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第十九話 みんなの太陽
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無事に目的地に着いた私達は、この村の長老様であるお爺様に大歓迎をされていました。
「ああ、シエル様……ご無事で本当に良かった……!」
「ご心配をおかけして、申し訳ございませんでした」
「良いのです。あなた様がご無事なら、それで……!」
私は彼らの直面している問題を、何も解決できなかったというのに、村長様も村の方々も、私の安否を心から案じ、再会を喜んでくれております。
本当に、優しいお方ばかり……こんな人達を未だに救えていない自分の無能さに腹が立ちますし、苦しめている家族への怒りが増していきます。
「シエル様が嫁がれてから、村人達は元気を無くしてしまって……明日への希望が持てず、仕事にも手が付かない者が増えました。どうやら他の村でも、あなた様がいなくなったと聞いて、同じ気持ちになっているようです」
「……シエルは、皆様の希望であり、太陽のような人物だったのですね」
「仰る通りです」
そ、そんなに褒められるような、大それたような人間ではないと思うのですが……正直恥ずかしいです。
「村長様、本日は彼に協力してもらって、お忍びで来ているので、なるべく外部のお方に私が来たことは漏らさないようにお願いいたします。特に、フィルモート家の方々に」
「わかりました。この村や他の村人にも、周知しておきましょう」
「ありがとうございます」
フィルモート家の領地に住む方々は、貧困をなんとか乗り越えるために、固い絆で結ばれております。
だから、あらかじめ私がお願いをしておけば、秘密が漏れてしまうことはないだろうと断言出来ますわ。
「えっと、そちらのお方……エヴァン様でしたかな?」
「はい。エヴァン・シャルディーと申します」
「シエル様にご協力くださり、誠にありがとうございます。ローラン様が亡くなって、別の人と婚約させられたと聞いた時は、いても立ってもいられませんでしたが……あなたのような優しい人で、本当に良かった」
「ご安心ください、村長様。エヴァン様はとっても優しくて、素晴らしいお方ですわ」
「…………」
ありのままにエヴァン様のことを村長様にお伝えしただけなのですが、エヴァン様は無表情なまま視線を逸らしました。
きっと照れてしまったのでしょうね。こういうところ、とっても可愛らしいと思いませんこと?
「それで、本日は皆様にお会いできたのは喜ばしいのですが、まだ皆様をお救いする方法は見つかって無くて……とにかく、私の無事を伝えたかったのです」
「そのお気持ちだけで、我々にとっては救いなのですよ。だから気にせず――」
「村長、大変だ! 例の患者が!」
村長様とお話をしていると、この村の若い男の人が、血相を変えて飛び込んできました。
「って、うお!? し、シエル様ですよね!? なんであなたがここに!?」
「お久しぶりです。今日はお忍びですので、大きな声はお控えくださるとありがたいですわ」
「え、ええ。わかりました……ああビックリした……元気そうで、本当に嬉しいです!」
「私もあなた様に再会できて、とても嬉しいですわ。それで、患者とは?」
「実は、シエル様が嫁いでから数日後に、近くの森で血まみれで倒れている人を見つけたんです!」
血まみれですって!? この近くの森には、人を襲うような、凶暴な動物は生息していないはずなのに……!
「わかりました。説明は行きながら聞きますわ! その患者様の元に、案内してください! エヴァン様は、ここで少し休憩なさっててください!」
「いや……俺も行く。もしかしたら、その人物を襲った存在が、どこかに潜んでいるかもしれないからな」
「それは……絶対に無いとは言い切れませんわ。何度も頼ってしまって申し訳ないのですが……」
「君の力になれるのなら本望だ。そこの御仁、我々をその患者の元に案内してくれないか?」
「わかりました。こっちです!」
「はい! 村長様、失礼しますわ!」
私は手短に挨拶をしてから、彼の案内の元、患者のいる場所へと向けて走り出しました。
いつものフリフリのドレスや、ヒールが高い靴じゃなくて、歩きやすい服とブーツなのは、不幸中の幸いでしたわ。
この辺りの道は整備が不十分ですので、運動音痴の私がいつもの格好で走ったら、数秒もしないうちに転んで怪我をしていたでしょう。
「あの、その患者とは、この村のお方なのですか?」
「それが、どこの誰か全くわからないんです。他の村の人間でもないらしく……森で見つかった時にはボロボロでしたし、片腕は無いですし、よく生きていたなってぐらい酷くて……」
この村のお方じゃなくて安心したというべきか、よそのお方が迷い込んできて不安視するべきか、なんとも言えませんが……誰であろうと、苦しんでいるお方を放ってはおけませんわね。
「それで、大きな町の病院に連れていきたかったのですが、彼の身分証明書が無くて、関所から外に出させてもらえず……仕方なく、薬を買って看病をしてました。今日も、領地の外から来た商人から薬を買ったので、それを使おうとしたら酷く苦しみだして……それで、村長様を呼びに行ったんです」
「あの商人様がここに商売をしに来たのは、それが理由だったのですね。なんにせよ、私の聖女の力なら、きっと治せるはずですわ!」
「頼もしいです! あ、見えてきました! あの小屋です!」
自慢のように聞こえてしまうかもしれませんが、私の聖女の力あれば、きっと大丈夫。そう思いながら、案内された小屋に入りました。
「えっ……嘘でしょう……!?」
急いで患者の状態を確認した私は、思わず両手で口を覆って驚いてしまいました。
