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第三章
幸せな時間
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「ではこちらでよろしいでしょうか?」
「えっと、ありがとうございます。」
戻ってきた狐種の店員さんから握り部分がちゃんと双頭牛の革になったさっきのハンガーを受け取る。ちらっとガロのほう見たけど表情はあんま変えてない。変えてないけどさっきの様子からしてもやれやれって感じがひしひし伝わってくる。
「鞘のほうはどうしますか?こちらでご用意いたしましょうか?」
「あ、前の剣の鞘があるので・・・」
「少し長さも幅も違うから入らないぞ。」
「うっ、そっか。どうすればいい?」
「まぁ暴れ牛の革で鞘を作るのがいいだろ。できるか?」
「かしこまりました。サイズは取ってありますので明日にまたご来店ください。」
「よし、行くぞ。」
そのまま一階まで店員さんに見送られて店を出る。行くっていうのはたぶん、ギルドだろうなぁ。新しい剣だからもっとしっかり試し打ちと受け流し訓練になるだろう。
「やっぱりギルドに?」
「ん?何言ってるんだ?もう帰るんだよ。」
「え?」
「もう昼の時間だろ?まずはキオの作り立ての昼を食いたい。2日後には聖都に行く。あっちで料理が作れる環境が整うかわからないからな。悪いがサンドイッチでいいから用意してもらうぞ?」
「そっか、そうだよね。了解。」
聖都に行くってのはわかってたけど、王都と同じ都ってくらいだからガロの別荘があるもんだと思っちゃってた。滅多に行くところじゃないって言ってたしあるわけないよね。それにしてもポーチに入れればほぼ作り立てと同じ味がするっていうのに、作り立てがいいって、なんかうれしいな。
「まぁあと、夜は長くなるからな。」
「あ・・・うん。」
こんな街中でなんて思ったりもするけど、僕らのそれほどおおきくない会話だし、急接近して耳を済ませたりしなければ他の人辰の会話の雑音に消えちゃうだろう。
そもそも明確に何をするって言ってるわけじゃない。僕にはわかることで、勝手に恥ずかしくなっちゃってるだけ。ただ恥ずかしいけど、もう前みたいにいやって言ったりせず、すんなり受け入れちゃってる。離れてた後、急激に恋しくなっちゃってたから、もう今更かなと思えるようになってきた。
「それより何で革がよかったんだ?糸のままでもよかっただろ?」
「えぇ?あんな派手な赤は嫌だよ。握りで見えにくいとはいえ茶色とかがよかったの。別に革がよかったってわけじゃないから茶色の糸でっていえばよかったって思ったよ。」
「あぁ、なるほど、そっちか。知ってると思うが双頭牛は強い魔物というわけじゃないがあまりいない希少種だ。皮が丈夫で古い時代に乱獲されすぎたのが原因ともいわれてるし、そういう生態とも言われてるがな。」
「うぅ、余計にお金使っちゃう結果になってごめん。」
「いや、金はいいんだ。握りにこだわる必要はあまりないと思ってただけなんだが、色の好みならしょうがない。」
そう言って軽く僕にだけ見えるように笑ってくれた。すぐにいつもの外での表情に戻っちゃったけど、なんかうれしくなっちゃう。それだけで家までの帰り道がなんか楽しい。
「よし、じゃあ昼は唐揚げな。」
「やっぱりそれなんだね・・・まぁいいよ。作って上げる。塩?醤油?」
「醤油の気分だな。」
「了解。」
実は塔から帰ってきて次の日も何か食べたいものはって聞いたら唐揚げ。いつもならバランスがって思ってたけど、何日か離れてたのもあって結局作っちゃった。もちろん味を塩に変えて。でもそしたら昨日と味が違うけど美味いって騒ぎ始めて、また次の日も醤油と塩のからあげだった。ただそれでどっちがどっちの味かは覚えてもらえたみたい。
そしてやっぱり好きなのは醤油のようだ。まぁ味が濃いからなんだろうけど、僕と一緒でちょっとうれしい。二日開けたし唐揚げでもいいだろう。というか作り立てがいいっていうガロの食べたいものを作って上げたい。いやまぁ明日も最後だからって言ってガロは唐揚げっていうだろうけど。
なんというか塔以来からさらにのせられやすくなってる気がする。いやまぁ、そりゃ荒れするときはもっと載せられやすかった気もするけど・・・まぁ別にいっか。ガロになら。さぁ出来上がったからあげを持って行ってあげよう。もちろん付け合わせのサラダと一緒に食べるご飯もね。
「はい、おまたせ。」
「おぉ、やっぱこれはいい。匂いもこのジュワジュワと聞こえる音もな。よし、いただきます。」
「うん、いただきます。」
いただきますの合図とともに結構大量に積み上げた唐揚げがどんどんなくなっていく。そしてガロはご飯もバクバク食べていく。僕は昼からそれほどは食べられないからご飯も少なめ、唐揚げもちょっとつまむくらい。
でもこうして二人で机に向かってご飯を食べてる時間が当たり前のようで、いつ終わるかもわからないという不安感もある。もう完全に元の世界に帰りたいとは思ってない。でもこっちの世界に来た理由も原因もわからないままで、もしかしたらって頭によぎる。
