転生した社畜、無能で忌み子として家族に虐げられていましたが、変人と言われる侯爵子息と結婚させられたら溺愛されたので彼と幸せになります

ゆうき

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エピローグ

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「…………」

 アルバート様のパーティーから一ヶ月後。私は彼の部屋で一枚の手紙を読みながら、その場で呆然としていた。

 何故なら、その手紙に書かれていた内容が、あまりにも突然すぎたからだ。

 その内容とは……お父様とミシェルが、亡くなったという知らせだった。死因は短時間に動きすぎた事の過労と、急激に魔力を使いすぎた事で引き起った、魔力欠乏だそうだ。

 なにがあったのかは知らないし、興味もないけど、さすがにこれは突然すぎて、驚きを隠せないわ。

「フェリーチェ、何をボーっとしているんだい?」
「これを見てたんです」

 私は持っていた手紙をアルバート様に渡すと、彼は小さくふぅん……と言いながら、手紙をゆっくりと読んでいた。

「そういえば、アルバート様はお父様達に何の魔法を教えたんですか?」
「大したものじゃないよ。目標の為に頑張れるようになる魔法さ。僕も同じような魔法を自分に使って、ずっと研究をしてたくらいさ。まあ、彼らに渡したのは少しだけ改良されたものだけど」

 魔法の内容が抽象的すぎて、イマイチ意味が伝わってこないわ。頑張れるようになると言っても、どういう風になるのかわからないでしょう?

「えっと、具体的にどんな魔法なんですか?」
「疲れにくくなるってイメージしてもらうのが、一番わかりやすいかな。けど、実際は疲れてるけど、それを認識しにくくなるんだけどね」

 ……うーん、前世でいう所のエナジードリンクみたいな感じなのかしら? ちょっと違う気もするけど……社畜の時代に、たくさん飲んだのを思い出すわ。

 でも、仮にそうだったとしたら……あれって飲み過ぎると体によくないから……アルバート様の魔法も……なんて、考えすぎね。

「おや、もう埋葬とかも全て済ませているのか。本当に事後報告って感じだね」
「そうですね。あんな家族でしたけど、育ててくれた恩は一応あるので、一度くらいはお墓参りに行こうと思ってます」
「フェリーチェは律義というか、なんというか……そういう所も好きだけどさ」

 い、いきなり好きとか言うのはズルいと思うんだけど。思わず変な声を漏らしそうになったし、体が熱くなってる。

 ……やられっぱなしっていうのも、なんだか悔しいわね。

「私だってアルバート様が大好きですよ」
「そ、そんなの知っているよ、あはは……」

 強がってはいるけど、顔がニヤニヤしようとしてるのを止められていないわ! それに、顔も赤くなってるし、視線も定まっていない。

 これは、完全に照れてる! なにこれちょっと楽しい! それに、照れてるアルバート様、すっごく可愛い……!

「アルバート様、本当にカッコいいですもんね。優しいし、魔法の腕も凄いし――」
「わ、わかったから! そういうのは言われ慣れてないから、どう返せばいいかわからないんだよ!」
「ふふっ、ごめんなさい。少しからかいすぎちゃいました。でも、私の本当の気持ちですから」
「フェリーチェ……」

 幸せになれた事で出来るようになった笑顔を浮かべると、アルバート様も同じように笑いながら、そのまま私達は唇を重ねた。

 ……アルバート様とキスをしたのって、まだ片手で数える程度しかないから、未だにぎこちないし、ドキドキしちゃうわね。いつかはもっとスマートに出来るようになるのかしら。

「そうだ、フェリーチェに良い話があるんだよ」
「なんですか?」
「僕達、結婚してからまだハネムーンに行ってないだろう? 最近やっと落ち着いてきたから、一緒に行かないか?」
「ハネムーン!?」
「ああ。うちが所持している島があってね。そこは海も綺麗で、とてもリゾート気分を味わえるんだ。そこに二人で行かないか?」
「いいんですか!? 行きます!!」

 あまりにも魅力的な提案に、私は思わず食い気味に答えながら、アルバート様の手を強く握った。

 旅行……前世の幼い頃からの夢だった事だ。前世では修学旅行という機会があったけど、親がお金を払う気が無くて、私は修学旅行に行けた事がない。社会人になった後も、忙しすぎてそんな時間は取れなかった。

 だから……ある意味、旅行というのに憧れに近い感情があるの。

「まさかそこまで喜んでもらえるとは、思ってもなかったよ」
「あ、ごめんなさい。前世の頃から、旅行に憧れを抱いていたもので……」
「なんと、そうだったのか。それならそうと早く言ってくれれば、いくらでもその機会を設けたというのに。まあ今更言っても仕方がないか。君が憧れていた旅行、沢山楽しもう!」

 アルバート様の言葉に、私は力強く頷いて見せる。

 ……本当に今の私は幸せだ。私の事をこんなに想ってくれる人が隣にいて、暖かい家族に囲まれて……今まで不幸で、一度は人生を諦めてしまったけど……今日まで生きて来て本当に良かった。

 このご恩は、残りの私の人生を全て使ってでも、アルバート様やお義母様、屋敷の方々に返していくつもりだ。

 だから……不束者ではありますが、これからもよろしくおねがいします!!
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