんじゃない?
なんて浮かれてる間に2階につく。なぜか3階の階段前にも2人も店員さんがいたけど僕たちを連れた狐種の人が軽くお辞儀するだけで通り過ぎて3階に到着した。
一階とは大違いでショーケースに一つ一つ丁寧にしまい込まれてる。そのどれもが剣、ここには剣しかない。剣専用のフロアってことなのか。さっきの2人はお客が一人で登らないようにしてるってことなのかな。

「確かハンガーの長剣ですね。でしたらこのあたりはどうでしょうか。ダマスク産の鉄を半分ほど使ったものです。細かに長さや重さが違うので、試してみてください。」

「えっと、半分なんですか?全部ダマスク産ではなく?」

「それは、申し訳ありません。この王都店では完全ダマスク産の武器は手に入りづらいのです。聖都から発注する形になりますが、数が少ないのでまず在庫確認からになります。また直接見て選べませんし、発送費が加算されてしまいます。」

「・・・キオ、王都ではダマスク鉄を仕入れるのが限界で、それも多い量じゃない。短剣くらいならば完全なものも作るだろうが、ここまでの長剣レベルだと聖都でも数は少ないだろうし、ダマスクに行く余裕はない。質としてはどれも悪くない。試し振りさせてもらえ。」

「あ、うん。」

「試し振りは中央でどうぞ。希望があれば的もご用意します。」

どうやら僕がゴウさんからもらったショートハンガーは長さとしては短めとはいえ結構なもののようだ。ダマスクってところに直接行けば買えるものなんだろうけど、王都でも売ってないとは思わなかった。
まぁ正直武器の質といわれても僕はピンとは来ない。今だって10はあるハンガーを見たって長さが微妙に違うなってとこと握りの装飾の違いくらしかわからない。とりあえず一番質素な茶色の革が握りになってる剣を手に取る。
・・・少し重い?長さもこれが一番あるようだけど。いそいそと部屋の真ん中に行く。この辺だけ床が青い円になってて周りにショーケースもない。この中で振れってことだろう。まずは振り下ろし、重さで結構威力が出そうだ。ただ振り上げは若干重め。別に持ち上げられないほどじゃないけど、慣れは必要かも。

「キオ、それは少し重すぎるんじゃないか?」

「そうかも?」

「でしたら少々お待ちください。こちらでしょうでしょう?」

すぐさまハンガーのショーケースに戻って一振り持ってきてくれる。白と青のストライプの装飾の握りの剣だ。刃の部分を横に両手で持ち、握り部分を軽くこちらに出してくれてる。丸で剣の授与だななんて思いつつ片手で受け取ると、すぐさまもう一つの剣を手を出して受け取ってくれた。
それにしても、この剣、さっきと比べると全然軽い。鉄の比重ってこんなに違うものなのか。いや、この剣の幅がちょっと他より狭いからか?とりあえず振り上げ、薙ぎ払いどっちも悪くない。ちょっと振り下ろしは威力が足りない気もするけど。

「悪くないなさどうだが、どうだ?」

「うーん、振り下ろしが威力不足じゃないかな?」

「では的をご用意しますので、たたき割ってみて試してください。」

少し僕にずれるように手で合図すると、床の真ん中をガンガンと足で叩く。すると真ん中から木の丸太が出てくる。うん、つくづく思うけど、やっぱり的といえば木の丸太なんだね。まぁ一番打ち込みやすいからいいけど。
店員さんがどいたのを確認してまっ直ぐ振り下ろしを打ち込む。剣の勢いと一応僕の力で丸太はちょっと歪に二つに割れた。ただなんというかいまいちという気がする。

「ダメだな。間のはあるか?」

「はい、ございます。こちらです。」

いつの間にかまた別の一振りを持ってきてくれている。長さ、幅、どっちもさっきの二つの中間。重さはよくわからないけど中間なんだろう。確かにしっくりくる感じだ。ただ握りの部分が、ちょっと赤すぎて派手なのがあれだけど。
すぐに丸太も片付けられて新しい丸太を用意してくれた。再び丸太に向かって勢いよく振り下ろす。今度はそれほど力は必要なく、綺麗に真っ二つに切れた。うん、これにしよう。

「これでお願いします。あ、でも、できれば握りの部分はあの茶色の革にしていただきたいんですけど。」

「さすがキオ様ですね。かしこまりました。ご用意させますのでお待ちください。」

何がさすがなんだろうと思って店員さんが剣をもって奥にと下がった後にガロのほうを見ると、何やらジト目をしていた。えっと、どういうことなんだろう?

「ガロ、さっきのってどういうこと?」

「あれだけデュアルヘッドブルの革ってことだ。他二つはアセンブリスパイダーの糸だな。全然質が違う。」

「そ、そうなんだ。もしかして、かなり高くなる?」

「いや、金のことは気にしなくていい。俺が出すからな。」

あぁ、ごまかしたってことはかなり高くなるんだろうな。僕はただ装飾の無い茶色がよかっただけなんだけど、失敗しちゃった・・・糸で茶色にしてもらうんだった。
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