まだこっちに着て一年もたってないのにこんなにも離れがたい存在ができちゃった。向こうにはもうそんな存在は誰一人としていない。僕はもう、戻りたくはないんだ・・・
「えっと、ありがとうございます。」
戻ってきた狐種の店員さんから握り部分がちゃんと双頭牛の革になったさっきのハンガーを受け取る。ちらっとガロのほう見たけど表情はあんま変えてない。変えてないけどさっきの様子からしてもやれやれって感じがひしひし伝わってくる。
「鞘のほうはどうしますか?こちらでご用意いたしましょうか?」
「あ、前の剣の鞘があるので・・・」
「少し長さも幅も違うから入らないぞ。」
「うっ、そっか。どうすればいい?」
「まぁ暴れ牛の革で鞘を作るのがいいだろ。できるか?」
「かしこまりました。サイズは取ってありますので明日にまたご来店ください。」
「よし、行くぞ。」
そのまま一階まで店員さんに見送られて店を出る。行くっていうのはたぶん、ギルドだろうなぁ。新しい剣だからもっとしっかり試し打ちと受け流し訓練になるだろう。
「やっぱりギルドに?」
「ん?何言ってるんだ?もう帰るんだよ。」
「え?」
「もう昼の時間だろ?まずはキオの作り立ての昼を食いたい。2日後には聖都に行く。あっちで料理が作れる環境が整うかわからないからな。悪いがサンドイッチでいいから用意してもらうぞ?」
「そっか、そうだよね。了解。」
聖都に行くってのはわかってたけど、王都と同じ都ってくらいだからガロの別荘があるもんだと思っちゃってた。滅多に行くところじゃないって言ってたしあるわけないよね。それにしてもポーチに入れればほぼ作り立てと同じ味がするっていうのに、作り立てがいいって、なんかうれしいな。
「まぁあと、夜は長くなるからな。」
「あ・・・うん。」
こんな街中でなんて思ったりもするけど、僕らのそれほどおおきくない会話だし、急接近して耳を済ませたりしなければ他の人辰の会話の雑音に消えちゃうだろう。
そもそも明確に何をするって言ってるわけじゃない。僕にはわかることで、勝手に恥ずかしくなっちゃってるだけ。ただ恥ずかしいけど、もう前みたいにいやって言ったりせず、すんなり受け入れちゃってる。離れてた後、急激に恋しくなっちゃってたから、もう今更かなと思えるようになってきた。
「それより何で革がよかったんだ?糸のままでもよかっただろ?」
「えぇ?あんな派手な赤は嫌だよ。握りで見えにくいとはいえ茶色とかがよかったの。別に革がよかったってわけじゃないから茶色の糸でっていえばよかったって思ったよ。」
「あぁ、なるほど、そっちか。知ってると思うが双頭牛は強い魔物というわけじゃないがあまりいない希少種だ。皮が丈夫で古い時代に乱獲されすぎたのが原因ともいわれてるし、そういう生態とも言われてるがな。」
「うぅ、余計にお金使っちゃう結果になってごめん。」
「いや、金はいいんだ。握りにこだわる必要はあまりないと思ってただけなんだが、色の好みならしょうがない。」
そう言って軽く僕にだけ見えるように笑ってくれた。すぐにいつもの外での表情に戻っちゃったけど、なんかうれしくなっちゃう。それだけで家までの帰り道がなんか楽しい。
「よし、じゃあ昼は唐揚げな。」
「やっぱりそれなんだね・・・まぁいいよ。作って上げる。塩?醤油?」
「醤油の気分だな。」
「了解。」
実は塔から帰ってきて次の日も何か食べたいものはって聞いたら唐揚げ。いつもならバランスがって思ってたけど、何日か離れてたのもあって結局作っちゃった。もちろん味を塩に変えて。でもそしたら昨日と味が違うけど美味いって騒ぎ始めて、また次の日も醤油と塩のからあげだった。ただそれでどっちがどっちの味かは覚えてもらえたみたい。
そしてやっぱり好きなのは醤油のようだ。まぁ味が濃いからなんだろうけど、僕と一緒でちょっとうれしい。二日開けたし唐揚げでもいいだろう。というか作り立てがいいっていうガロの食べたいものを作って上げたい。いやまぁ明日も最後だからって言ってガロは唐揚げっていうだろうけど。
なんというか塔以来からさらにのせられやすくなってる気がする。いやまぁ、そりゃ荒れするときはもっと載せられやすかった気もするけど・・・まぁ別にいっか。ガロになら。さぁ出来上がったからあげを持って行ってあげよう。もちろん付け合わせのサラダと一緒に食べるご飯もね。
「はい、おまたせ。」
「おぉ、やっぱこれはいい。匂いもこのジュワジュワと聞こえる音もな。よし、いただきます。」
「うん、いただきます。」
いただきますの合図とともに結構大量に積み上げた唐揚げがどんどんなくなっていく。そしてガロはご飯もバクバク食べていく。僕は昼からそれほどは食べられないからご飯も少なめ、唐揚げもちょっとつまむくらい。
でもこうして二人で机に向かってご飯を食べてる時間が当たり前のようで、いつ終わるかもわからないという不安感もある。もう完全に元の世界に帰りたいとは思ってない。でもこっちの世界に来た理由も原因もわからないままで、もしかしたらって頭によぎる。
まだこっちに着て一年もたってないのにこんなにも離れがたい存在ができちゃった。向こうにはもうそんな存在は誰一人としていない。僕はもう、戻りたくはないんだ・・・
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