なぜなら、そこで苦しんでいたのは、ローランお兄様の住んでいたトラルキル家に仕えていた、若い使用人だったのだから――
「ああ、シエル様……ご無事で本当に良かった……!」
「ご心配をおかけして、申し訳ございませんでした」
「良いのです。あなた様がご無事なら、それで……!」
私は彼らの直面している問題を、何も解決できなかったというのに、村長様も村の方々も、私の安否を心から案じ、再会を喜んでくれております。
本当に、優しいお方ばかり……こんな人達を未だに救えていない自分の無能さに腹が立ちますし、苦しめている家族への怒りが増していきます。
「シエル様が嫁がれてから、村人達は元気を無くしてしまって……明日への希望が持てず、仕事にも手が付かない者が増えました。どうやら他の村でも、あなた様がいなくなったと聞いて、同じ気持ちになっているようです」
「……シエルは、皆様の希望であり、太陽のような人物だったのですね」
「仰る通りです」
そ、そんなに褒められるような、大それたような人間ではないと思うのですが……正直恥ずかしいです。
「村長様、本日は彼に協力してもらって、お忍びで来ているので、なるべく外部のお方に私が来たことは漏らさないようにお願いいたします。特に、フィルモート家の方々に」
「わかりました。この村や他の村人にも、周知しておきましょう」
「ありがとうございます」
フィルモート家の領地に住む方々は、貧困をなんとか乗り越えるために、固い絆で結ばれております。
だから、あらかじめ私がお願いをしておけば、秘密が漏れてしまうことはないだろうと断言出来ますわ。
「えっと、そちらのお方……エヴァン様でしたかな?」
「はい。エヴァン・シャルディーと申します」
「シエル様にご協力くださり、誠にありがとうございます。ローラン様が亡くなって、別の人と婚約させられたと聞いた時は、いても立ってもいられませんでしたが……あなたのような優しい人で、本当に良かった」
「ご安心ください、村長様。エヴァン様はとっても優しくて、素晴らしいお方ですわ」
「…………」
ありのままにエヴァン様のことを村長様にお伝えしただけなのですが、エヴァン様は無表情なまま視線を逸らしました。
きっと照れてしまったのでしょうね。こういうところ、とっても可愛らしいと思いませんこと?
「それで、本日は皆様にお会いできたのは喜ばしいのですが、まだ皆様をお救いする方法は見つかって無くて……とにかく、私の無事を伝えたかったのです」
「そのお気持ちだけで、我々にとっては救いなのですよ。だから気にせず――」
「村長、大変だ! 例の患者が!」
村長様とお話をしていると、この村の若い男の人が、血相を変えて飛び込んできました。
「って、うお!? し、シエル様ですよね!? なんであなたがここに!?」
「お久しぶりです。今日はお忍びですので、大きな声はお控えくださるとありがたいですわ」
「え、ええ。わかりました……ああビックリした……元気そうで、本当に嬉しいです!」
「私もあなた様に再会できて、とても嬉しいですわ。それで、患者とは?」
「実は、シエル様が嫁いでから数日後に、近くの森で血まみれで倒れている人を見つけたんです!」
血まみれですって!? この近くの森には、人を襲うような、凶暴な動物は生息していないはずなのに……!
「わかりました。説明は行きながら聞きますわ! その患者様の元に、案内してください! エヴァン様は、ここで少し休憩なさっててください!」
「いや……俺も行く。もしかしたら、その人物を襲った存在が、どこかに潜んでいるかもしれないからな」
「それは……絶対に無いとは言い切れませんわ。何度も頼ってしまって申し訳ないのですが……」
「君の力になれるのなら本望だ。そこの御仁、我々をその患者の元に案内してくれないか?」
「わかりました。こっちです!」
「はい! 村長様、失礼しますわ!」
私は手短に挨拶をしてから、彼の案内の元、患者のいる場所へと向けて走り出しました。
いつものフリフリのドレスや、ヒールが高い靴じゃなくて、歩きやすい服とブーツなのは、不幸中の幸いでしたわ。
この辺りの道は整備が不十分ですので、運動音痴の私がいつもの格好で走ったら、数秒もしないうちに転んで怪我をしていたでしょう。
「あの、その患者とは、この村のお方なのですか?」
「それが、どこの誰か全くわからないんです。他の村の人間でもないらしく……森で見つかった時にはボロボロでしたし、片腕は無いですし、よく生きていたなってぐらい酷くて……」
この村のお方じゃなくて安心したというべきか、よそのお方が迷い込んできて不安視するべきか、なんとも言えませんが……誰であろうと、苦しんでいるお方を放ってはおけませんわね。
「それで、大きな町の病院に連れていきたかったのですが、彼の身分証明書が無くて、関所から外に出させてもらえず……仕方なく、薬を買って看病をしてました。今日も、領地の外から来た商人から薬を買ったので、それを使おうとしたら酷く苦しみだして……それで、村長様を呼びに行ったんです」
「あの商人様がここに商売をしに来たのは、それが理由だったのですね。なんにせよ、私の聖女の力なら、きっと治せるはずですわ!」
「頼もしいです! あ、見えてきました! あの小屋です!」
自慢のように聞こえてしまうかもしれませんが、私の聖女の力あれば、きっと大丈夫。そう思いながら、案内された小屋に入りました。
「えっ……嘘でしょう……!?」
急いで患者の状態を確認した私は、思わず両手で口を覆って驚いてしまいました。
なぜなら、そこで苦しんでいたのは、ローランお兄様の住んでいたトラルキル家に仕えていた、若い使用人だったのだから――
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